ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
ペラジャケ・レコード(2017.12.18)

 ぼくがよく行く古書店にクラシックの中古レコードが大量に入荷したという情報を得て、今日は80枚、今日は60枚と数日通い、トータルで300枚近く買いました。 店員さんとも顔なじみになりあれこれ話していると、今回入荷の大部分は個人の方が処分したものだそうです。  内容的には交響曲とか協奏曲のLPは少なく、教会音楽が半数以上を占めていました。その中で目立ったのがアーノンクールとレオンハルトが指揮するバッハのカンタータ全集全45巻(2枚組LPボックスセット)が全部そろっていたので、思わず買ってしまいました。 バッハのカンタータについてはこれ以外にもカール・リヒター指揮(ARCHIV)のものやクルト・トーマス指揮(Angel)、フリッツ・ヴェルナー指揮(COLUMBIA)などいろいろなアルバムがありました。それも大部分を買ってしまい、 どんな曲かを調べてみると、ダブっている曲はほとんどなく、バッハのカンタータ190曲のうちの45曲をカバーしていました。バッハのカンタータが大変好きだった人のようです。
 中でもぼくの興味を引いたのが、1960年台に発売された国内盤のペラジャケ・レコードです。1950年代後半からSPレコードの生産が中止となりそれに代わってLPが出現し、ハイファイとなりステレオ化されと大きな転換点となった時代です。 そんな時代のペラジャケのレコードを57枚入手しました。LONDONレーベルが23枚、COLUMBIAレーベルが15枚、ANGELレーベルが11枚、その他(DG、WESTMINSTER、TELEFUNKEN、PHILIPS、MERCURY)8枚で、当時の主要なレーベルの発売枚数に比例するような比率です。
  LONDONレーベルでは、当時もっとも人気の高かったエルネスト・アンセルメ指揮するスイス・ロマンド管弦楽団のLPが7枚ありました。1例を紹介すると、1961年発売のリムスキー・コルサコフ/交響組曲「シェラザード」です。 これは下の図の1のジャケットで1961年にUKで発売され、時を同じくして2のジャケットで、日本で発売されました。この2のペラジャケを今回入手したのです。

 これ以外に1963年には3のジャケット、1989年には4のジャケットで、日本で発売されました。ぼくも4のジャケットのものはすでに持っています。
 このLPを取り出して、あれやこれやと音楽を聞いているうちに気づいたことがあります。それはレコードが最近出来たかのように、まったくやつれていず、耳障りなノイズもほとんどありません。 また取り扱いが乱暴だと出来るスピンドルの当て手傷(俗にヒゲ)や擦り傷もなく、ホコリとかカビもありません。ジャケットもほとんどやつれていません。ジャケットの付属している帯も大切についています。 こういうのを見るととても大切にしていたと思えます。とても程度の良いものを入手した気分です。

 珍しいレコードとしてはレオンタイン・プライス・クリスマス名唱集、カラヤン指揮/ウィーンフィル楽団員SLC1189、1962とかヴィヴァルディ/四季、ミュンヒンガイー指揮/シュトゥットガルト室内SLC1101、1960などのような懐かしいアルバムもあります。
 COLUMBIAレーベルでは、フリッツ・ヴェルナーやジャン・フランソワ・パイヤールの教会音楽が多く、看板であるワルター(1枚)やバーンスタイン(2枚)のアルバムが少なかったことです。 でもバーンスタインの2枚はなかなか話題性があると思います。1枚目はストラヴィンスキー/バレエ曲 春の祭典OS108、1961です。バーンスタインとニューヨーク・フィルによる初期の録音の中でも、ドラマティックな名演として知られているものです。

このジャケットも傑作ジャケットと言われています。2枚目はショスタコーヴィッチ/交響曲第5番OS112、1961です。 1959年8月にバーンスタインのモスクワ演奏会で演奏されたショスタコーヴィチの交響曲第5番は作曲者自身から大絶賛され、その熱狂と興奮をそのままに10月に録音されたものです。 使用されているジャケットにはショスタコーヴィッチが演奏会で感激してバーンスタインと握手をしている歴史的な写真が使われています。

 ANGELレーベルでは、殆どがバッハのチェンバロ曲やカンタータですが、1枚だけフォーレ/レクイエム、クリュイタンス指揮/パリ音楽院ASC5300、1963という大変よく知られた名盤があります。 しかしこの盤は再生時の音が、あとから出た同じジャケットで赤い縁取りのついたNEW ANGEL BEST 100シリーズEAC-81014に比較すると帯域が狭く、明らかに劣ります。 これまでに聞いたペラジャケ盤は大変音がよく、特にレオンタイン・プライス・クリスマス名唱集などは、再発の盤よりも音質は優れていると思えるほどである。
 と、色々書きだすと興味は尽きなくて限がなくなるが、ぼくがペラジャケ盤を入手したことによって楽しんでいることは伝わったでしょうか。

「FMジャズ喫茶Pitch」2018年1月3-4週放送分の収録 (2017.12.18)

