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時々顔を出す本屋を覘いたら、一関市にあるジャズ喫茶「ベイシー」の店主、菅原正二さんが書かれた本「ぼくとジムランの酒とバラの日々」という洒落た装丁の本が目に留まった。菅原さんがまた本を出したんだ、買わなくては、と思って購入した。
「ベイシー」はジャズ好きならば、名前くらいは誰でも知っている、ジャズオーディオでは有名な店であり、また生前のカウント・ベイシーと深い親交があり、ベイシーが何回かこのお店を訪れている。
家に帰って、本を読み始めた。一関に「ベイシー」の音ありと日本中に鳴り響き、東京だけでなく日本中のあちこちからその音を聞きに来るお客さんがいる。そう成るにはとんでもない努力を積み重ねている菅原さんの、ジャズ再生にかけるオーディオへの情熱が一杯詰っている本だ。しかしかなり読んでから、ここに書いてある内容について、以前どこかで聞いたような気がしてきた。そして菅原さんのかかれた「あとがき」を読んではっきりした。この本は以前「ジャズ喫茶「ベイシー」の選択」というタイトルで講談社より出版された本が絶版になったために、駒草出版より新たに再出版したものだ。ぼくも18年前に読んだものですっかり忘れていたのである。
忘れた事がきっかけで、もう一度菅原さんの書かれた本を読み直したわけであるが、おかげでまた大いに刺激を受けた。もちろんオーディオの腕前は菅原さんの足元にも及ばないが、それでももう一度自分のシステムをチェックしてみようという気になった。この本に出てくるジャズ・アルバムを紹介しよう。
・Basie in London / Count Basie、Verve
菅原さんがベイシーとの最初の出会い、感動を受けたアルバム。
・Kelly Blue / Wynton Kelly、Riverside
若い頃に購入し今でも持っているアルバム。
・The Great Paris Concert / Duke Ellington、Atlantic
オーディオのチェックによく使うアルバム。



・Mercy, Mercy / Buddy Rich、Pacific Jazz
バディ・リッチのドラムをチェック。
・Waltz for Debby / Bill Evans、Riverside
ライブ録音の傑作
・Crescent / John Coltrane、impulse
これを聞いていてコルトレーンの姿が見えた。



・The Great Jazz Trio at The Village vanguard、EW
トニー・ウィリアムのドラムをチェック。
・King Size / Andre Previn、Contemporary
コンテンポラリイの好録音盤。
・Out Of The Afternoon / Roy Haynes、impulse
ドラムの録音はインパルスが素晴らしいという1枚。



まだあるが、ぼくもこれらのアルバムを聞いて、自分のオーディオ装置でどんな音に聞こえるか確認してみよう。

カウラ収容所脱走事件をNHKが番組で採りあげた。オーストラリアのカウラ市というところに第2次大戦時に捕虜収容所があり、多くの日本兵やイタリア兵が収容されていた。昭和19年8月1104名の日本兵がカウラ収容所からの集団脱走を計画し、結果として231名が死亡した。その内31名が自決した。後は全員捉えられ、逃げたものは一人もいなかった。オーストラリア側も警備の市民兵4人が殺された。その動機は何か。収容所で虐待があったわけでもなく、待遇に不満があったわけでもない。「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」という戦陣訓の教えをもとに、強硬に脱走を計画し、名誉の戦死を選択する人達に多数が従ったのである。
「日本軍には捕虜になるものがいない」この前提があったので、捕虜になったときの対処の仕方についての教育がなされていなかった。ジュネーブ協定に基づいた対処で言えば、尋問に対して拒否権も認められていた。しかし実際に捕虜になった日本人は、尋問されると知っていることはほとんど素直にしゃべってしまったという。唯一しゃべらなかったのが自分の階級と名前という。名前は偽名が多かったという。それは捕虜になった事が知れると家族まで非国民として扱われるのを恐れたためである。
同じ捕虜でもイタリア兵は、まず自分の名前と階級を堂々と名乗る。捕虜になることは、国を代表して前線で戦った証であり名誉なことであり、名乗ることにより家族に自分が無事なことを伝えるためである。そして軍事的に機密なことは決してしゃべらない。
この価値観の違いが、日本軍の捕虜の扱いにも現れていた。捕虜になるようなやつは恥ずべき奴であり人道的に扱う必要はない、と思っていた日本兵が多かったのである。
話は全く変わるが、福島第1原子力発電所の事故処理の中で、原子炉を冷却するために大量の汚染水が発生し、この汚染水を処理するためにアメリカとフランスから技術を導入して処理プラントを建設稼動する記事が新聞に載っていた。日本では原子力は安全であり、大きな事故は発生しない。この前提があったので、想定していないことに対処する技術の開発も必要ないという発想で動いていたようである。そして明らかになってきたのは、国が主催する公聴会のような場でも、賛成の世論形成のやらせが、電力会社が国の意向を受けて実施されていたようである。しかし結果は現状を直視すれば明らかである。
もっと身近な話もある。ある地方自治体の物品購入担当者のところへ、技術者が駆け込んできた。「緊急に物品を購入しなければならなくなった。数千円程度のものであるが、1時間で手配して欲しい!」件の担当者いわく「競争入札で購入してください!」「それでは間に合わないよ!」「間に合うように計画的に購入してください!」結局どうなったか・・・・・・
物品購入担当者にとっては、物を買うのは競争入札が基本であり、それ以外は想定外であった。
何か起きた時に、「それは想定外のことである」というと、結果に対する原因追究もあいまいになってしまう事が多い。責任追及というと色々と難しい面もあり、冷静に慎重に行うべきであるが、再発防止のための原因追究は徹底的に実施する必要があると思う。(多くの場合、原因追究をしっかりやれば、あとのことはその結果として見えてくる事が多い)
自分の身の回りにも「想定外のこと」をみずから作っていないか、冷静に見直す必要がある。

