|
モダン・ジャズのベースはジミー・ブラントンによって確立し、それを受け継いだのがオスカー・ペティフォード、そして3代目がレイ・ブラウンであり、この3人が正統派の巨人と言われてる。ジャズは4ビートが基本であるが、まさにベースは1小節に四分音符を4つ置いていくウォーキングベースが基本である。このウォーキングベースの米国西海岸における名手がリロイ・ヴィネガーである。彼はウォーカーというニックネームをもらい、その演奏はまさにウォーキングベース一本やりと言っても良いであろう。低くて、重く、太くて力強い、少しアフタービート気味の演奏は独特のスイング感があり、ソロをとっても悠然とウォーキングベースで心地よい。
彼のリーダーアルバムは以下に示すようにそんなに多くはない。
Leroy Walks!、Leloy Walks Again!、Jazz’s Great “Walker”、Glass Of Water、The Kid、Walkin’ The Basses、Waker Live At Lairmont、The Boss Of The Walking Bass
ニックネームという事も有るが、Walkという言葉の入ったタイトルがほとんどである。なかでもLeroy Walksは、東のポール・チェンバースのBass On Topと肩を並べる名盤であり、必聴であろう。
彼はカーティス・カウンスと並んで1950年代、60年代の売れっ子ベーシストであり、実に多くのジャズメンのアルバムに参加している。以下は、ぼくがThe Penguin Guide To Jazz On CDというガイドブックを中心にリストアップしたものである。
・Benny Carter: Jazz Giant、Swingin The Twenties
・Serge Chaloff: Blue Serge
・Dolo Coker: Cakifornia Hard
・Sonny Criss: Go Man、Saturday Morning
・Kenny Dorham: Matador
・Kenny Drew: Talkin’ And Walkin’
・Teddy Edwards: Teddy’s Ready、Good Gravy、Heart And Soul
・Stan Getz: Hamp And Getz、West Coast Jazz、The Steamer
・Dxter Gordon: The Bethlehem Years、Daddy Plays The Horn、Dexter Blows Hot And Cool
・Hampton Haws: Live At Memory Lane、High In The Sky、Something Special
・Elmo Hope: Trio And Quintet
・Richie Kamuca: Richie Kamuca Quartet
・Shelley Manne: Swinging Sounds、And His Friends Vol.1、My Fair Lady
・Les McCann: How’s Your Mother、Much Les、Swiss Movement
・Howard McGhee: Maggie’s Back In Town
・Gerry Mulligan: Gerry Mulligan Meets Ben Webster
・Phineas Newborn Jr: The Great Jazz Piano Of Phineas Newborn Jr、The Newborn Touch
・Carl Perkins: Introducing Carl Perkins
・Art Pepper: Jazz West Coast Vol.3、The Return Of Art Pepper
・Andre Previn: Andre Previn And His Pals
・Sonny Rollins: Sonny Rollins And The Contemporary Leaders
・Bud Shank: Bud Shank And Bill Perkins
・Cedar Walton: Cedar
・Jeccica Williams: Encounters、Encounters Ⅱ
