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モンサント、デュポン、ダウケミカルという企業名は世界の大手化学会社として多くの方に知られていると思う。では、シンジェンタ社という企業を名はどうか。実はこの4社は農業分野では世界の最大手で、世界の有用な種はこの4社に独占されている。日本にはタキイ種苗(株)とか(株)サカタのタネと言った国産会社があるが、お隣の国韓国では、すべての大手種苗会社が上記4社のいずれかの子会社になっている。シンジェンタ社というのは、スイスのチバガイギー、英国のICI、スエーデンのアストラと言った大手企業の農業部門が合併を繰り返して設立された、スイスに本部を置く多国籍企業である。
ジュリボフロアブルという商品は、シンジェンタ社が開発した新型の殺虫剤で、日本では2010年1月に農薬登録され、3月から販売されていて、今月で発売から2.5年という事になる。シンジェンタ社が開発した農薬には、殺虫剤としてアクタラ、アファーム、トリガード、マッチなどが、殺菌剤としてアミスター20、リドミルMZなどが挙げられる。特にアクタラはネオニコチノイド系のチアメトキサムという化学成分を持った新しい殺虫剤である。
このジュリボフロアブルとよく似た商品に、デュポンが開発して2009年に農薬登録されたプレバソンフロアブル5という商品がある。これはアントラニルジアミド系のクロラントラニリプロールという化学成分を持った薬剤で、昆虫に筋肉弛緩剤として作用し、結果として昆虫を餓死させる。対象となる昆虫はチョウ目およびハエ目害虫に高い効果を発揮する。使用法は従来の散布法に加えて、ポット苗の灌注処理においても卓効を示す。
これに対してジュリボフロアブルはアクタラに使用されていたチアメトキサムにデュポンの開発したクロラントラニリプロールを導入して複合化した農薬である。チアメトキサムには昆虫の神経伝達系の回路を阻害する作用があり、これとクロラントラニリプロールによる昆虫の筋肉弛緩剤効果が複合される。対象となる昆虫はチョウ目およびハエ目害虫のみならず、プレバソンフロアブル5では効果のなかったネギアザミウマやアブラムシにも効果を発揮する。使用法はポット苗の灌注処理である。灌注により根から吸収された成分が約1か月にわたり効果を持続するので、キャベツ、ハクサイ、レタス、ブロッコリーの定植時の防虫対策に大変有効である。

今年になってキャベツ、ハクサイ、レタス、ブロッコリーの定植にジュリボフロアブルを使用してみたが、シンジェンタジャパンが公開している効果の写真と全く同じ結果となった。これにより防虫ネットなどの手間が大幅に省けるので、これからは大いに普及する可能性がある。
農業も新しい技術が確実に普及するようである。(広く普及するには、価格が課題)

一昨日、近くの友人が3人、我が家に音楽を聴きに遊びに来ました。しばらくは皆でジャズを聞いていましたが一人が、実は僕はストラヴィンスキーの春の祭典が大好きなんです、といってピエール・ブーレーズがクリーブランド交響楽団と1991年3月に録音したCD(DG)を取り出して聞き始めました。
それならばという事で、手持ちのLPをごそごそ取り出して下の一覧表にあるハルサイのさわりの部分を聞き始め、あれこれと演奏について意見交換となりました。
ストラヴィンスキー 「春の祭典」 | |||||||
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No | 指揮者 | オーケストラ | レーベル | 番号 | 年 | 月 | コメント *1 |
1 | ピエール・モントゥー | パリ音楽院管弦楽団 | LONDON | GT 2013-4 | 1956 | 11 | 初演者による演奏 |
2 | レナード・バーンスタイン | ニューヨーク・フィル | CBS-SONY | 13AC 21 | 1958 | 7 | 熱気あふれた演奏(3は2と同じ演奏をミントが制作 音が格段に良い) |
3 | レナード・バーンスタイン | ニューヨーク・フィル | FRANKLIN MINT | 83 | 1958 | 7 | |
4 | イーゴリ・マルケヴィッチ | フィルハーモニア管弦楽団 | EMI | AA/5039 | 1959 | 2 | ロシア的野生味 |
5 | ピエール・ブーレーズ | フランス国立放送管弦楽団 | COLUMBIA | OC-7260-PK | 1963 | 6 | |
6 | ヘルベルト・フォン・カラヤン | ベルリン・フィル | DG | SLGM-1260 | 1963 | 10 | 機能美の極致 |