第九のIさんが現在の「第九のIのmonthlyフロイデ」を書き始める前にもブログを書いておられたのは、多くの方がご存知だと思います。その中で、ぼくにとっては大変貴重な情報源として「超名曲150曲--世界が選んだベスト盤はこれだ!!」という力作がありました。その内容について、ぼくが一部を紹介すると。
各曲の①~⑦の数字は、以下の名盤ガイドブックの番号を表しています。同じ番号が複数ある場合は、そのガイドブックでベスト盤が複数挙げられていることを、また番号に記載がない場合は、その曲のベスト盤が掲載されてないことを表しています。
①日本 21世紀の名曲名盤(音楽之友社)
②イギリス THE PENGUIN GUIDE TO COMPACT DISCS & DVDs 2005/6 EDITION
③イギリス GRAMOPHONE THE CLASSICAL GOOD CD & DVD GUIDE 2006
④フランスGUIDE DES CD RECOMPENSES PAR LA PRESSE ET LES GRANDS PRIX(2005-6edition)
⑤フランス LE PAVE DANS LA MARE
⑥ドイツ CD-FUHLER KLASSIK(2003)
⑦アメリカ ALL MUSIC GUIDE TO CLASSICAL MUSIC(2005)
・・・・・・ *印: 「第九のI」のひとくちコメントです。
先日ぼくがまとめて聞いたシューベルトの「ザ・グレイト」の項では、
93.シューベルト 交響曲第8(9)番「ザ・グレイト」
①フルトヴェングラー指揮ベルリンフィル<1951>(DG POCG3790)
②ヴァント指揮ベルリンフィル<1995>(RCA BVCC37225)
③ショルティ指揮ウィンフィル<1981>(デッカ UCCD5007)
④ヴァント指揮北ドイツ放送響<1991>(RCA BVCC37089)
⑤ケンペ指揮ミュンヘンフィル<1968>(ソニー SICC57)
⑥ヴァント指揮ケルン放送響<1977>(RCA BVCC38184~5)
⑦セル指揮クリーヴランド<1957>(ソニー SRCR2544)
*デモーニッシュなフルヴェン、ヴァントの3種、イギリスで決定的評価のショルティ、暖かいケンペ、精緻なセル、いずれも納得。
という内容であり、ガイドブックを読んでこれを編集された労力も大変なものがあると思いますが、Iさんのひとくちコメントを読ましていただくと、それぞれの演奏に対する造詣も深く大変参考になりました。聞くところによれば、この「超名曲150曲」に基づいて自分のオーディオファイルを見直した方もおられるようです。
ぼくとしては、この貴重なデータがこのまま埋もれてしまうのは大変残念で仕方ありません。ぜひともIさんがこのデータを再度ブログにアップしていただくことを願っています。さらに項目の追加やひとくちメモの改訂がなされれば望外の喜びです。

