ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
1980年代のオーディオ装置(2009.1.5)

 昨年末に、会社の同僚のOさんの奥さんから、亡くなった主人のオーディオ装置があるが引き取ってくれないかと言う依頼があった。物を拝見させてもらうと1980年代の装置で、使えるものと使えないものが混在していたが、部屋の後片付けもかねてすべて引き取った。軽トラで5杯分もあった。しばらくは我が家が廃品回収業者の様相を呈していたが、それも年末までには始末を終えて、年明けからは残った装置で1980年代の音を楽しんでいる。
 この時代はアナログの成熟期であると共に、デジタルの台頭期でもあり、オーディオがもっとも注目されていた時期である。そのため装置にも各メーカーは最新の技術を投入していた。主な装置について紹介する。

★ターンテーブル ソニー・PS-X700(¥99800、1982年)
 このターンテーブルはソニーが開発した電子制御アーム(バイオトレーサー)を搭載したフルオート・プレーヤーシステムである。このアームの特徴は、アーム自体の動きにリニア・モーターと速度センサーを使っている。サーボをかけてアームの動きを制御しているのである。したがって低域共振の制御とかソリのあるレコードの再生には非常に安定している。もう一つはオートゼロバランスと電子式針圧コントロールである。とにかくカートリッジを取り付けて針圧を指定すればあとは自動制御である。レコードの種類も光学的に読み取りボタン一つで自動演奏が出来る。こんなターンテーブルは他では見たこともないものである。当時の最新の技術が投入されており、電子基盤がいっぱい詰まっているのである。取り付けるベースとなるケースにはFRPという当時の先端複合材料が使用されている。


★カートリッジ ソニー・XL-70(¥45000、1980年)
MM型
出力 2.0mV
針圧 1.2g~1.8g
コンプライアンス 20
周波数帯域:10~50,000Hz
 このカートリッジにもソニーの最新技術が投入されている。マグネットには40μm厚のアモルファス磁性合金薄膜を20枚近くラミネートした磁性体を採用し、カンチレバーには、サファイアをパイプ状に加工して採用している。再生される音は大変分解能の良い、MMとは思えないハイスピードな感じの音である。特に高域の再生はすばらしく、極端に言えばスーパーツイーターが追加されたかと錯覚するほどである。反面神経質なところがあり、セッティングの調整が甘いとビビリなどが音に現れる。


★スピーカー DIATONE・DS-505(¥190000(1本)、1980年)
スピーカー方式 4ウェイ・アコースティックエアーサスペンション方式
使用スピーカー
低音用   32cmコーン型 (アラミッドハニカムコーン)
中低音用  16cmコーン型 (アラミッドハニカムコーン)
中高音用  4cmドーム型 (ボロンドームユニット)
高音用   2.3cmドーム型 (ボロンドームユニット)
公称インピーダンス 6Ω
再生周波数帯域 28~40,000Hz
最大入力 100W
出力音圧レベル 90dB/W
クロスオーバー周波数 350Hz  1,500Hz  5,000Hz 
外形寸法 幅420×高さ720×奥行425mm
重量 42kg

 このスピーカーもダイヤトーンの新技術が投入されたスピーカーで、中音域に特徴のある粒立ちの良い音を再生するスピーカーである。

★プリメインアンプ YAMAHA・A-9(¥245000、1979年)


 このアンプもヤマハの、当時の最高級プリメインアンプであるが、まだ十分音を聞いていないので、音についてのコメントが出来ない。

★AM-FMチューナー SONY・ST-J75(¥67000、1980年)


 以上がOさんが使用していた主なオーディオ装置でした。彼の新し物好きが目に浮かんでくるようでした。しかしOさんが主に聞いていたのは音楽ではなく、SLの音です。蒸気機関車の走りを録音したLPを13枚も所有しており、そればかりでなく自らが録音したSLのカセットテープが膨大な数残っていました。そのためにマイクロフォンやカセットデッキ、さらにLカセットデッキなどの録音機材も沢山残っていました。
 それにしても1980年代はオーディオの全盛時代ともいえ、各メーカーがこぞって投入した新技術はすばらしいものがあります。やはり市場のあるところには技術が投入されるのですね。それに較べると今のオーディオはマイナーな趣味になったのか少し寂しさを感じます。


