ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
Sonny Criss Quintet / Featuring Winton Kelly (2011.5.20)

 ソニー・クリスのアルバムを1枚入手しました。国内発売はされておらず、米国からの輸入盤で、タイトルは標題の通りです。これはどの様なアルバムか調べてみると、1959年にPeacockというマイナーレーベルから、Sonny Criss At The CrossroadsというタイトルでLP化されたものの再発ということである。一時期廃盤になっていたので入手が困難であったものである。タイトルもわざわざFeaturing Winton Kellyとうたっているのは、オリジナルLPではPiano:Joe Scottと偽名を使ってクレジットしていたからだ。


1. Sweet Lorraine 3:42
2. You Don't Know What Love Is 4:01
3. Softly as in a Morning Sunrise 5:38
4. Butts Delight 4:05
5. I Got It Bad 3:52
6. Sylvia 7:41
7. Indiana (Back Home Again in Indiana) 5:52
Sonny Criss Sax (Alto)
Wynton Kelly [Joe Scott] Piano
Ole Hansen Trombone
Bob Cranshaw Bass
Walter Perkins Drums
Recording Date Oct 1953

 ソニー・クリスのアルトは、明るい音色で、チャーリー・パーカー風に高速フレーズを出し、時々ロングトーンを奏でる、どちらかというと深みの無い、表面的な明るさの演奏と思われがちであるが、しかし演奏はとても上手く、ぼくの好きなアルト奏者である。その中でこのアルバムは、トロンボーンが加わっているからか、適度にウエットで落ち着いた感じがあり、ウイントン・ケリーのピアノも歌心にあふれ大変良い。
 ソニー・クリスの演奏を聞き始めると、アルバム1枚で終わると何か物足りない気持ちになり、続けて何枚か聞きたくなる。今回もその例に漏れずぼくの持っている何枚かのLPの中より次のアルバムを聞いてしまいました。
 This is Criss 1966年 バンゲルダー・サウンドの1枚。
 Up,Up And Away 1967年 CDではライナーを村上春樹が書いている。
 I'll Catch The Sun 1969年 西海岸の名手たちとの共演。
 Crisscraft 1975年 亡くなる2年前の傑作。

これ以外にまだLPが7枚以上あるが、今日はもう止めよう。実にクリスは良いね!


「New York Stockholm」Clifford Brown (2011.5.25)

New York Stockholmというタイトルのアルバムが昨年の11月に発売された。収録されている曲目は表1のようになっている。

表1

1. Capri
2. Lover Man
3. Turnpike
4. Sketch One
5. Get Happy
6. Wail Bait
7. Hymn of the Orient
8. Cherokee
9. Brownie Eyes
10. Easy Living
11. Minor Mood
12. Stockholm Sweetnin'
13. Scuse These Blues
14. Falling In Love With Love
15. Lover Come Back to Me

 これがどういうものか調べてみると、No1からNo5までの曲はThe Eminent Jay Jay Johnsonというブルーノート盤に収録されたものであり、No6からNo11まではClifford Brown Memorial Albumという、同じくブルーノート盤に収録されたものであり、No12からNo15はQuincy JonesのStockholm Sweetin'というドイツのマイナーレーベルに録音されたアルバムより、クリフォード・ブラウンが参加した曲を取り上げて合体したものだという事がわかった。
 ブルーノート盤は有名なものなので、今でも入手できるし聞いたこともあるが、ドイツのマイナーレーベルより出ているStockholm Sweetin'は少し入手が困難である。これが録音されたいきさつを調べてみると、1953年当時ライオネル・ハンプトン楽団がヨーロッパを旅していた。この楽団のメンバーにはリーダーよりアルバイトの禁止の命令が出ていた。これに対してメンバーに参加していたクリフォード・ブラウン、アート・ファーマー、クインシー・ジョーンズがこっそり抜け出して、スエーデンの地元のメンバーと録音したのである。演奏にはプレーヤーとして参加はしていないが、アレンジと企画を担当したのがクインシーなので、彼の名前でクレジットされているのである。
 そして演奏の内容であるが、クリフォード・ブラウンのブリリアントなトランペットはどの曲を聞いても素晴らしいものであるが、特に最後のLover Come Back To Meがぼくには最高である。アップテンポのリズムに乗って、ブラウンがよく聞きなれたテーマを演奏しなくて、いきなり華麗なアドリブを披露する。その後に続く地元プレーヤーのクラリネットやバリトンサックスもよくスイングして素晴らしく、とりを取るアート・ファーマーのトランペットもブラウンに負けじと頑張っている。聞いていて心地の良い演奏であり、思わず何回も聞き直してしまうほどである。
 このNew York Stockholmというアルバムは、amazon.jpとかiTunes-Storeなどで、データとして購入できるが、ぼくはe-musicというサイトで入手した。こういうデータサイトでは、ジャズのアルバムをオリジナル盤の形で提供せずに、このように編集してあまり聞いたことのないレーベル名で発売している事があるので、気が付いたら同じ内容ですでに持っているものをダブって購入することもある。今回もNo1からNo11までは、お馴染みのものであったが、Lover Come Back to Meが素晴らしかったので良しとしよう。
 本当は購入前にここまで調べればよいのであるが、なかなかそこまでは出来ない。


