ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
オーネット・コールマン(2009.10.3)

 ジャズを好きな人であれば、オーネット・コールマンという人の名前を知らない人はいないであろう。ぼくも知っている。でも知った時期が不幸であった。50年代の後半、アート・ブレイキーやソニー・ロリンズ、キャノンボール・アダレイに夢中であった時に、何かの偶然で彼の演奏を聞いたのである。その時には、何と不快なジャズだと思ったのである。
 オーネット・コールマンはアルトサックス奏者であるが、当時のコード進行に制約される演奏からの自由を求めて、フリージャズの旗手として話題の人であった。でもぼくは、当時受けた印象がずっと頭の中に刷り込まれていて、彼の演奏を聞くことをずっと避けていた。それが、今になって急に、彼の演奏が素晴らしいと思うようになり、コツコツと聞き始めているのである。


 そのきっかけは、誠に単純であるが、次のようなことである。たまたま中古のシングル盤をチェックしていた時に、右のような盤を見つけたのである。一見した時にはカルテットという文字だけが目に入り、デザインの印象もあってクラシックのEP盤かと思ったのであるが、良く見るとJazzと書いてある。箱から取り出して、手にとって見ると、紛れもなく オーネット・コールマンのカルテットの演奏の入った、45回転のシングル盤である。家に持ち帰り、盤を良く調べると、アトランティック・レーベルに吹き込まれ、オランダで製作された、俗に言うヨーロッパ盤である。したがってデザインがこのようになっているのである。しかも買った場所が、貼ってあるシールからするとニューヨークのハーレムのようだ。それがなぜか今ここにあるのである。演奏者は、オーネット・コールマン(as)、ドン・チェリー(tp)、チャーリー・ヘイデン(b)、エド・ブラックウエル(d)で、曲は、Blues connotionとHumpty dumptyである。
 シングル盤なので、演奏時間は短いが、聞いて見るとなかなか良いではないか。オーネット・コールマンをチャーリー・パーカー、ドン・チェリーをマイルス・デイヴィスに見立てると、チャーリー・パーカーの演奏を少し現代風にしたような演奏に聞こえる。レーベル、演奏者、曲目を手がかりにアルバムを調べてみると、1960年にAtlanticより発売されたThis Is Our Musicというアルバムからの抜粋のようである。
 オーネット・コールマンは1959年にアトランティックより「ジャズ来るべきもの」という話題盤を出しており、これはその1年後という位置づけになる。なんだ、それならばデビューよりアトランティック時代までの彼の演奏をまず聞いてみよう、ということになったのである。まことにお粗末な、食わず嫌いの話だったのである。でも考えようによっては、また一歩新しい領域に足を踏み入れることが出来るのであるから、喜ぶべきことでもある。
 ぼくは今、彼のTomorrow Is The Questionという1959年にコンテンポラリーに録音したアルバムを聞きながら、この文を書いている。彼の演奏をなかなか理解してくれるレーベルが見つからずにいたときに、ここでも共演しているレッド・ミッチェルの紹介によりコンテンポラリーに2枚のアルバムを録音し、その後ジョン・ルイスに認められて、彼の紹介でアトランティックに移籍し、名声を確立したのである。
 まことにWhat A Difference A Day Makes(縁は異なもの)である。


SV-501SEの改造(2009.10.4)

 今日はSV-501SEの改造を行った。改造といってもたいしたことではなく、4Ωのスピーカーターミナルを追加しただけである。でもやってみると難しくはないが、面倒であった。8Ωのターミナルの横に8mmの穴を2個明け、出力トランスのカバーを取りはずし、4Ωの出力線(黄色)を取り出し、取り付けた4Ωのターミナルに半田付けする、これだけのことであるが。このアンプは、以前300Bにつながるカップリングコンデンサーをデフォルトからジェンセンに変えており、これが2回目の改造である。あと球は、6BM8を松下に、300BをサンバレーのVer1にデフォルトのエレハモから変えている。
 このアンプの良さは、何といっても、クリアーで柔らかな響きの美しさである。ぼくは深夜(零時過ぎ)に音楽を聞きながら雑記帳などを書いているので、このような響きのアンプは誠に都合が良い。球やコンデンサーの変更も、少しでもこういった音を実現するために変更したのである。今回4Ωのターミナルを追加したのは、KEFのC75というスピーカーをドライブさせるためである。このスピーカーは、タップリと湿り気を含んだ柔らかく深みのある中低音で、ゆったりとした音調であり、中音量以下で聴くと本当にリラックスできます。
 で、組み合わせた結果は如何であったか。一言で言えば期待以上のものであった。これで夜中に、誰の気兼ねもいらない小音量で、しかもクリアーで柔らかな響きに美しい音楽を聞くことが出来る。このアンプは、ぼくが最初に組み立てたもので、そういう思い入れもあるが、それ以上に、くつろいで音楽を聞くには、最良のアンプである。
 ということで、夜中にもかかわらずまたLPをかけ始めた。
 ・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲/メニューイン(Vn)フルトヴェングラー指揮ルツェルン音楽祭管弦楽団、Angel 1947
 メニューインというヴァイオリニストは、少年時代は天才とか神童といわれ、演奏も残しているが、成長するにつれてその才能が伸びなかったといわれている。そんな彼がある時期また光り輝いた。それがフルトヴェングラーとの一連の共演である。ナチス協力との疑いで演奏活動が出来なかったフルトヴェングラーが、この年に始めて自由に演奏活動できるようになり、スイスのルツェルンで8月にメニューインと共演したのが、このアルバムである。
 繊細でやや神経質さを感じるメニューインのヴァイオリンであるが、このブラームスではそんなことを少しも感じさせず、指揮者への心酔のせいか、ひたむきに、情熱的に、心にこもった演奏を感じさせてくれる。音源は古いが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲の良さを再認識させてくれるアルバムである。
 1枚のアルバムを随分のめりこんで聞いてしまったが、それには、ゴールドリングの1012GX、サンバレーのSV-501SE、KEFのC75の組み合わせが奏でる、美しい響きが随分と寄与しているのである。