懐かしいSONYの音響情報誌、ES・REVIEW(2009.1.6)

オーディオの盛んであった1970年代から80年代にかけて、ソニーからユーザー向けにES・REVIEWという音響情報誌が発行されていた。この情報誌にはアナログに関する貴重な情報がいっぱい詰め込まれており、今でもネット・オークションでこの情報誌が取引されている。ぼくもあるきっかけでこの情報誌を読むことが出来たので、その中の記事でLP再生用のカートリッジの針先について解説した記事(Vol.24)を紹介する。(以下、記事の内容の概要についてはぼくがまとめたのと、図についてはそのまま引用する)
 最初にクイズが載っている。「30cmのレコード盤の音みぞは何本でしょうか」答えは「表裏各1本ずつ計2本」それでは「その音みぞの長さは?」答えは「600~800m」と言うものです。レコードをトレースすると、これだけの長さの溝を毎秒50cm~5cmのスピードで、1cm²当たり2~5トンの圧力をかけてすべるので針は磨耗する。
 そのために針先には硬い材質が適しておりサファイヤやルビー、ダイヤモンドが使用されるのである。このような鉱物の硬さを表わすのに「モース硬さ」を紹介している。もっとも柔らかい鉱物である滑石(タルク)を1とし、最も硬いダイヤモンドを10としてあいだを分類したものである。1.滑石、2.石膏、3.方解石、4.蛍石、5.リン灰石、6.正長石、7.水晶、8.黄玉石、9.酸化アルミニューム、10.ダイヤモンドというお馴染みのものである。サファイヤやルビーは酸化アルミニュームであるから、硬度は9と言うわけである。
 ダイヤモンドを使用したソリッドダイヤモンド針の作り方を紹介したのが図3である。このソリッドタイプのものは高級品向きであり、普及品としては接合型のダイヤモンド針もあり、その作り方も紹介されているが省略する。
 実際の針先の大きさをレコードの音溝との関係で示したのが図5である。これを見ると針先が相対的には非常に大きな物であることが分かる。これで持ってレコードに録音されている10Kとか20KHzという高い周波数まで振動させる必要があり、なかなか大変であることが分かる。ターンテーブルの調整をしっかりと行う必要があるのです。
 このあと顕微鏡を用いた針先の寿命の判定方法が紹介されており、そのあと針先の保守について紹介されている。
 レコードにはゴミやホコリの付着と同時にバリなどの微粉状の塩ビが針先に付着することがあり、これがこびりつくと刷毛などでこすっても取れにくいのでアルコール(スタイラスクリーナー)を使うことを薦めている。またレコード盤よりゴミやホコリの除去をすることも必要である。カビなどが発生した時は水洗いも良いと。
 このようにていねいに解説されるとその気になる。


SUNVALLEY AUDIOのデジタルコントロールセンター・SV-192S(2009.1.7)

 今日は第9のIさん、タケさん、デカチョーさん、そして大橋さんとぼくの5人がSUNVALLEY AUDIOに集まって、SUNVALLEY AUDIOプチ新年会となりました。タケさんの要望もあってまずはSV-192Sを聴く会となりました。ソフトは、相変わらず海外にもきちっと目配せをしてすばらしいCDをお持ちの第9のIさんが20枚くらいをお持ちになったのと、タケさんが日頃愛聴されているCDを持ってこられての試聴です。いずれもクラシックです。
 使用した機器は、入り口から順にならべると、CDトランスポートがCEC・TL-51X、D/AコンバータがSV-192S、プリアンプがSV-310、パワーアンプがSV-2(2007)、スピーカーがタンノイ・スターリングというラインナップです。  SV-192Sの使用条件は、外部クロックジェネレーターにMUTECのMC-3を使用し、CDから16ビット、44KHzで入力したデジタルデータを24ビット、192KHzにD/D変換した後D/A変換してプリアンプにアナログ出力するというものです。
 ここでデジタル音楽メディアの仕様の違いの対応表を載せると以下のようになります。


