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エリック・ドルフィーがプレステイジに録音した18枚のアルバムを9枚のCDに編集した、ERIC DOLPHY THE COMPLETE PRESTIGE RECORDINGSというセットが発売されている。当然ここには有名な、1961年7月16日にブッカー・リトルと共演したジャズ・カフェ、Five Spotでのライブが録音されている。
ぼくはジャムセッションとかライブの演奏が好きである。そこには一期一会の演奏におけるスリルとか、熱狂的な聴衆に煽られての白熱したプレイとか、いつもと違う演奏者の心の高揚を感じる演奏にであうと、最高にうれしいのである。このFive Spotでのライブも、そういう最高のライブ演奏の一つである。
エリック・ドルフィの前衛的ではあるが、パーカーのスタイルも踏襲した素晴らしいプレイと、ブッカー・リトルの最高のプレイがここにはおさめられている。この演奏をパソコンに取り込んで、実際のライブで演奏された順番に聞けば、ライブ感覚を味わうことができる。当日のメンバーは、Booker Little (tp) Eric Dolphy (as, bcl, fl) Mal Waldron (p) Richard Davis (b) Ed Blackwell (d)である。演奏順をドルフィーのディスコグラフィで調べると、以下のようである。
演奏順 | 曲名 | 収録アルバム | CDNo | |
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1. | 3147 | Status Seeking | Here and There | 7 |
2. | 3148 | God Bless The Child | Here and There | 8 |
3. | 3149 | Aggression | Eric Dolphy at the Five Spot Vol.2 | 6 |
4. | 3150 | Like Someone In Love | Eric Dolphy at the Five Spot Vol.2 | 6 |
5. | 3151 | Fire Waltz | Eric Dolphy at the Five Spot Vol.1 | 7 |
6. | 3152 | Bee Vamp | Eric Dolphy at the Five Spot Vol.1 | 7 |
7. | 3152 | Bee Vamp(alt. take) | Dash One | 8 |
8. | 3153 | The Prophet | Eric Dolphy at the Five Spot Vol.1 | 7 |
9. | 3154 | Number Eight (Potsa Lotsa) | Eric Dolphy and Booker Little Memorial Album | 8 |
10. | 3155 | Booker's Waltz | Eric Dolphy and Booker Little Memorial Album | 7 |
全部を聞き通していないので、続きは後日とします。

4月になって以降、急にあれこれとあわただしくなり、しばらくオーディオとも遠ざかっていたが、明日、SUNVALLEY AUDIOを通じて知り合ったM浦さんがお見えになるというので、前々からスピーカーの配置換えをしたいと思っていながらなかなか決断できなかったのを思い切って始めました。最大の目的はパソコンの置いてある部屋にアルテックのA7を移動し、JBLダブルウーファーの置いてある部屋にアルテックの6041を配置換えしたいという事です。
これを朝から一人で始めました。スピーカーを動かすという事は、駆動するパワーアンプも見直さなければならず、結局かなりの部分の装置の結線も見直すことになり、一連の作業が終わったのは夜もかなり遅くなりました。JBLとA7は何とか音だしの確認ができましたが、6041については音を出すこともできずに明日を迎えることになり、どんな音で鳴るのやら確認もできていません。
ぼくがスピーカーを配置換えすることをどうしてもしたいと思ったことは、時間的に一番長くいるパソコンの置いてある部屋にA7を置いて、A7の音で音楽を聞きたいと思ったからです。一人でジャズを聞いているときは、比較的小音量で聞いていますが、それでもA7は十分なスケール感を感じさせる音で鳴ってくれるからです。それとLPでクラシックを聴くときは、使用するカートリッジを、例えばグレースのF-9などに工夫すれば、弦のしっとりとした音色も表現してくれます。要するにA7を身近なスピーカーとして手元に置いておきたかったのです。以前そうしていたのですが、A7を広い部屋に置いて目いっぱい鳴らしてみたいと思い変更したのですが、戻すことにしたのです。