こうしたアルバムの中で、ぼくが比較的よく聞くのが、太字で記したもので、大好きなソニー・クリスのSaturday Morning、それからヴィネガーのベースがピッタリのMy Fair Lady、カール・パーキンスのアルバムIntroducing Carl Perkins、とても溌剌としたThe Return Of Art Pepper、若きソニー・ロリンズのSonny Rollins And The Contemporary Leadersなどである。
いずれのアルバムでもヴィネガーのウォーキング・ベースが十分堪能できる。

地元の色々な組織と関わっているうちに、いつしか音楽好きの仲間が出来、一度ぼくの家のオーディオ装置でジャズを聞いてみたいという話が盛り上がり、今年の四月に、それでは僕の装置で一度“ジャズを聞くかい!”という事になりました。話を聞きつけた、興味本位の人も含めて5人のメンバーが当日集まりました。それで、ぼくも少し張り切り、JBL系のスピーカーとKT88のP-Pパワーアンプ(SV-275)を組み合わせて、演奏の音が前に飛び出すようにチューニングして、いつもより少し音量を上げて聞いてもらいました。
帰り際に参加者の一人が、自分がいつも聞いている手持ちのLPやCDを持ってきて、もっと聞いてみたいという話になり、5人のメンバーのうち3人が参加することになり、それでこれから毎月1回“ジャズを聞く会”を我が家で開催することになりました。それが8月まで続いて、合計で5回開催しました。レギュラーメンバーがぼくを含めると4人。それに毎回1人か2人新たに顔を出す人がいます。
ぼくも最初は、なるべく録音の良いLPを選定して準備し、“良い音でしょう”といった顔をしていましたが、次には自分の好きなジャズを準備しました。しかし会が続くと、もう準備することは止めて、話の中に出てきたアルバムを引っ張り出して演奏を聴くとか、このひと月に入手したLPを紹介するとかになり、“この会”が特別な日ではなくなりました。他のメンバーも自分の好きなCDとかLPを持ってきて、もっぱら聞いている人もいれば、そういう事は他人任せで、自分で用意したアルコールを飲んでご機嫌な人もいます。(地元で歩いてこれる距離にいるから出来るのですが)
こうしてこの会の有り様が何となく定着してくると、構えて“ジャズを聞く会”ではなく、ダベリながら“ジャズも聞く会”に変化して来ました。そうすると不思議なもので、いままでのシステムで少し大きめの音で音楽に集中していたのが、アルテックA7スピーカーを300B系のシングルアンプ(SV-91B、SV-501SE)で少し音を抑えてリラックスして聞くのも良いものだという事になりました。
8月の“聞く会”では新たに二人のメンバーが加わりました。そのうちの一人はジャズ以外にクラシックも良く聞かれるので、会の冒頭は、モーツァルトのディヴェルティメント第17番の第6楽章をウィーン八重奏団の演奏で、スピーカーはLM755Aという20㎝のシングルコーンで鳴らすところからスタートしました。さらにモーツァルトのピアノソナタ第11番をワルター・クリーンの演奏とグレン・グールドの演奏の聞き比べまで行い、グールドの演奏の映像まで見てしまいました。(もちろん、大部分の時間はジャズを聞いていましたが)さらに新たに参加したもう一人は、主にブリティシュロックを中心に聞いているという事です。残念ながらぼくはそういう音源を持っていないので、彼が今後何を持ち込むか興味のあるところです。
この会を定期的にぼくのところで続けるために、特別なことは何もしないことにしていますが、それでも前日に掃除だけはします。(これには家人も喜んでいます)それとリクエストがあればアルバムを直に取り出せるように心がけていますが、LPは大体目的を達成していますが、CDはいまだに整理が良くありません。(きっと整理も進むでしょう)
来月は珍しく自然発生的にテーマが決まりました。「女性ジャズヴォーカル」です。それも各メンバーが、ぼくが持っていないだろうアルバムを推測して持ち寄ってくれるそうです。
“ジャズを聞くかい!”から始まって“ジャズも聞く会”に変化して来ましたが、楽しんでくれるメンバーが集まる限りは、肩ひじを張らずに続けたいと思っています。

クラシックのピアノ・ソナタを聞くと言えば、まずはベートーヴェン、モーツァルトそしてショパン、近代になってのプロコフィエフというのが、ぼくが時々聞く作曲家であった。それもその時々に興味を持った演奏家のアルバムを集中して聞くという事の積み重ねが多かったような気がする。今までのそういう事を順不同に思い出してみると、
