ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
リリー・クラウスのモーツァルト(2009.8.1)

 7月の末に、研修を受けている農ライフの実践畑の審査会がありました。これに向けて7月は農作業が忙しかったのと、頭の中も野菜のことで一杯となったので、こちらの方は勝手にお休みをしていました。それにしても今年は梅雨がいつまでも明けず、野菜は大変です。
 今日は久しぶりに音楽を聞いています。今聞いているのは、リリー・クラウスのピアノ演奏でモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番イ長調K.331です。モーツァルトを弾く女性ピアニストと言えば、イングリット・ヘブラーとクララ・ハスキルがすぐに浮かびます。ヘブラーは比較的ゆっくりと、緻密に1音1音を紡ぐタイプなのに対し、ハスキルはおおらかで詩的でスケールの大きいモーツァルトを聞かせる。これに対しリリー・クラウスはこの二人とはまた違ったタイプの、表情豊かに粋な演奏を聞かせてくれる。
 リリー・クラウスのモーツァルトでは、1956年のモーツァルト生誕200年を記念して、フランスのシャルランがEMIに録音したピアノ・ソナタ全集が有名であるが、今ぼくが聞いているのはそうではなくて、その10年後にCBSに録音したピアノ・ソナタ全集である。LP六枚に第17番までのピアノ・ソナタが録音されている。録音されている音が少し硬質のような感じがするので、再生するカートリッジを普段使っているTechnicsの205C-ⅡxからOrtofonのMc20に変更して聞いている。

 ぼくはこの全集を2日前に、例によってハードオフのジャンクコーナーで入手したのである。それも新品同様の状態の物を。これを入手するにいたった経過については、その前に、思い出したくもないショッキングな出来ごとがダブっているが、このモーツァルトの演奏を聞いて今は癒されている。


ウインナ・ワルツのLP(2009.8.3)

 ぼくはウインナ・ワルツの演奏を聞くのが好きである。演奏そのものが楽しいし、音の良いLPも多数ある。ぼくの手持ちのLPの中で半数に数を絞って選び出したのが、表に示した7枚のLPである。ドラティとオーマンディ以外のLPにはポルカや行進曲が含まれている。全体を眺めているとA面のトップには「美しく青きドナウ」というのが多い。なぜかB面のトップは「春の声」が入っている。

曲/指揮者(LP) ドラティ オーマンディ CBS オーマンディ RCA ベーム カラヤン シューリヒト ボスコフスキー
美しく青きドナウ A1 A2 A1 A1 A1   A1
ウィーンの森の物語 A2 A1 B3     A3  
春の声 B1 B1 B1       B1
芸術家の生涯 B2            
酒・女性・歌 B3 B4       B3  
南国のバラ   A3   B2   A1 B5
皇帝円舞曲   B2 A3 A3 B3    
ウィーンかたぎ   B3 A2     B1  
朝刊     B2        
わが人生は喜び             A3
こうもり序曲         A1   A2

個々のLP別に曲を聞いてのコメントを入れてみます。
・Strauss Waltzes/Antal Dorati/ London Philharmonic/London SPC 21018
この演奏はいかにもドラティらしく、大変リズムがきびきびとした軽快なウインナ・ワルツである。
・ウィーンの森の物語/ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア/CBS SOCL 1067
CBS/SONYは同じ音源を時代ごとに、何回かに分けてLP化しているが、ノイマンのカッターヘッドSX-68を使って出したのがSOCFシリーズであり、SX-74を使用したのがSOCLシリーズである。これ以外にSX-70を使用したSOCT、Westrexを使用した15ACシリーズもあり、それぞれ音が異なりオーディオ的には興味のあるところである。このLPはメリハリの付いた如何にもフィラデルフィア・サウンドをしている。
・ウィーンの森の物語/ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア/RCA RCL-1506
こちらは同じメンバーでRCAに後年録音したものであるが、随分と落ち着いたサウンドに録音されている。音楽的にはこちらの方がバランスが取れているかもしれない。
・皇帝円舞曲/カール・ベーム/ウィーン・フィル/DG 20MG 0686
ウィーン・フィルのニュー・イヤーとは違った、ベームの指揮によるコンサートを、襟を正して聞きに来たような格調のあるウインナ・ワルツである。ウィーン・フィルの柔らかな弦の音や、渋いホルンの音も魅力的に聞こえる。
・美しく青きドナウ/ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィル/EMI EAC-80242
いかにもカラヤンらしい、滑らかでドラマチックなワルツである。ベルリン・フィルの演奏もスケール感のある魅力的な音である。
・Johann Strauss/Carl Schuricht/Vienna State Opera/Vanguard SRV・256SD
・美しく青きドナウ/ウィリー・ボスコフスキー/ウィーン・フィル/London IL 3042
この2枚のLPはどちらもウィーン風というか、ウィーン訛りたっぷりのリズムによる、これぞ本場の演奏という楽しいウインナ・ワルツである。

 ハーフ・イヤーを過ぎたところで、ニュー・イヤーにはまだまだ時間があるが、ウインナ・ワルツのLPをまとめて聞いてみました。


アート・ペッパーのアルバム(2009.8.12)