 ジャズ・ベーシストのビル・クロウはなかなかの才人で、ジャズ評論を書きながらも、「さよならバードランドーあるジャズ・ミュージシャンの回想 」「ジャズ・アネクドーツ」いずれも村上春樹訳、(新潮文庫)という2冊の本を書いている。「さよならバードランド」 はビル・クロウのジャズマンとして歩んできた道と、そこでの色々なジャズマンとの出会いのエピソード等を回想した自伝的交遊録といったものである。
「ジャズ・アネクドーツ」は文字通りジャズメンにまつわるちょっとしたこぼれ話を記録した裏話集大成といったものである。ジャズマンの視点でなければわからないエピソードとか人物評が書かれており、大変興味深い本である。
ビル・クロウは52年にはスタン・ゲッツ、54年にはテリー・ギブスやマリアン・マクパートランドのグループそして55年からの10年間はジェリー・マリガンのグループで活躍したベーシストである。 今回は、ぼくもスタン・ゲッツの最後のアルバムを紹介しようと思っているが、ゲッツはビル・クロウによれば私生活はいろいろと問題の多い人物であったが、演奏に関しては天才であると評している。今回は清水、神谷、大橋の順でスタートです。

 

1)清水:Mas Que Nada (6:15)
・Dizzy Gillespie - Swing Low, Sweet Cadillac
・Impulse! - AS-9149
・Recorded live 25 & 26 May, 1967 at the Memory Lane, Los Angeles, California
  Bass - Frank Schifano
  Drums - Candy Finch
  Piano - Mike Longo
  Saxophone, Flute - James Moody
  Trumpet - Dizzy Gillespie

 先回トランペッターのディジー・ガレスピーがいかに凄いかを紹介しましたが、彼自身のリーダー・アルバムにはなかなか決定的名盤がない。 今回のガレスピーのアルバムはその理由の一端が判るようなものです。紹介する曲Mas Que Nadaはまともな演奏ですが、それ以外の収録曲については聞かないほうが良いと思われる方が多いと思います。

 

2)神谷:(A) Evidence(3:31)、 (B) Shuffle Boil(2:58)
・Various, That's The Way I Feel Now - A Tribute To Thelonious Monk
・A&M Records - SP-6600
・Release Date: October, 1984
  Drums - Elvin Jones (A)
  Soprano Saxophone - Steve Lacy (A)
  Drums, Timpani - M.E. Miller (B)
  Guitar, Vocals - Arto Lindsay (B)
  Noises , Alto Saxophone, Clarinet - John Zorn (B)
  Piano, Organ, Celesta, Electronics - Wayne Horvitz (B)

 マスターもどこでこういうアルバムを見つけてくるのかと思うほど、珍しい演奏です。確かにアルバムタイトルだけを見れば、A Tribute To Thelonious Monkとあり興味はそそります。 しかしEvidenceの演奏は、うん!モンクの曲だ!とわかりますが、Shuffle Boilの方は、何をシャッフルしているのか?と思わせる貴重な演奏です。こういう演奏をどう思うかについては意見の分かれるところでしょう。

 

3)大橋:Please Send Me Someone To Love (9:49)
・Red Garland With Paul Chambers And Art Taylor - Red Garland's Piano
・Prestige - PRLP 7086
・Recorded on December 14th, 1956, and March 22nd, 1957
  Bass - Paul Chambers (3)
  Drums - Art Taylor
  Piano - Red Garland

 大橋さんはピアノトリオの代表格の一人、レッド・ガーランドのアルバムを出してきました。1956-57年と言えばマイルス・グループのレギュラーメンバーとなって有名なマラソンセッションを録音したころで、 ガーランドの右手のリリカルなメロディーラインと左手のリズミックなブロックコードを駆使した演奏がたっぷり楽しめます。

 

4)清水:First Song (For Ruth) (9:55)
・Stan Getz - Kenny Barron - People Time
・Verve Records - 314 510 823-2
・Recorded live on March 3-6, 1991 at the Cafe Montmartre, Copenhagen
  Piano - Kenny Barron
  Saxophone [Tenor] - Stan Getz

 神谷マスターより、ぼくがよく聞くというスタン・ゲッツのアルバムをなかなか紹介しないではないか、と指摘を受けていたので何か紹介しようと思っていましたが、あれも・これもといろいろ浮かび1曲に絞り切れないでおりました。 たくさん紹介したい曲があります。でも迷っていても仕方がないので、逆にLP前提という枠を外して彼が最後にライブで録音したPeople TimeというCDのアルバムからFirst Song (For Ruth)という曲を選びました。 この曲の印象について大橋さんが既に(12/18)白鳥の歌という項目でブログで述べていますので、参考にしてください。

 

5)神谷:These Foolish Things (6:32)
・Max Bruel Quartette - Cool Bruel
・EmArcy - MG-36062, Mercury - MG-36062
・Rec.: Copenhagen / March 15, 1955
  Baritone Saxophone - Max Brüel
  Bass - Erik Moseholm
  Drums - William Schiöpffe
  Piano - Bent Axen

 最後に神谷マスターが選曲したのが、バリトンサックスのMax BruelのアルバムCool BruelよりThese Foolish Thingsという曲です。マックス・ブリュエルという人はぼくは聞いたことのない演奏かですが、 彼のバリトンサックスの音は、ペッパー・アダムスのように太くて重くはなく、ジェリー・マリガンのように軽くてメロディアスでもなく、その中間を行くようななかなか聞き応えのある演奏家です。

 

 いくら長くても10分以内の曲を選択して、それなりにおしゃべりをして、それでも6曲くらいは紹介したい。それを定番にしていましたが、今回は5曲で終わってしまいました。 おしゃべりが聞いていて面白ければ、それでもかまわないと思いますが、退屈な話を長々とでは興味が削がれます。今回はどちらだったでしょうか、放送を聞いて考えてみます。

 




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