ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「FMジャズ喫茶Pitch」2018年3月1-2週放送分の収録(2018.2.19)

 我が家にも、野菜を育てている畑とは別に、家の庭にブロッコリー、キャベツ、白菜などが植えてある。この庭の野菜は油断すると鳥にすべて食べられてしまう。この困った鳥はヒヨドリである。まず12月にブロッコリーの葉が狙われる。ネットを張って鳥が近づけないようにする。1月になって狙われるのはキャベツである。これも対策する。2月になって鳥の食糧が乏しくなってくるとハクサイも食べ始める。鳥にも好みの順番があるようである。食害にも困るが、もっと困るのが廻りにフンをまき散らすことである。だから慌てて対策することになる。ところが畑のキャベツや白菜は被害にあわない。その原因が分かった。近くの家の飼い猫が畑を巡回しているのである。おそらく猫が近づかないような畑ではヒヨドリやムクドリの被害が発生すると思われる。冬野菜が不作で困るのは主婦だけでなく、他にもひもじい思いをしている奴がいるようである。
 今回は大橋さんの提案でオリジナル盤特集をやろうということになった。冒頭で国内盤とオリジナル盤の音の違いを比較してもらい、あとはオリジナル盤の音の良さも演奏と併せて聞いて、楽しんでみようという企画である。音源は、ぼくと神谷マスターで選曲しました。

1)清水: Stars Fell On Alabama (6:14)
・Cannonball Adderley Quintet ‎– In Chicago
・Mercury ‎– SR 60134
・Recorded at Universal Recording Studio B - Chicago on February 3rd, 1959
  Alto Saxophone – Cannonball Adderley
  Bass – Paul Chambers
  Drums – Jimmy Cobb
  Piano – Wynton Kelly
  Tenor Saxophone – John Coltrane (tracks: A1, A3 to B3)

 マーキュリー盤のイン・シカゴというアルバムの「アラバマに星落ちて」という曲で、オリジナル盤と日本盤の音の比較をすることとなった。この演奏のオリジナル盤には、今日取り上げるステレオ盤以外にモノラル盤もあり、さらにCannonball&Coltraneというタイトルの、茶色のジャケットに大砲と汽車のイラストが描かれたライムライトの復刻盤もある。比較する日本盤はPHILIPSから発売されたものである。それぞれのレーベルも載せて置いた。

 音の比較のポイントとしては、①キャノンボールのアルトの音色が両者でどう違うか。②アルトとドラムスなどのリズム楽器との音の大きさの比率がどうか。③高低音の伸びがどうか。などに注目して聞いてもらうと、違いが判るのではないか。演奏のメンバーは当時のマイルスのレギュラーバンドからマイルスを除いたメンバーで構成されており、今日かける曲だけはコルトレーンが抜けている。


2)神谷: Chim Chim Cheree (6:56)
・The John Coltrane Quartet ‎– The John Coltrane Quartet Plays
・Impulse! ‎– A-85
・Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, February 18, 1965 (B1) and May 17, 1965 (A1, A2, B2)
  Bass – Jimmy Garrison
  Drums – Elvin Jones
  Piano – McCoy Tyner
  Saxophone : Tenor – John Coltrane (tracks: A2 to B2)
        Soprano – John Coltrane (tracks: A1)

 神谷マスターが取り出したのがThe John Coltrane Quartet PlaysというアルバムのChim Chim Chereeという曲です。この曲はコルトレーンの十八番であるMy Favorite Thingsという曲の後に続く曲で、やはりソプラノサックスでMy Favorite Thingsと同じような曲調で演奏しています。コルトレーンは1967年に亡くなってしまうので、この曲はMy Favorite Thingsほどには演奏されなかったので、知名度はやや低いが良い演奏です。
 この演奏は名手ルディ・ヴァン・ゲルダーが録音しており、オレンジのレーベル使用がオリジナル盤である。ヴァン・ゲルダーは録音からカッティングまでに関与しており、レコードのレーベルの外側にVAN GELDERの活字の刻印が施されている。このレコードのセカンド盤は赤黒のレーベルが使用されているが、この盤のカッティングにもヴァン・ゲルダーが関与しており、VAN GELDERの活字の刻印が施されている。オリジナル盤ほど中古の値段は高くはないが、同じ程度の音の良さはあるので、購入のねらい目である。


