ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
吉田秀和推薦のモーツァルト(2012.6.5)

 ぼくにとって、クラシック音楽を理解するうえでたいへん参考になった著作を多く書かれた吉田秀和さんが2012年5月22日に亡くなられました。本当に残念なことであります。ぼくの大好きなモーツァルトの作品について、これだけは聞いておきたいという曲を「LP300選」という本に挙げておられます。ぼくはこの本を手元に置いて、ここに書かれた曲は絶対に聞くというガイドに使ってきました。モーツァルトのリストだけ紹介します。但しオペラ、教会音楽、声楽については除いています
 1.交響曲 第38番・ニ長調(プラハ)K503
 2.交響曲 第39番・変ホ長調K543
 3.交響曲 第40番・ト短調K550
 4.交響曲 第41番・ハ長調(ジュピター)K551
 5.セレナード・変ロ長調(グランパルティータ)K361
 6.ディヴェルティメント・ニ長調K334
 7.ディヴェルティメント・変ホ長調K563
 8.ピアノ協奏曲 第20番・ニ短調K466
 9.ピアノ協奏曲 第21番・ハ長調K467
 10.ピアノ協奏曲 第23番・イ長調K488
 11.ピアノ協奏曲 第24番・ハ短調K491
 12.ピアノ協奏曲 第27番・変ロ長調K595
 13.ヴァイオリン協奏曲 第4番・ニ長調K218
 14.ヴァイオリン協奏曲 第5番・イ長調K219
 15.クラリネット協奏曲・イ長調K622
 16.フルート協奏曲 第1番ト長調・K313
 17.弦楽5重奏曲 第4番・ト短調K516
 18.クラリネット5重奏曲・イ長調K581
 19.弦楽4重奏曲 第14番・ト長調K387
 20.弦楽4重奏曲 第15番・ニ短調K421
 21.弦楽4重奏曲 第17番・変ロ長調K458
 22.弦楽4重奏曲 第19番・ハ長調(不協和音)K465
 23.ピアノ4重奏曲 第1番・ト短調K478
 24.ヴァイオリン・ソナタ 第25番・ト長調K301
 25.ヴァイオリン・ソナタ 第28番・ホ短調K304
 26.ヴァイオリン・ソナタ 第32番・ヘ長調K376
 27.ヴァイオリン・ソナタ 第34番・変ロ長調K378
 28.ピアノのためのロンド・イ短調K511
 以上の曲について吉田さんは、なぜこれを取り上げたか1つ1つについて丁寧に述べておられます。また取り上げなかった曲に対してもその理由を述べておられます。その中で意外なのは、モーツァルトのピアノ・ソナタを取り上げておられません。これについては自分で演奏して楽しむことにする、と言っておられます。演奏できない、ぼくのリストにはピアノ・ソナタも入れております。


再びカートリッジの話(2012.6.10)

 LPレコードを再生するためには、カートリッジは必需品である。ぼくもこれまでいろいろ試してきた。若いころはMCタイプのものを使用していたが、最近はMMタイプの使用が中心である。MCタイプの、どちらかというと高分解能で律儀な音よりも、MMタイプの開放的な音の方が、最近は好ましく思っているからである。

 ジャズを聞く場合は迷うことなくテクニクスの205CⅡHというMMカートリッジを使用する。このカートリッジは1976年頃に発売されており、その当時から持ってはいたが、その頃はMCカートリッジに目が向いていて、使われないことが多かった。テクニクスのカートーリッジはこのほかに207Cとか270Cといった製品も聞いたが205Cを超えるものはなかった。
 それに対して、クラシックを聴くときは、なかなか気に入ったMMカートリッジが見つからなかった。しかし先回の雑記帳に書いたように、たまたまGraceのF-9を使用した時に、これだという認識を新たにしたのだ。
 それでモーツァルトにとどまらず、改めてクラシックのLPをいろいろ聞いてみた。そんな中に、ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)、レナード・バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏するベートーヴェンのピアノ協奏曲・第5番を聞いていて引っかかることを感じた。これは日本のCBSソニーの制作したLPであるが、音場に奥行きがなく平板に聞こえるのである。ぼくが良く聞くルービンシュタインとバレンボイムの演奏ではそうでもないのに、このCBSソニー盤は違和感を感じる。

 カートリッジの選択によってどうにかならないかと、あえてMMに限定して聞いてみた。テクニカ、ソニー、デノン、シュアーなどを試したが何となくしっくりこない。そんな中でGoldringの1012GXで再生したときにピンときた。このカートリッジはオーディオ的にはそれほどハイファイな音ではないが、実に音楽を心地よく聞かせる術を心得ているようである。一つ一つの音を明瞭に再生して、返って音を平板にさせるのではなく、少し塊として音だしをして、何となく奥行きがあるように聞かせるのである。
 ぼくは、現代的な高分解能のMCカートリッジも聞くが、こういう音は長く聞いていると疲れてしまう。やはりMMのおおらかな中に少し個性のあるカートリッジを聞くのが合っている。もう一つMMカートリッジは新品でもMCより価格的にはるかに安く、とっかえひっかえて楽しむにははるかに手頃であるのも魅力である。言っていることと矛盾するが、それでもリファレンス的に使用しているのはオルトフォンのSPUであるが。
 クラシックを聴くときは、小編成の音楽はGraceのF-9、大編成の音楽はGoldringの1012GXを当面使い分けて聞こうと思っている。それにしてもELACのカートリッジはなかなか見つからない。