「Overnight In Paris」Clifford Brown (2011.5.30)

 前回に続いてクリフォード・ブラウンの話です。1953年にライオネル・ハンプトン楽団のメンバーとしてヨーロッパ演奏旅行をし、9月15日にリーダーの目を盗んでスエーデンでStockholm Sweetin'というアルバムを録音したことをお話しました。
 その後この楽団はパリでも公演を行いましたが、その時もクリフォード・ブラウン、アート・ファーマー、クインシー・ジョーンズ、ジ・ジ・グライスなどがリーダーの目を盗んで、現地のミュージシャンと一緒に録音をしています。
 1953年9月28日と10月10日にはGiGi Gryce Et Son Orchestreとして、9月29日と10月8日にはGiGi Gryce - Clifford Brown Sextetとして、10月10日にはGiGi Gryce - Clifford Brown Octetとして、10月11日にはGiGi Gryce - Clifford Brown Nonetとして、そして10月15日にはClifford Brown Quartetとして、随分精力的にパリに録音を残しています。
 そしてこのときの録音が、

表 Overnight In Paris 収録曲

1. Blue and Brown
2. The Song Is You
3. Minority
4. Keepin' Up With Jonesy
5. Strictly Romantic
6. You're a Lucky Guy
7. Brown Skins
8. Come Rain or Come Shine
9. Salute to the Band Box
10. It Might as Well Be Spring
11. Goofin' With Me
12. All the Things You Are
13. Baby
14. All Weird
15. Conception
16. I Cover the Waterfront
録音日
9月28日:4、7
9月29日:11、12、15、16
10月8日:3、5、9、13
10月11日:14
10月15日:1、2、6、8、10

 ・Clifford Brown Big Band In Paris / Prestige
 ・Clifford Brown Paris Collection Vol.1~4 / Jazz Legacy
 ・Clifford Brown Sextet In Paris / Prestige
 ・Clifford Brown Quartet In Paris / Prestige

 といったアルバムとなって発売されました。クリフォード・ブラウンの代表的な作品は、マックス・ローチとの双頭コンボでのものが素晴らしく、大変有名ですが、このパリでの作品も素晴らしいと思います。特に最後のパリ録音となったClifford Brown Quartet In Parisでは、彼の素晴らしいアドリブに触発されて、現地のミュージシャンも素晴らしい結果を残しています。

 前置きが長くなりましたが、今回ぼくが入手したのは、Clifford Brown / Overnight In Parisというタイトルのオムニバス・アルバムです。ここに収録されている作品と録音日との関係は表のようになっています。一連のパリ録音の中より万遍なくピックアップして編集してあるようです。クリフォード・ブラウンのパリ録音を1枚のアルバムでサッと知るには最適のアルバムです。
 本当に彼のような天才トランペッターが、25歳の若さで、交通事故で亡くなったことは残念ですね。いまだに彼を超えるトランペッターは現れていないと思います。
 締めは、彼を偲んでベニー・ゴルソンが作曲したI Remember Cliffordをリー・モーガンのトランペット演奏で聞くことにします。




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