7 | ピエール・ブーレーズ | クリーブランド・オーケストラ | CBS-SONY | 20AC 1546 | 1969 | 7 | 精妙精緻 クールに冴えわたる |
8 | レナード・バーンスタイン | ロンドン交響楽団 | CBS-SONY | FCCA 535 | 1972 | 4 | |
9 | ゲオルグ・ショルティ | シカゴ・シンフォニー | LONDON | K18C-9233 | 1974 | 5 | 見通しの良さと音楽の熱さ |
10 | クラウディオ・アバド | ロンドン交響楽団 | DG | MG 1012 | 1975 | 2 | 細部の抽出が衝撃的 |
11 | ヘルベルト・フォン・カラヤン | ベルリン・フィル | DG | MG 1088 | 1975 | 12 | 機能美の極致 |
12 | コリン・ディヴィス | アムステルダム・コンセルトヘボウ | PHILIPS | X-7783 | 1976 | 11 | 全体のバランスの良さと音楽の質の高さ |
13 | ズービン・メータ | ニューヨーク・フィル | CBS-SONY | 23AC501 | 1977 | 9 | |
14 | 小沢征爾 | ボストン交響楽団 | PHILIPS | 25PC-101 | 1979 | 12 | |
15 | アンタル・ドラティ | デトロイト・シンフォニー | LONDON | L28C-1110 | 1981 | 5 | バレエ音楽としての春祭 |
16 | ピエール・ブーレーズ | クリーブランド・オーケストラ | DG | 435 769-2 *2 | 1991 | 3 | ゲルギエフと反対の極致 |
17 | ワレリー・ゲルギエフ | キーロフ歌劇場管弦楽団 | PHILIPS | UCCP-1035 | 1999 | 7 | 原始的な音のエネルギー |
*1「現代名盤鑑定団」小林利之、浅里公三編著よりの一口コメントの引用 *2 持ち込まれたCD |
こうしてみると、ハルサイには驚くほど表現に幅があり、すっかり時のたつのも忘れて楽しみました。ぼく的にはオーディオ的に最も迫力のあるコリン・デイヴィス指揮、アムステルダムコンセルトヘボウの演奏が気に入りました。
またイーゴリ・マルケヴィッチ指揮、フィルハーモニア管弦楽団のテンポの速い野性的な演奏も面白いと思いました。と、言い出すといろいろありますが、みんなであれこれと楽しみました。

英語でresurgenceといえば、それは再起とか復活、再燃と言った意味の名詞であるが、日本語としてリサージェンスという言葉を用いると意味が違ってくる。農文協のルーラル電子図書館の現代農業用語集で解説されているリサージェンスという言葉を紹介すると次のようになる。
「ハダニが発生してきたので農薬を散布したら、かえってハダニがふえてしまったというように、害虫防除のために農薬を散布すると、害虫が散布前よりもふえたり、農薬を散布しなかった場合よりも、かえって多くなる現象のこと。
その要因として、(1)天敵の減少、(2)競争種の除去、(3)農薬が寄主植物の生理を変えることによる間接的な害虫の増殖率の上昇、(4)農薬の直接刺激による出生率の増加、(5)殺虫剤抵抗性害虫の出現、などがあげられている。
ムダな農薬散布はムダなだけではすまない。天敵を殺し、ただの虫を殺し、田の中の虫の世界を不安定にしてしまう。このリサージェンスへの着目はその後、田んぼごとに違う害虫の発生状況を虫見板で農家自ら確かめる減農薬の取り組みに発展し、天敵を生かす防除への道を大きく広げた。」
こういう現象は知識としては分かっていても、実感はなかなかわかないものであるが、今年の夏にどうもこれではないかという事を体験したのである。ぼくはナスを少しばかり栽培しているが、春から夏にかけてアブラムシやコナジラミという害虫が発生し、しばしば悩まされる。注意して防除に努めるのであるが、今年の夏にアブラムシをしっかり退治しようと、アブラムシに卓効のある合成ピレスロイド系の薬剤トレボン(エドフェンプロックス剤)を使用した。その甲斐あってアブラムシはほとんど居なくなったが、しばらくして畑を観察してみると、ナスの畑一面にハダニが大発生していたのである。
これは8月というハダニの発生しやすい時期にトレボンを使用したために、テントウムシとかハダニアザミウマ、カメムシといったハダニの天敵を減少させてしまったこと、また競争種であるアブラムシが減ったこと、そしてトレボンがハダニには無毒であることが、ハダニにとって増殖しやすい環境を作ってしまったのだと思われる。
