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今日は、朝から豊田市高年大学の環境農学科の皆さんの農業実習の講師の仕事があった。主に野菜つくりの指導であるが、1週間に2回の畑仕事では、なかなか思うように野菜の手入れができず、作業が遅れがちになったり、病害虫が発生してその防除に追われたり、追肥をしたりと、現場に行くたびにやることが次々と発生して、結構忙しい。それでも20名の皆さんが楽しく、一生懸命作業をしておられるので、こちらも真剣になる。
今日は思いのほか作業がはかどり、正午少し前に終了した。家に帰る途中で思い立ち、近くのハードオフに顔を出した。一通り店内を見て回ったが、取り立ててこれはと思うものは見つからなかった。何かないかと中古のレコード棚を見ていると、ジャンク品としてレコードのボックスが無造作に置いてあった。手に取ってみると、「不滅のクラシック名曲集/ビクター・ファミリー・クラブ」というものであった。テープが張ってあり、これ以上の内容は分からないが、安いので買って帰ることにした。家に帰って開けてみると、ボックスの中には11枚のLPが入っていた。
1. ベートーヴェン・交響曲第5番/クルト・マズア指揮、ゲヴァントハウス管弦楽団
2. モーツァルト・交響曲第41番/ルドルフ・バルシャイ指揮、モスクワ室内管弦楽団、ほか
3. ドヴォルザーク・新世界/ニコライ・アノーソフ指揮、ソビエト国立交響楽団
4. ヴィヴァルディ・四季/エフゲニー・スミルノフ(v)、ルドルフ・バルシャイ指揮、モスクワ室内管弦楽団
5. メンデルスゾーン・ヴァイオリン協奏曲/ワレリー・クリモフ(v)、マキシム・ショスタコーヴィッチ指揮、ソビエト国立交響楽団、ほか
6. ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第5番/ルドルフ・ケーラー(p)、キリル・コンドラシ指揮、モスクワ・フィル・ハーモニー、ほか
7. 華麗なるオーケストラの響き:軽騎兵序曲、中央アジアの高原にて/エフゲーニ・スヴェトラーノフ指揮、ソビエト国立交響楽団、ほか
8. シュトラウスの世界:美しく青きドナウ、皇帝円舞曲/ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、モスクア・ラジオ交響楽団
9. 器楽小品集1序奏とロンド・カプリチオーソ/イーゴリ・オイストラフ(v)ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、モスクア・ラジオ交響楽団、ほか
10. 器楽小品集2
11. バレエ「白鳥の湖」/ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮、ボリショイ劇場管弦楽団、ほか
以上の内容を見て分かるように、No1の1枚を除いて、すべてソビエト時代の指揮者と管弦楽団の演奏が詰まっている、おそらくメロディア原盤の音源を用いたセットと思われる。
すべての演奏を聴いたわけではないが、7枚目の「華麗なるオーケストラの響き」というアルバムが特に興味を引いた。①軽騎兵序曲、②詩人と農夫序曲、③酋長の行列、④ダッタン人の踊り、⑤朝‐ペールギュントより、⑥中央アジアの高原にて、⑦ファランドール、⑧ハバネラの8曲が収録されており、演奏はゲンナジー・ロジェストヴェンスキ指揮、モスクワ・ラジオ交響楽団・・①、②、⑤、同指揮でモスクワ・フィルハーモニー・・③、同指揮でボリショイ劇場管弦楽団・・⑧、マルク・エルムレル指揮、ボリショイ劇場管弦楽団・・④、エフゲニー・スヴェトラノフ指揮、ソビエト国立交響楽団・・⑥、⑦となっており、ソビエト時代の華麗なる響きがいっぱい詰まっている。

隔月刊誌「ジャズ批評」の1012年7月号(Vol.168)の記事に、ジャズ喫茶「グッドベイト」が載っている。田中伊佐資さんの連載「アナログ・オーディオふらふらめぐり」に取り上げられたのである。記事の冒頭の書き出しは、「愛知県・知立市にある「グッドベイト」は僕のなかで20年以上前から、心のどこかに引っ掛かっていたジャズ喫茶だった。その理由は、マスターの神谷年幸さんの文章を何かで読んだような気がするが、はっきり思い出せない。・・・」というもので、写真入りで色々とインタビューを受けた内容が紹介されている。
もちろんぼくは、ある日、田中さんが予告もなしにふらっとベイトにやってきて、コーヒーを2杯もおかわりしながら、マスターにグットベイトについての紹介記事を書きたいのでお話を伺いたいと言って、色々とお話しされていったことは事前に聞いていた。それでも、田中さんがどんな風にまとめて記事にされたか興味があったので、7月号をわざわざ購入したのだ。
グッドベイトに関する記事は、非常に的を得たまとめ方をしてあって、ぼくも楽しませてもらったが、それ以外に5月号に引き続いての特集「ジャズ365日名曲を聞こう♪Vol.2 7月~12月」がなかなかデータとして面白い。カレンダーの1日ごとに、その日に生まれたジャズメンと亡くなったジャズメンを紹介し、どちらかのジャズメンのアルバムを紹介している。
それ以外にぼくの目に留まったのが、これも連載であるが、「岩浪洋三のジャズ日記」に今月読んだ本の紹介があり、著者森本恭正氏から直接いただいたという「西洋音楽論~クラシックに狂気を聴け」(光文社新書)のことが取り上げられていた。そこには"本当はアフタービートだったクラシック音楽"とか"スイングしないクラシックなんて有り得ない"と言ったぼくにとっては魅惑的な言葉が連なっていた。
これは僕も読まなくてはと思い、久しぶりに知立市の本屋さんを訪れて、この本を探した。こういう目的があって本屋巡りをするのは、本当にわくわくして楽しいものである。残念ながら1軒目の本屋さんでは見つからなかったが、2件目に訪ねたところで見つかった。この本の目次を紹介すると、
第1章 本当はアフタービートだったクラシック音楽
第2章 革命と音楽
・狂気のクラシック音楽 ・十二音音楽とロシア革命 など
第3章 撓む音楽
・スイングしないクラシックなんて有り得ない など
第4章 音楽の左右
・カタカナの功罪 ・世界で唯一タンギングをしない国・日本 など
第5章 クラシック音楽の行方
第6章 音楽と政治
ぼくは面白くてこの本を一気に読んでしまった。作曲家であり指揮者である著者が、ヨーロッパでの体験を踏まえて、特に技術的には完璧であるが、音楽が伝わってこないと言われる、日本の演奏家のどこに問題があるのか、東西の文化の違いなどをふまえながら自らの体験を語っているところに、説得力を感じるのである。頭でっかちな、凡百の西洋音楽論などを読むよりはるかに面白い。