3)清水: Milestones (5:44)
・Miles Davis ‎– Milestones
・Columbia ‎– CL 1193
・Recorded February 4 and March 4, 1958 at the Columbia 30th Street Studio in New York City
  Alto Saxophone – Julian "Cannonball" Adderley
  Bass – Paul Chambers
  Drums – "Philly" Joe Jones
  Piano – Red Garland
  Tenor Saxophone – John Coltrane
  Trumpet – Miles Davis

 ぼくが用意したのは、マイルス・デイヴィスのマイルストーンズというアルバムのタイトル曲である。この曲は、マイルスの演奏の中ではとても曲調が明るくて、軽快で、昼間からでも聞いていられるような曲である。マイルスも良いが、キャノンボールのアルトサックスの演奏がとても冴えていると思う。モノラルの録音であるが、音の奥行き感があって、ソロ楽器が前に飛び出してくるようで、とても臨場感のある録音である。オリジナル盤に使用されているレーベルは通称6eyeと言われているものである。

4)神谷: Honeysuckle Rose (5:34)
・Thelonious Monk ‎– The Unique Thelonious Monk
・Riverside Records ‎– RLP 12-209
・Recorded In Hackensack, N.J.; March 17 and April 3, 1956
  Bass – Oscar Pettiford
  Drums – Art Blakey
  Piano – Thelonious Monk

 マスターが待ってきたアルバムは、モンクがRiversideに移籍して2枚目のThe Unique Thelonious Monk というものである。しかもモンクの写真とコンデンサーマイクの絵がついているオリジナルジャケットの貴重なアルバムである。このアルバムでよく知られているのは切手のデザインのジャケットである。そして録音はヴァン・ゲルダーである。スタンダード曲を演奏しているが、モンクのユニークな演奏スタイルを楽しんでください。


5)清水: Cafe Montmartre Blues (8:02)
・Stan Getz ‎– At Large
・Verve Records ‎– MG VS 68393-2
・Recorded in Bispebjerg Bio, Copenhagen, Denmark, January 14 & 15, 1960
  Bass – Dan Jordan
  Drums – William Schiøppfe
  Piano – Jan Johansson
  Tenor Saxophone – Stan Getz

 ぼくが準備したStan Getz At Largeというアルバムは、ゲッツがデンマークで欧州のジャズメンと一緒に録音したもので、Night And Dayとか丘に住む人々といった、当時ゲッツがよく演奏した曲が含まれているアルバムである。その中でぼくが選曲したのがCafé Montmartre Bluesというコペンハーゲンのカフェの名前のついたブルースである。以前、ゲッツが亡くなる3か月前にカフェ・モンマルトルでライブ録音したPeople Timeというアルバムの中のFirst Songという曲を紹介したが、あの演奏のようなピリピリとした緊張感とか悲壮感はここにはなく、もう少しリラックスした中に、ゲッツの歌心の素晴らしさが出ている演奏である。録音もどちらかというとマイルドな音作りになっている。

 今回はオリジナル盤特集ということになったので、LPレコードの再生系もいつもと変更をしました。従来はプリアンプにサンバレーのSV-192A/Dを使用している関係でMMのカートリッジを使用していたが、今回はサンバレーのSV-722(マランツタイプ)のフォノイコライザーを使用してMCタイプのカートリッジを使用することにした。ベンツマイクロのACEである。併せてターンテーブルはサンバレーのSV-A1を使用した。
 これにより出てくる音がMCの特徴である解像度の良い、そしてベンツマイクロの特徴である元気のよい音になった。今回のようなオリジナル盤であれば長所も出るが、音源によっては神経質に聞こえることがあるので、ぼく個人の好みとしては、ジャズを聞くときはTechnicsのEPC-205CⅡのようなMMカートリッジを使用することが多い。

 リスナーの皆さんが放送を聞かれて(Pitch FM 83.8MHzもしくはリスラジ)オリジナル盤と国内盤の音の違いを理解されて、オリジナル盤の良さを楽しんでいただけると嬉しく思います。今月の後半の放送も、今回のオリジナル盤特集の続きとなります。




ページトップへ