ブルーノートのオリジナル盤などの音の良い音源を、目いっぱいヴォリュームを上げて聞くジャズの快感を味わうには、JBLのダブルウーファースピーカはまさに打ってつけです。それでも今まではクラシックも聞くことを意識して、音のバランスを取っていましたが、考え方を変えて、ジャズが最も心地よく聞こえるように、中音域の音を今までよりも3db程持ち上げて張り出しを強くしてみました。その結果ぼくの好みのとても元気の良い音でジャズが鳴ってくれます。クラシックの音楽を聞くときは、成り行きに任せて聞くことにします。
その代りに新たに持ち込んだ6041をクラシックが心地よく聞けるように、チューニングしたいと思っています。これについては、このスピーカーの特性を最も良くご存じのSUNVALLEY AUDIOの大橋さんの助言を得たいと思っています。明日お見えになるM浦さんとはジャズを聞くことにしていますので、6041はそっとしておきます。
そして20日になってM浦さんがお見えになりました。わざわざ自宅から2トラ38のテープデッキを持参されて、昔ご自分で録音されたジャズのテープを聞かせていただきました。やっぱり38センチのスピードのテープはよい音を聞かせてくれます。ぼくも刺激されて、ブルーノートのオリジナル盤を再生してみました。これもテープに負けない音で再生します。
途中から大橋さんが顔を出してくれました。JBLの音を聞いてすぐに、音が変わりましたねと指摘されました。さすが相変わらず耳が良いですね。JBLの音を聞きながら、横に置いてある6041のチューニングをJBLの音に合わせるようにされました。見ているとたいへん手際が良いです。しばらくこれで2頭立てでジャズを楽しみますが、6041についてはクラシック用にチューニングしたいと思っているので、大橋さんに協力をお願いしておきました。


スピーカーの配置換えをして、パソコンの置いてある部屋にはA7が収まっている。夜はこの部屋であまり音を大きくしないで音楽を聞いているが、ここしばらくはもっぱらジャズを聞いていた。ところがA7が収まった時よりは不思議なことにクラシックを聴いている。それにはもちろん理由があるのだが。
ひとつの理由は、20日に約40枚程度のクラシックのLPを入手した。その中には、アルバンベルクの6枚のモーツァルトの弦楽四重奏曲LPとか、ワルター・クリーンの演奏するモーツァルトのピアノソナタ第11番、同じくワルター・ギーゼキングの演奏。ザロモン・クワルテットの演奏するセレナード第13番など、大好きなモーツァルトの音楽がたくさん入手できたこと。
そして最大の理由は、これらの演奏を聞くにあたってLP再生用のカートリッジにGRACEのF-9を使用したことである。MMカートリッジの雄と言えばSHUREとELACが挙げられるが、両者の再生する音は対照的である。SHUREをスタインウェイに例えれば、ELACはベーゼンドルファーに例えられる。ぼくがジャズを聞くときはSHUREのV15やTECHNICSの205Cを用いるが、これはどちらかというと押し出しの良いメリハリサウンドである。これに対してGRACEのF-9というカートリッジは日本のELACと言われるだけあって、しっとりとしてクリーンなイメージの音がする。不思議なことにこのカートリッジでA7を鳴らすと、クラシック音楽が本当にしっとりと聞こえ、ぼくの好きなイメージと合うのである。
ドライブ系はパワーアンプにSV-8B、但し球はBRIMERのCV4068とスヴェトラーナのCロゴ太菅を使用。(いろいろ試したがこの組み合わせがぼくには合っている)プリアンプはSV-722のマランツタイプ。球はムラードのX7。そして敢えてイコライザーアンプにSV-6を使用している。この中庸なイコライザーが意外と音をすっきりさせてくれるのだ。
と、訳知り顔に書いたが、実は最初からこれを予測していたわけではなく、手に入れたLP、モーツァルトのピアノソナタ第11番イ長調「トルコ行進曲つき」をワルター・クリーンが演奏するアルバムを聞いて、なんとクリーンで、真珠のようにキラキラとした演奏なんだろうと思ったのである。先日亡くなられた吉田秀和氏の表現を借りれば、「ピアノ音の抜けるように綺麗で、澄み切っている。タッチもちょっと硬質の陶器のような、カチッとした手ごたえがある。透明で少しも曖昧でなく、実に整った、誇張のない演奏をする」まさにそのような演奏が聞こえてきたのである。
ぼくのA7からこのような演奏が聞こえてきた驚きと感動から、例によって手元にある第11番のソナタをいろいろ取り出して聞き出した。ワルター・ギーゼキング、リリー・クラウス、イングリット・ヘブラー、アンドラーシュ・シフ、ガブリエル・タッキーノ、マリア・ピリス、内田光子などである。こんなに集中して聞いたのは初めてである。GRACEのF-9カートリッジの力であると思っている。
次ぎに聞くことにしたのが、アルバンベルクの演奏するモーツァルトの弦楽四重奏曲のうちの6曲のハイドンセットである。 これをF-9カートリッジとTECHNICSの205Cカートリッジで比べてみると、やはりF-9カートリッジの方がデリケートで演奏の細かいニュアンスをよく表現するのに対して、205Cはダイナミックで明るい表現である。室内楽まではF-9の表現する世界の方がぼくの好みである。それ以外の分野についてはまだ確認していない。
GRACEのカートリッジでもこのように新しい世界を体験させてくれたので、やはり本家ELACのカートリッジを聞きたいと思うが、なかなか入手が困難なようである。