メディアと仕様の対応表
メディア サンプリング周波数 量子化ビット数 録音方式
CD 44.1KHz 16bit PCM
DVD(ステレオ) 192KHz 24bit PCM
SACD 2,8224MHz 1bit DSD(録音方式が異なる)

 仕様だけ見ていると、SV-192Sで処理したデータはDVDやSACDに匹敵するような処理がなされているように思います。もちろん元のデータがCDですので同じにはならないわけですが、それでもD/D変換時にデータの補償計算が出来るし、真空管バッファーで倍音を補うという工夫もされているから、かなり期待も持てるわけです。
 と、前置きを書きましたが、では肝心な音はどうかというと、一度プロトタイプが出来た時にチラッと聞いていて、D/D変換の条件を変えると、ざらざらした音から、滑らかな音まで音の変化が楽しめると言うイメージは有ったのですが、最終的な製品は、そんなイメージをはるかに超えたすばらしいものでした。オーケストラの各楽器が奏でる音が、大変クリアーでしかもきらきらと音が粒立っています。決してきつい音にはなりません、と言うことは倍音がきちんと再現されているのではないかと思います。今回はクラシックしか聞いていませんが、音がスピーカーの外側にも広がっている感じがして、まるでコンサートホールのS席で聞いているようです。SUNVALLEY AUDIOのスピーカーのセッティングも、従来よりもスピーカーの間隔が広がっています。サンプリング周波数が高速になるとジッターの問題が出てきますが、その辺は心得ていて十分吟味しているようですが、それでもMUTECのMC-3につないで外部同期を取ると、音が一層鮮明になるのが分かります。こういう言い方をするとSUNVALLEY AUDIOから苦情が出るかもしれませんが、音のイメージは、まるで良くチューニングされたアナログのような滑らかな音です。いや、アナログを超えているかも!
 SV-192Sの宣伝文句のようになりましたが、ぼくの正直な感想です。


リベルタ・クラシック・コレクションの愛聴盤(2009.1.13)

 以前、リベルタ・クラシック・コレクション全90枚を入手し、カビ取りのレコードクリーニングをすることになったと書いたが、今日までにやっと60枚の水洗いを終えた。残りは30枚である。水洗いをすると、プチプチノイズが大幅減少もしくはまったく出なくなり、新品のようによみがえり、クラシック音楽は大変聞きやすい。
 60枚全部とは行かないが、これと思ったものを聞いてみて、ぼくが気に入ったLPについて紹介したい。もっともこのコレクションはロンドン、ドイツグラモフォン、フィリップス各社の選りすぐりを集めているので、ぼくが紹介するまでもなく名盤と呼ばれているものが多いが、改めて聞いた感動もあり書き留める。
 ★ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 モーツァルト/グリューミオ(ヴァイリン)コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団
 グリューミオの瑞々しくて美しく、キメ細やかな演奏である。
 ★ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 バッハ/リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団
 リヒターの躍動的な力強い演奏である。
 ★ピアノ協奏曲 第20番、21番 モーツァルト/グルダ(ピアノ) アバド指揮 ウィーン・フィルハーモニ管弦楽団
 アバドのピアノは自由であり、かつモーツァルトに忠実で美しい。
 ★シュトラウス・コンサート/ボスコフスキー指揮 ウィーン・フィルハーモニ管弦楽団
 ウインナ・ワルツを聞くにはこれは見逃すことの出来ないもの。
 ★ヴァイオリン名曲集 サンサーンス、ラベルなど/チョン・キョンファ(ヴァイオリン)デュトワ指揮 ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団
 チョン・キョンファの若々しく、情熱的な演奏は心地よい。
 ★チェロ協奏曲 ロ短調 ドヴォルザーク/フルニエ(チェロ)セル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 フルニエとセルが一体となった演奏で、セル好きとして取り上げる。
 ★ヴァイオリン協奏曲 第3番 サンサーンス/グリューミオ(ヴァイオリン)ロザンタール指揮 ラムルー管弦楽団
 これもグリューミオの美音を楽しむ1枚。
 ★交響曲 第4番 ホ短調 ブラームス/カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニ管弦楽団
 カルロス・クライバーも好きな指揮者であり、それにつられて選んだ。