学生時代に生協で安売りしていたという理由で手にしたクララ・ハスキルの演奏するベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番テンペストのLP。その繊細でみずみずしい演奏に感動し、これがぼくのスタンダードのようになり、例えば、リヒテルのスケールの大きい演奏には、大げさな違和感を感じるようになりました。また、これがきっかけでハスキルのモーツァルトも随分と聞きました。
同じ時期にショパンのピアノ曲も好んで聞いていました。ワルツとかマズルカと言った曲では、ルービンシュタインやサンソン・フランソワの演奏をよく聞いたが、ソナタではアルゲリッチやホロヴィッツの演奏を本当によく聞きました。特にホロヴィッツではショパンに限らずベートーヴェンの21番ワルトシュタイン・ソナタの切れ味の良い、迫力ある演奏は今でも頭に残っています。アルゲリッチもホロヴィッツのような切れ味はないですが、その迫力ある情熱的な演奏は大好きでした。ショパンやチャイコフスキーのピアノ協奏曲のアルバムは何枚も持っています。
と、まぁ、こんなことを書きだすと限がないというか、次から次と思い出されるのですが、不思議なことにシューベルトのピアノソナタを聞いたという記憶があまりないのである。当時ぼくが参考にしていた音楽の解説書類を引っ張り出してみてみると、シューベルトのピアノ曲としては即興曲や楽興の時と言った曲の解説はあってもピアノ・ソナタを紹介しているものはないのである。
例えば、音楽之友社の「名曲の案内 中」、音楽新書、S39年12刷、の解説を引用してみると、「シューベルトのピアノ作品 :シューベルトは、自作の小品にそれぞれ「楽興の時」「即興曲」と名付けた。これは、メンデルスゾーンの「無言歌」ブラームスの「間奏曲」「ラプソディ」などと共通する。ロマン主義的なピアノ作品で、時にはソナタ形式や変奏曲などの古典的な構造も加わってはいるが、内容は自由な詩情を盛り上げたもので、シューベルトの場合、この二つのジャンルに本質的な差異は、見いだせない」このように紹介されており、シューベルトのピアノ・ソナタについては何も触れていない。そんな調子であったから当然ピアノ・ソナタのLPをぼくが購入した記憶もない。
ではなぜ今シューベルトのピアノ・ソナタなのか。実は数年前に「意味がなければスイングはない」村上春樹著、文芸春秋、と言う本を購入した。村上春樹氏が音楽について語ったものであるが、当然ぼくは、彼がジャズについて何を語るかについて興味があったのであるが、この中でシューベルト「ピアノ・ソナタ第17番ニ長調」D850について、大好きな曲として紹介しているのである。また一部を引用させてもらうと、「結局のところ、シューベルトのピアノ・ソナタの持つ「冗長さ」や「まとまりのなさ」や「はた迷惑さ」が、今のぼくの心に馴染むからかもしれない。そこにはベートーヴェンやモーツァルトのピアノ・ソナタにない、心の自由なばらけのようなものがある。スピーカーの前に座り、目を閉じて音楽を聴いていると、そこにある世界の内側に向かって自然に、個人的に、足を踏み入れていくことができる。音楽を素手ですくい上げて、そこから自分なりの音楽的情景を、気の向くままに描いていける。そのような、いわば融通無碍な世界が、そこにはあるのだ」と語っている。こんな風に言われると、ぼくの今まで知らなかったシューベルトのピアノ・ソナタの世界が一体どんなものか、覗いてみなくてはならないと思ったのである。
そして17番のピアノ・ソナタを演奏する、アシュケナージ、ブレンデル、シュナーベル、リヒテル、イストミン、ヘブラー、内田光子、スコダ、シフ、ケンプ、カーゾン、ダルベルト、ギレリス、アンスネス、クリーといった15人の演奏者について、解説をしているのである。その中で、彼が好みの演奏の一つとして紹介したワルター・クリーンの演奏するアルバム(VOX)を入手して、ぼくも聞いてみた。しかし数回聞いた程度では、村上春樹氏が述べているような境地になって音楽を聴きとることは、残念ながらぼくにはできていない。たしかにベートーヴェンやモーツァルトのピアノ・ソナタに馴染んだ耳では、シューベルトのピアノ・ソナタ17番は違和感が先走ってしまうのである。
クラシックの中古LPがかなり低価格で買えるようになってからは、低価格と言う理由だけでまとめ買いを時々する。だから最近は正確にどんなLPが手元にあるか把握していない。そこでシューベルトのピアノ・ソナタが手元にあるのか調べてみた。わずかながらも手元にあった。
・ピアノ・ソナタ第16番、第13番/リリー・クラウス/VANGURD