バーンスタイン名盤100選(LPジャケット美術館Ⅱ)(2009.10.5)

 レコード蒐集暦40年以上で5万枚ものLPを収蔵され、LPジャケット美術館という本を出版された高橋敏郎さんと、レナード・バーンスタインの最後の弟子といわれる指揮者の佐渡裕さんの共著である。本の主な内容は、

 ・バーンスタインの肖像
 バーンスタインのデビューから最後の録音までに、彼の肖像写真が使用されたアルバム20枚の写真紹介と作品の解説。
 ・作曲家バーンスタイン1
 ウエストサイド物語などのミュージカル作品の、自身および彼の作品を演奏した他の指揮者の作品紹介12枚。
 ここに内容の一部を紹介すると、
 「バーンスタイン・交響曲第1番エレミア他
 バーンスタイン指揮・セントルイス交響楽団他

 1943年11月14日、レニーはワルターの代役として衝撃的デビューを果たし、翌日から人生は一変する。・・・45年2月、RCAがレニー指揮・セントルイス響で初録音。終了後、全楽員が立ち上がって喝采を送り、レニーは「指揮台で涙にむせんだ」と回想している。これは、その時の録音。・・・ジャケットは若き日のレニー。47年、タングルウッドでの撮影。・・・」
 ・作曲家バーンスタイン2
 同じく彼の作曲したオーケストラ作品のアルバム紹介14枚。
 ・指揮者・ピアニストバーンスタイン1
 彼の指揮者・ピアニストとしての代表作品のうち、1960年代までのもの19枚の紹介。
 ・指揮者・ピアニストバーンスタイン2
 同じく、1970年代以降の作品17枚の紹介。
 ・バーンスタインとアート
 画家やデザイナーによる作品が、バーンスタインのアルバムジャケットに使用された作品18枚の紹介。
 というもので、全127ページのオールカラーの本で、出版は新潮社のとんぼの本である。価格も1400円と手ごろだ。
 ぼくがこの本に注目いたのは、バーンスタインそのものの作品に関心があるのはもちろんであるが、アルバムの紹介の仕方が面白いと思ったからでもある。ある意味、LP100枚のディスコグラフィーでもあるが、それを単に年代順に整理するのではなく、使われているジャケットに注目し、それを前記の分類に層別して紹介している。そして掲載されているカラーのジャケットがCDで使われているのと同じ大きさで印刷されており、大変美しい。そして合間にバースタインに関する、高橋さんと佐渡さんのエッセイが挿入されている。
 ぼくも好きなジャズ演奏者のディスコグラフィーを、年代順に作り、カラーのアルバムをそこに添付し、頭の整理をしているが、何か工夫はないかと思っている。例えば、この本のように分類すれば、それぞれの分類項目について述べる文章をイメージとして描き、それを裏付けるようなアルバム紹介をすれば、もっとメリハリの付いた整理が出来るのではないかと思うのである。いつかチャレンジしてみたいと思う。


アルテュール・グリュミオーを聞く(2009.10.13)

 ずっと以前に、断線して鳴らなくなったJBLの044Tiというドーム型のツイータを修理することを思い立ち、分解してみると、ボイスコイルから端子までのリード線の部分が腐食して切れていた。初めての修理なので、こんなに細い線を半田でつなぐのは苦労したが、何とか2個共に修理した。音を出してみると異常もなく復元しているようだ。耐久試験もかねて、KEFのC75に追加してみた。カットする周波数を試行錯誤しながら聞いて見ると、9kヘルツでつなぐのが調子よさそうだ。このところ良く聞いているメニューインとフルトヴェングラーによるブラームスのヴァイオリン協奏曲をかけてみると、ヴァイオリンがグッと前にせり出してきて、目の前で鳴っているようである。もちろんこれはもはやKEFのC75の音ではなく、アメリカンサウンドに成っている。
 ということで、この音に刺激されてヴァイオリンによる演奏を色々と聞くことにした。といってもヴァイオリン奏者はぼくの好きなアルテュール・グリュミオーに絞ることにして。ぼくがグリュミオーを好むのは、彼の芯のある美しい音色に惹かれるだけでなく、彼の得意としたモーツァルトなど、彼の取り上げる曲もぼくの好きな曲が多いからである。


 ・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中でもこの5番を最も良く聞く。特に第3楽章のトルコ風の雰囲気が良い。


 ・モーツアルト:ヴァイオリンソナタ
 このクララ・ハスキルとの共演盤はグリュミオーの美しいヴァイオリンの典型である。


 ・ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
 ぼくはベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、なかなか聴くのが辛いと思っていたが、不思議とグリュミオーの演奏だと最後まで聞ける。


 ・バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ
 バッハのヴァイオリンソナタについては、チョン・キョンファの初々しいものから、色々あるがどれも好きである。
 ツイータを追加したことがきっかけで、好きなグリュミオーのヴァイオリンをかぶりつきで聴くことが出来たが、多分ジャズを聴くとシンバルの音が大変うるさいと想像できる。
 その時はまた色々と調整しよう。




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