ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
トミー・フラナガン・トリオ (2010.7.17)

 ジャズ喫茶「グッド・ベイト」に出かけたら、マスターの叩くドラムの音が聞こえてきた。それと同時にピアノの音も聞こえる。中に入ってみると、まだ客と思しき人はいなく、ピアノで枯葉を弾いていたのは、Y子さん(お客さん)である。Y子さんは現在ジャズピアノを練習中ということで、今日はお客さんのいない時間を利用して、マスターとコラボしているところへぼくが入っていったのである。マスターはアマチュアではあるが、ドラムの腕は相当で、聞いていてもよくスイングしている。Y子さんも初見の楽譜で演奏でき、ピアノの腕はプロで、ジャズを演奏したいということである。そんな二人の練習ぶりを聞いていると、やはり生の演奏はヴィヴィッドで良いなと思う。Y子さんの将来が楽しみである。
 演奏が終わった後、マスターとピアノトリオを話題に話が弾み、その中でドラムをブラッシュワークで演奏する難しさと、素晴らしさに話が飛び、やはりシェリーマンはずば抜けているとか、トミー・フラナガンのOverseasにおけるエルビン・ジョーンズのブラシのスピード感は凄いとか、バド・パウエルのThe Bud Powell Trioにおけるマックス・ローチのブラシ、特にINDIANAでは1分間に80小節以上にも及ぶスピードでブラシを打っているとか、大いに盛り上がった。
 と、前置きが長くなったが、家に帰ると、改めてトミー・フラナガンのピアノが聞きたくなったのである。次に掲げてある表は、ぼくの持っているトミー・フラナガンのアルバムの一覧表である。★印のついているのが、中でもぼくが気に入っているものである。

Tommy Flanagan
Mark Title Year Label
Overseas 1957 DIW
  The Tommy Flanagan Trio 1960 OJC
  Confirmation 1977 Enja
Eclypso 1977 Enja
  Montrex '77 1977 OJC
  Ballads And Blues 1978 Enja
  Something Borrowed Something Blue 1978 OJC
  Super Session 1980 Enja
Thelonica 1982 Enja
Giant Steps 1982 Enja
  Nights At The Vanguard 1986 Up Town
Jazz Poet 1989 Timeless
Let's Play The Music Of Thad Jones 1993 Enja
  Master Trio 1994 Four Star
  Flanagans Shenanigans 1994 Story Ville
  Lady Be Good 1994 Verve

 「Jazz Poet」Tommy Flanagan(p)、George Mraz(b)、Kenny Washington(d)
 トミー・フラナガンのアルバムの中でも、ぼくが一番気に入っているものである。1曲目のRaincheckから、聞きほれてしまう。録音もルディ・バンゲルダーで、ゾリゾリッとして好きである。フラナガンが最良のバップ・ピアニストである事を認識させられる。
 「Overseas」Tommy Flanagan(p)、Wilbur Little(b)、Elvin Jones(d)
 トミー・フラナガンの初期の傑作。スエーデンのストックホルムでの録音でエルビンの強力なブラッシュワークによるサポートを得て、フラナガンのブリリアントなピアノで、特に日本では人気がある。中でもぼくの好きなのはVerdandiである。
 「Eclypso」Tommy Flanagan(p)、George Mraz(b)、Elvin Jones(d)
 再びエルビン・ジョーンズとの共演で、Overseasの続編のようなアルバム。但しベーシストが若きジョージ・ムラーツで、彼とフラナガンとの長きコンビがここからスタート。


 「Thelonica」Tommy Flanagan(p)、George Mraz(b)、Art Taylor(d)
 「Giant Steps」Tommy Flanagan(p)、George Mraz(b)、Al Foster (d)
 「Let's Play The Music Of Thad Jones」Tommy Flanagan(p)、Jesper Lundgaard(b)、Lewis Nash(d)
 トミー・フラナガンは自己のトリオによる演奏よりも脇役としてあちこちから声がかかり、多くの名盤に参加して有名である。主なところでは、ソニー・ロリンズのサキソフォンコロッサス、ジョン・コルトレーンのジャイアントステップス、J.J.ジョンソンとの一連の物など、それからエラ・フッツジェラルドの歌伴としても有名であった。Thelonicaはセロニアス・モンクの亡くなった年に彼の曲を演奏したもの。Giant Stepsは同名のコルトレーンのアルバムに参加したフラナガンが、コルトレーンへのトリビュートアルバム。Let's Play The Music Of Thad Jonesはタイトルどおり、サド・ジョーンズの曲をピアノで料理したアルバム。


 いずれも派手さはないが、これぞバップピアノといってよい最良のアルバムである。
 トミー・フラナガンには、ベースのジョージ・ムラーツとブラシワークの上手いドラマーとの組み合わせが良い。
 「追記」17日にトミー・フラナガンについて書いてから、色々な事を書きかけては、中途半端で終わってしまい、結局は何もまとまったものを書かずに月末を迎えてしまいました。




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