こういったことを防ぐには、ハダニの発生しやすい時期のアブラムシ退治には、ハダニにも効果のある薬剤を選定する。例えばトレボンに殺ダニ剤を併用する。またはダニにも効果のある合成ピレスロイド系の薬剤マブリック(フルバリネート剤)などを使用するのが良い。さらに大事なことは、畑の回りにソルガムなどを植えて、これらの害虫の天敵を呼び寄せて、害虫が異常繁殖しない限りはあまり神経質にならずに、減農薬を心がけるのが良いと思われる。
これは農業の話であるが、人間の世界においても、抗生物質を多用する病院において、しばしば耐性菌が出現して、多数の院内感染が発生するというのも、リサージェンス現象ではないかと考える。
便利だと思われる薬剤も、過ぎたるは及ばざるがごとしで、多用すると思わぬ落とし穴にはまるという事を、身をもって体験した。
ぼくの趣味であるオーディオにおいても、以前はケーブル1本変えたらどのように音が変化するか耳を針のように研ぎ澄ましてチェックしたものである。それはそれでよい経験であるが、正直音楽そのものを楽しむには余裕はなかった。今はあまりこだわらずに音楽そのものを楽しむようにしている。
あまり神経質にならずに、何事も、いい加減!というのが良いようである。

昨年の10月以降、気分の問題であまり音楽を聴くことが出来なくて、それを引きずったという事もあり、年末年始はもっぱら読書をして過ごしました。中でも偶然手にした「白川静・漢字の世界観」松岡正剛著、平凡社新書を読み始め、白川静さんについてたいそう興味が湧いた。この本は白川静の世界を紹介するための入門書として著者が書いたものである。その内容を目次で紹介すると、
1.文字が世界を憶えている
2.呪能をもつ漢字
3.古代中国を呼吸する
4.古代歌謡と興の方法
5.巫祝王のための民俗学
6.狂字から遊字におよぶ
7.漢字という国語
という章立てで詳しく紹介している。なかでも甲骨文、金文の研究の基ずく漢字の紹介はまさに目から鱗である。文字は言葉の反映であり、言葉は思想の反映である。という立場で甲骨文を読み解くと、当時(殷の時代)の古代人の考え方までは見えてきて、白川ワールドに引き込まれてしまう。
白川さんの文字学の集大成が「字統」「字訓」「字通」という3つの字書である。
新訂「字統」平凡社・普及版、1107ページ、6300円、漢字の成り立ちを知る字源辞典
新訂「字訓」平凡社・普及版、944ページ、6300円、日本語と漢字の出会いを探る古語辞典
「字通」平凡社・大型本、2094ページ、23000円、字書三部作の掉尾を飾る漢和辞典
これを白川さんは13年の歳月をかけて一人で完成させた。ぼくは中身を本屋で少し読んだがまだ手元には持っていない。しかし近い将来手元に置きたいと思っている。
白川さん自身の本を読みたいとおもい、とりあえず近くの本屋に出向き次の4冊の本を入手した。
「漢字」白川静著、岩波新書
「孔子伝」白川静著、中公文庫
「呪の思想」白川静、梅原猛対談集、平凡社ライブラリー
「回想90年」白川静著、平凡社ライブラリー
「漢字は」1970年、白川静60才になって初めて一般向け読者のために書き下ろした本であり、関心ある読者に衝撃を与えた、という事が松岡正剛さんが紹介している。
「回想90年」という本の中で宮城谷昌光さんと対談している章があり、宮城谷さんは白川さんの著作を勉強して小説を書いていると言っているが、次のような対談の箇所がある。
宮城谷「・・・小説を書くときに反対に苦しめられます。古代の人が住む家を、いまの「家」という字で書くと、概念的に違う。「宮」という字を書けばいいんだろうけども、そうすると、日本人は宮殿のような大きな家屋を思い浮かべてしまう。・・・」
白川「「家」という字はね、甲骨文では「大乙の家」とか、そういう祖先の王様の名前を付けて書かれるんです。だから、これは祀る場所を言う。たいていの辞書は「豚と一緒に住む」と書いてあるが、そうではない。豚ではなくこれは犬。建物を建てるときに下に埋める犠牲です。「塚」という字も同様、そういう犠牲を埋めて、墓所とするわけ。・・・」
宮城谷さんは、白川静の研究成果を取り入れて、中国の古代を場面とした「天空の舟」「侠骨記」「王家の風日」「夏姫春秋」などといった小説を多く書いておられる。そこでは当時の人々がどのようにものを考えたかといったことや、表現する漢字は何を使ったかなどにも神経を行き届かせている。ぼくが読んだ「王家の風日」は殷王朝末期の、西周によって滅亡させられるまでのドラマが展開されている。こういう小説は白川静の文字ワールドを知っていると一段と面白くなる。ぼくはまだ初心者なので、当分興味は尽きない。