アーゴ盤のズートのLP(2012.6.20)

 ぼくが若いころ夢中になって聞いた2枚のLPがある。1枚がジャッキー・マクリーンの初リーダ作の、通称"猫のマクリーン"である。それもジャケットが猫だかフクロウだか分からない再発盤の方である。このB面のThe Way You Look Tonightと Lover Manの2曲が大変気に入っていて、繰り返し繰り返しよく聞いたものである。
 そしてもう1枚がアーゴ盤のズートである。(リバーサイドにもズート!というアルバムがある)こちらもA面トップの、9:20スペシャルのいかにもこれがズートだという楽しい演奏と、B面のめずらしくズートがアルトサックスを吹いているボヘミア・アフター・ダークが気に入って、これも耳タコくらいよく聞いていた。
 ・Jackie McLean "Jackie McLean Quintet"(Jubilee)
 ・Zoot Sims "Zoot Sims Quartet"(Argo)
 しかし半年くらい前に、ジャズのLPを整理していて気付いたのだが、2枚ともどこかに行ってしまったようで無いのである。どこに行ったのか記憶がすっぽり抜けているのである。どちらもCDでは再発されているが、LP好きのぼくとしてはできればLPでもう一度手に入れたいと思っていた。だがどちらも希少盤でなかなか見つからなかった。
 それが今日、グッド・ベイトに出かけたら、アーゴ盤のズートが売りに出ていたのである。
 ZOOT SIMS (ts,as*)
 JOHNNY WILLIAMS(p)
 GUS JOHNSON (ds)
 KNOBBY TOTAH (b)

SIDE A
1 920 SPECIAL
2 THE MAN I LOVE
3 55TH AND STATE
4 BLUE ROOM

SIDE B
1 GUS'S BLUES
2 THAT OLD FEELING
3 BOHEMIA AFTER DARK *
4 WOODY'N YOU


 家に持ち帰り、改めて全曲を聞いてみました。若き日のズート・シムズの溌剌としたプレイが全編にみなぎり、昔よく聞いていた頃の感動がよみがえりました。
 こうなると、フクロウのような"猫のマクリーン"にもいつか巡り合えるのを楽しみに、待つことにします。


ついに放映された「ココはな・ジャズ編」(2012.6.26)
(写真はKATCHの番組表より引用)

 西三河地方のローカルなケーブルテレビ「KATCH」に「ココはな」という番組があります。「ココはな」というのは、ここだけの話しという意味です。この番組はKATCHのスタジオに、毎回こだわりのある人が集まって、マニアックな世界のことを、言葉だけで語るという趣向です。その番組の20回記念番組に「ジャズ」ていうテーマで、知立のジャズ喫茶「グット・ベイト」が選ばれ、スタジオを飛び出して現地でトークするという企画となり、マスターからぼくと、もう一人Aさんが指名され4月の30日に収録が行われました。ぼくたち3人の相手をしてくださる進行役は、真渓(しんたに)ハナさんという東海テレビなどで活躍されているとても魅力的な女性です。
 ジャズという音楽を、音を聞かずに言葉だけで説明するというのは、料理の美味しさを言葉だけで説明するのに似ていて、とてももどかしく2時間強の収録が終わってみると、大変疲れてしまいました。それがスタッフの方の編集を経て、6月24日に放映されました。現在それを飽きもせずに何回か繰り返して見ています。見るたびにいろいろな発見があります。
 内容の構成についてまとめてみると。
 ・自己紹介
 ・JAZZとの出会い
 ・好きなジャズプレーヤー
 ・JAZZとは何か
 ・レコード・コレクションの紹介
 ・おもしろジャズのジャケット
 ・レコードの手入れ
 ・おすすめジャズ入門編

 という具合に、大変うまく編集されており、自分の印象では、何となくいろんなことを話したという印象しかなく、あんな内容で見るに耐える内容になるのかと心配していましたが、それなりのテンポもあって少しほっとしています。日頃ジャズに関心のない家族に見せたところ、そんなに面白いとは思わないが、退屈はしなかったという感想をもらいました。
 ぼくがこの番組を見て印象的なことを言うと、トークの間中ずっとジャズが流れていますが、これは番組収録時にはなく、あとからスタッフが編集で挿入したものですが、よく聞くと話の内容にある程度合わせて流れています。そんな中で、ジャズとは何かという話が途切れたところで、簡単なまとめがあり、その間にフランク・シナトラによく似た声の男性のヴォーカルが入っていますが、この曲名が「はじめてのチュウ」という日本のアニメ、キテレツ大百科のテーマ曲であります。それを日本のアニメファンであるスエーデンのラスマス・フェイバーがアレンジしたジャズのCDで、ジャズヴォーカルにアレンジされたものです。
 なぜ僕がこんなことをいうかと言えば、おすすめジャズ入門編で、かしこまって色々なことを言っているが、そんなことを言わなくともこのラスマス・フェイバーがアレンジしたCD、プラチナ・ジャズ ~アニメ・スタンダードVol.1~3あたりを紹介すれば最良の入門ジャズが聴けるからである。




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