 こんな調子で書いていけばきりがないが、最近のぼくはこんな傾向のクラシックを聞いているということでもある。レコードだけでもまだまだ聞いていない演奏がいくらでもある。


すばらしき出会い(2009.1.14)

 一昨日は安城のK谷さんの家で、新年のオーディオ仲間の集まりがありました。ぼくも2年前から仲間にしてもらい、毎年楽しみに参加しています。朝10時くらいからメンバーが集まり始め、夜は8時か、時には10時くらいまで会は続きます。そんなに長く何をやっているのかということですが、ここに集まる皆さんは音楽や真空管アンプの自作にかけての超一流人であることはもちろんですが、趣味に留まらずやってこられた仕事も多種多様な方たちで、お話をしていると話題に事欠かず留まるところを知りません。

 今回は自作されたアンプ4人の方が持ち寄られ、音を聞くのはもちろんですが、作ったアンプを眺めて配線の美しさや、苦労話を聞くだけでも色々な話が聞けました。さらにそれぞれがLPレコードを、それも貴重なオリジナル盤とか、録音のすばらしいもの、今では入手困難な貴重盤などを持ち寄って披露してくれました。しかもそれをかしこまって聞くのではなく、バックミュージックにしながらダベリングするという贅沢な聞き方が出来るのです。今回の内容についてはSUNVALLEY AUDIOの大橋さんが2009.1.12の日記で詳しく紹介しているので、そちらも是非読んで下さい。ここに掲げた写真も大橋さんが撮影したものです。
 今回ぼくはもっぱらいろんな方とお話をさせてもらいましたが、特にI籐さんとは農業の話になり、研修で実践したばかりの野菜作りの話に夢中になっていました。それとK谷さんが新しく作られたスピーカーの音にも圧倒されました。大橋さんの表現を引用すると、「ウーハは130。ミッドは2441+HL89。ツィータは175DLHでネットワークは自作という構成ですが、今日は130/175の2ウェイで鳴らしていました。タンノイ派が求める間接音的な空気感とは隔絶したゴリゴリの音像、大地に打ち込まれたような音の太い骨格が見事にJBL!という世界観を作り上げていました。一番最初にK谷さんの噂を聞いた時は「ピアノトリオを凄い音で鳴らしている人が居る」というお話だったのですが、まさに今日の新作もザ・JAZZ,ザ・VOCALというべき見事な音でした。」まさに今までぼくがジャズの再生の目標にしてきたような音です。でも気が付いて見ると最近のぼくの聞いている音は少し違ってきています。もう少し間接的な響きを意識しているようです。そんなことに気づきました。
 ぼくももう60歳代になりましたが、こういう素晴らしい人たちと一緒にいると、まだまだ色々な気づきが出来て、知らないこと、新しい世界などを覗くことができ、好奇心の止むことがありません。嬉しいことです。
 会社で仕事をしているときは、同じ志をもった先輩や、同僚、後輩たちがいて、夢中で仕事をしているうちに、色々と鍛えられ着実に成長していきます。特にぼくは50歳代になってから、超一流の腕を持った上司にめぐり会え、まだ努力が必要なことを教えてもらい、素晴らしい経験をしました。
 仕事を止めるに当たっては、環境が変わると同時に、一番不安だったことは、こういう素晴らしい人たちとめぐり会えるかどうかということでしたが、幸いなことに、農業の研修にしても、趣味のジャズやオーディオにしても、まだまだ素晴らしい出会いがあるということでした。
 そんなことを実感した1日でした。




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