 7月にI原さん、I瀬さんのオーディオ装置を聞かせてもらえるという楽しみもあって、ジャズのLPを色々と聞いているうちに、横道にそれてしまった。アート・ペッパーの作品を色々と年代順に再び聞き出してしまったのである。アート・ペッパーは「サーフ・ライド」という初リーダーアルバムを出しているが、これは1952年(26才)から1954年の録音が含まれている。これ以前のアート・ペッパーは、最初ベニー・カーター楽団その後はスタンケントン楽団に在籍し、この楽団で鍛えられてスタイルを確立していったのである。アート・ペッパーは麻薬中毒で数回刑務所を入ったり出たりして、その度に演奏活動を中断しているが、そのことにはいちいち触れずに、ぼくの聞いたアルバムと曲を整理する。

Art Pepper - The Complete Surf Ride (Savoy Jazz [J] K30Y 6187/88) 1952-54

 ・Tickle Toe
 ・Suzy The Poodle
 ・The Way You Look Tonight
 ・Straight Life
 アート・ペッパーの初リーダーアルバム。これを聴くと最初からペッパーは天才であることがわかる。Suzy The Poodleという曲はインディアナというスタンダードのコードー進行を借りて作曲したもの。同じやり方の曲にドナ・リーがある。どの曲を聞いてもペッパーが燦然と輝いている。

 Marty Paich Quartet Featuring Art Pepper (Tampa TP 28) 1956
 The Art Pepper Quartet (Tampa TP 20) 1956

 ・You And The Night And The Music
 ・Besame Mucho
 このタンパの2枚は、アート・ペッパーのメロディ・メーカーぶりを発揮したもので、ここに取り上げた2曲はその代表である。

Art Pepper - Modern Art (Intro ILP 606) 1956

 ・Blues In
 ・What Is This Thing Called Love
 一見派手さはないが、アート・ペッパーがじっくりと歌いこんだ傑作である。

Art Pepper Meets The Rhythm Section (Contemporary C 3532) 1957

 ・You'd Be So Nice To Come Home To
 マイルス・デイヴィスのリズムセクションと録音したこのアルバムは、ペッパーのアルバムの中でもっとも有名なものであろう。録音も良く、オーディオ・チェック盤としても使われる。曲はヘレン・メリルのヴォーカルで有名。

Art Pepper - The Art Of Pepper (Omegatape ST 7020) 1957

 ・The Breeze And I
 「そよ風と私」1曲のために取り上げた。この瑞々しい音色にはまってしまう。

Art Pepper + Eleven - Modern Jazz Classics (Contemporary M 3568) 1959

 ・Bernie's Tune
 ・Donna Lee
 録音のなかなか良いアルバム。取り上げた2曲もぼくの好きな曲。

Marty Paich - I Get A Boot Out Of You (Warner Bros. WB 1349) 1959

 ・Violets For Your Furs
 お風呂のジャケットで有名なこのアルバム、「コートにすみれ」でアート・ペッパーの泣き節がしっとりと聞けるのが嬉しい。

Art Pepper - Gettin' Together (Contemporary M 3573) 1960

 ・Softly, As In A Morning Sunrise
 このアルバムもマイルスのリズム隊と共演したもの。この後ペッパーは沈黙の時代に突入する。

Art Pepper - Living Legend (Contemporary S 7633) 1975

 Here's That Rainy Day
 ペッパー復帰後の第1弾アルバム。60年代までの前期の演奏とは違った演奏をしている。

Thursday Night at the Village Vanguard (Contemporary OJCCD-694-2) 1977

 ・Goodbye
 この一連のビレッジ・バンガードでのライブにおけるペッパーの演奏は、まるでコルトレーンが乗り移ったかのように聞こえるが、自分の表現方法を探しているようでもある。ドラマーのエルビン・ジョーンズがそれに一役買っている。

Art Pepper - San Francisco Samba (Contemporary CCD 14086-2) 1977

 ・Blue Bossa
 このアルバムで聞けるBlue Bossaは目下のぼくの愛聴曲である。曲の冒頭からアドリブに入り、熱のこもったアドリブをモーダルに展開する。前期のペッパーも好きだが、後期のペッパーの演奏はよりエモーショナルに聞こえる。

Art Pepper - Among Friends (Interplay IP 7718) 1978

 ・Blue Bossa
 Blue Bossaの聞き較べとなってしまったが、こちらのBlue Bossaは前期のペッパーのスタイルに近い演奏で、懐かしいという感じである。

Art Pepper - Landscape (Galaxy GXY 5128) 1979

 ・Over The Rainbow
 日本公演のライブアルバム。1975年に復帰してからのペッパーは、その演奏スタイルが様々に変化するが、この公演での演奏は穏やかな表情を見せている。

Art Pepper/George Cables - Goin' Home (Fantasy OJCCD 679-2) 1982

 ・Goin' Home
 ゲッツも最後のアルバムはピアノとのデュオであったが、ペッパーもお気に入りのピアニスト、ジョージ・ケイブルスとのデュオである。

 ぼくがアート・ペッパーの魅力を紹介するために、アルバムとそこに含まれる演奏を取り上げるとしたら、これだという曲を、オーソドックスに整理するとこういうことになります。




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