・ピアノ・ソナタ第17番/スヴャトスラフ・リヒテル/VICTOR
・ピアノ・ソナタ第21番/アンドール・フォルデス/東芝EMI
・ピアノ・ソナタ第21番/ダニエル・バレンボイム/DG(但しこれはCD)
・ピアノ・ソナタ第1番、第2番、第13番、第14番、第17番、第20番/ワルター・クリーン
(これは、上述のように最初に購入したもの)
これらのアルバムを取り出しては、何回も聞いていれば、何か感じるようになるだろうというくらいの感じで、時々聞いている。今はアンドール・フォルデスの演奏する第21番を気に入っている。どうもシューベルトのピアノ・ソナタは演奏者によって随分と印象の変化が大きいような気がする。これからは意識して、色々な演奏者のアルバムを集め、聴いて、シューベルトの世界を理解して楽しみたいと思っている。

クラシックのLPを久しぶりにまとめ買いしました。と言っても大した枚数ではなく、25枚程度です。でも店にあったクラシックのLPをほとんど買おうと思って買ったのですから、気分はまとめ買いです。これがなぜ久しぶりかと言うと、最近はこういうチャンスにとんと出くわさなくなったからです。廉価のLPを取り扱うお店には、プロと思える方が定期的に、タイミングよく表れて、こういうたぐいのLPをまとめ買いしていくことが増えたようです。こういう人たちと対抗できる根気をぼくは持ち合わせていないので、まとめ買いする機会が減ってしまったのです。
だから、今回もそういうことを期待したのではなく、ある人に頼まれていた、中古の安いプリメインアンプがないか探しに行ったのです。結果として、気に入ったものはなかったのですが、そのためにふらっと中古のLPの棚を眺めたら、クラシックのLPがまとめて棚に収まっていたのです。どんなものがあるか見ていると、何となくわかるのですが、ここにあるものの大部分は個人が所有していたものが売りに出されているようです。ジャケットもとてもきれいで、こういうものは盤のすり傷もほとんど無いと思います。よく吟味すれば同じものが家にあると思えますが、こういう程度の良いものはどうしてもまとめ買いしたくなります。
入手したLPの一部を順不同で紹介します。
・ショスタコーヴィッチ、交響曲第1番、第9番、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィル
・ショスタコーヴィッチ、交響曲第5番、シルヴェストリ指揮、ウィーン・フィル
・ブルックナー、交響曲第3番、ベーム指揮、ウィーン・フィル
・ブルックナー、交響曲第5番、クナッパーツブッシュ指揮、ウィーン・フィル
・マーラー、交響曲第9番、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィル
・シベリウス、交響曲第2番、モントゥー指揮、ロンドン交響楽団
・シベリウス、交響曲第3番、第5番、ザンデルリング指揮、ベルリン交響楽団
・ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第3番、第4番、ゼルキン(p)、バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィル、オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団
・ベートーヴェン、ピアノ協奏曲第3番、バックハウス(p)、イッセルシュテット指揮、ウィーン・フィル
・モーツァルト、ピアノ協奏曲第14番、第24番、ペライヤ(p)&指揮、イギリス室内楽団
・ブラームス、ピアノ協奏曲第1番、バックハウス(p)、ベーム指揮、ウィーン・フィル
・R・シュトラウス交響詩名演集、フルトヴェングラー指揮、ウィーン・フィル
・ショパン、ピアノ・ソナタ第2番、第3番、ルービンシュタイン(p)
・ブラームス、弦楽5重奏曲第1番、第2番、トンプラー(ヴィオラ)&ブダペストSQ
・リムスキー・コルサコフ、シェエラザード、アンセルメ指揮、スイス・ロマンド
バーンスタインやクナッパーツブッシュの指揮したものや、バックハウスのピアノのLPの何枚かはすでに手元にあるような気もするが、こういう一期一会の出会いでは手に入れておきたいと思うのである。
昨今のLPの良さが再評価されて、新しいLPや名盤が復刻されるのはうれしいことであるが、反面廉価なクラシックのLPの入手が難しくなるのはつらい。それでも時にはこのような幸運に巡り合えることもある。まさに“犬も歩けば棒にあたる”の例えである。
