ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
SP盤の再生(2010.3.27)

 SP盤再生の大家として名を知られている、安城のK谷さんと知り合いになり、以前に蓄音機の新古品を譲ってもらった。これで鉄針を使ってSPを再生すると、今まで持っていたSP盤の音のイメージを一新するほど、音楽がビビッドに鳴る。といってもK谷さんの装置ではとんでもない音で鳴っており、それとは比較にならないほどに初心者の音である。もちろん低域とか高域の音はLPには及ばないが、逆に中域の張り出しは本当に素晴らしく、それによってヴォーカルなどを聴くと、歌い手が目の前に迫ってくるようである。
 蓄音機の音を極めようと思うと、まずサウンドボックスによって音が大きく変化するし、取り付けるホーンの性能も大きい。それを抑えながら、さらにあらゆるところのチューニングが大切なようである。K谷さんのお話を聞いていると、素晴らしいサウンドを手に入れようと思うと、この世界も奥が深く、かなりの手間隙と授業料が必要なようだ。
 中古のSP盤を30枚ばかり集めたが、これも色々ある。その中でSP盤の使われた履歴により音が随分違うようである。写真の左は比較的程度の良い盤の溝であるが、右は傷の多いものである。比較すればすぐに分かるように、右の傷の多いものはノイズも激しい。どうやら鉄針で何回もきいた物のようである。鉄針では針圧も100~150gと大変高く、電蓄になってのクリスタル針では20グラム前後と、大きく違う。出来れば電蓄以降で使用されたSP盤を集めたいものである。





 SP盤の歴史をたどってみると、エジソンがシリンダー型のレコードを発明したのが1877年、ベルリナーが円盤型のレコードを発明したのが1887年である。これが商品化されたのは1888年から9年にかけてである。初期の録音は集音器を通しての機械的録音であったが、1925年に電気録音法が採用された。再生法も以前はサウンドボックスとラッパによる機械的再生法から、電気蓄音機による再生が行われるようになった。そして1948年に米コロンビアがLPレコードを発明すると、SPは徐々に姿を消していったのである。
 SPとLPの仕様の違いを整理すると、
 ・まず材料が厚くて、重く、割れやすいシェラック材から、軽くて壊れないプラスチックに変更された。
 ・回転数が毎分78回転から、33.33回転に変更された。
 ・音溝が三分の一くらい狭くなり、SP盤では2.5~4ミルの針径に対して、LPでは1~0.65ミルの針径だ。
 ・録音時のイコライジングもSP時代は統一されておらず、LPではRIAAカーブに統一された。
 以上のようなことを踏まえれば、LPの再生システムでSP盤の電気的再生も可能であり、ぼくはそちらにチャレンジすることにした。もちろんそんなことをしなくても、例えばコロンビアから出ているGP-11といったプレーヤーを使えば、それなりに再生できるが、それでは面白くないので、もう少し大げさにやってみることにした。
 まず78回転のプレーヤーであるが、トーレンスとかガラードといったヴィンテージ品があれば78回転は可能であるが、ぼくは持っていない。そこでコスモテクノのDJ-3500が普及品で価格も安いのでこれを使ってみることにした。
 次にイコライザーアンプであるが、SP用の本格的なものは価格の20万円以上と初心者にとっては高い。情報を調べてみるとアメリカのESOTERIC SOUND社のRE-EQUALIZER IIという製品をLP用のイコライザーを通した後につないで、SP用のイコライジングをかけるという製品が出ている。価格も3万円代と手ごろで、使用している人もかなりいるようである。そんなことにヒントを得て、とりあえずグラフィックイコライザーで補正するのでも良いではないかと考えた。ぼくはたまたまビクターのSEA80を持っているので、これを使用することにした。
 問題はカートリッジに何を使うか、悩ましいところです。SP用のカートリッジも色々発売されているので、入手しようとは思っているのですが、LP用以上に情報がありません。これもとりあえずのものを探していると、JICOの交換針のリストに3ミルのSP針のリストがあり、SUREのカートリッジにこの針を差し替えるとSPの再生が出来るというものがありました。その中で1番安いM44G用の針を入手して使用してみることにしました。もちろんV15用のものもあります。
 ということで、78回転のターンテーブル、グライコ、SP針の3点をそろえて、SP盤の再生を試みています。まだまだ初心者ですので音の追い込みはこれからですが、現代の10g以下の針圧で再生するカートリッジでは、78回転というスピードはなかなか難敵です。ソリのあるレコードをどう安定的にトレースさせるか、悩ましいところがあります。インサイドホースのかけ方、針圧をどこまでかけるか、どんなトーンアームが良いのか・・・。
 この続きはまた報告することにします。




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