ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「FMジャズ喫茶Pitch」2018年4月1-2週放送分の収録 (2018.3.19)

 3月の「FMジャズ喫茶Pitch」ではオリジナル盤特集を放送しましたが、その中で放送の冒頭にオリジナル盤と国内盤の聞き比べを実施しました。 モニタースピーカーから出てくる音を3人で聞いていると、その差は歴然たるものが有り、そのように喋りましたが、はたして放送を聞いている人たちにもそのように聞こえたのか興味のあるところです。
数人ですが感想を聞いてみると、差のあるのは判るが歴然たるものではなかった。という感想がほとんどです。ぼくも放送を録音して聞いてみましたが、 確かに直接モニタースピーカーで聞いたほどの差は感じられませんでした。どうしてか興味のあるところです。今回は通常に戻って、神谷マスター、清水、大橋店主の順でスタートです。

 

1)神谷:Faces And Places (11:37)
・The Ornette Coleman Trio – At The "Golden Circle" Stockholm - Volume One
・Blue Note ‎– BLP 4224
・Recorded at the “Golden Circle”, Stockholm, Sweden on December 4, 1965
  Alto Saxophone – Ornette Coleman
  Bass – David Izenzon
  Drums – Charles Moffett

マスターがこのオーネット・コールマンのアルバムを今聞いてみると、発売当時のセンセーショナルなフリージャズ騒ぎのような感じはなく、普通の演奏に聞こえると強調していました。 ぼくは、オーネット・コールマンはオーネットだよと言っていましたが、改めてここで聞いてみると、マスターの言うとおりだと感じました。 良くスイングするリズムセクションに乗っかって、個性的なアルトを演奏しているという感じで、とても心地よく聞こえます。  

 

2)清水:Ol' Man River (6:35)
・Ike Quebec ‎– It Might As Well Be Spring
・Blue Note ‎– BLP 4105
・Recorded on December 9, 1961
  Double Bass – Milt Hinton
  Drums – Al Harewood
  Organ – Freddie Roach
  Tenor Saxophone – Ike Quebec

  アイク・ケベックというテナー奏者は、黒人のソウルフルな魂を持った演奏をする人というイメージがあり、リズムセクションにピアノよりオルガンが入ったほうがより合っていると思っている。 ここで取り上げた曲も、Ol' Man River(ミシシッピー川を擬人化した)という黒人の労働を歌った曲で、ソウルフルな演奏となっている。
  アイク・ケベックという人はブルーノートの音楽ディレクターもしていて、セロニアス・モンクとかバド・パウエルをアルフレッド・ライオンに紹介して、ブルーノートのビ・バップ路線の録音に影響を及ぼしている人でもある。

 

3)大橋:Lazy Afternoon (5:29)
・Pete La Roca ‎– Basra
・Blue Note ‎– BLP 4205
・Recorded on May 19, 1965.
  Bass – Steve Swallow
  Drums – Pete La Roca
  Piano – Steve Kuhn
  Tenor Saxophone – Joe Henderson

ピート・ラロカというドラマーは、ソニー・ロリンズ、ジャッキー・マクリーン、ジョン・コルトレーン、アート・ファーマー、フレディ・ハバードなどのグループのレギュラー・ドラマーとして 即興演奏を支えてきた名ドラマーであるが、彼のリーダーアルバムは数枚しかない。その中の1枚がこのBasraというアルバムである。大橋さんがこれを選択したのは驚きである。 そしてLazy Afternoon、ジョー・ヘンダーソンのエキゾチックなテナーが光っている。

 

4)神谷:Lover Man (8:35)
・J.R. Monterose + The Joe Abodeely Trio – In Action
・Studio 4 ‎– SS 100
・Recorded at Studio 4, Rock Island, Illinois, 1964
  Bass – Gary Allen
  Drums – Joe Abodeely
  Piano – Dale Oehler
  Tenor Saxophone – J.R. Monterose

 J.R.モンテローズのテナーの特徴をどう表現すればよいのか。誰にもたとえようのない、彼独特の奏法のような気がするが、残念ながらそれが頭の中でイメージできるほど聞きこんでいない。 マスターが今回持ち込んだIn ActionとかThe Message、J.R. Monterose、手品師、A Little Pleasure、カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハムといったアルバムを改めて聞いているところである。 エモーショナルななかなか良いテナーであると思えてきた。

 

5)清水:Low Brown (5:46)
・Leo Parker ‎– Let Me Tell You 'Bout It
・Blue Note ‎– BLP 4087br> ・Recorded on September 9, 1961
  Baritone Saxophone – Leo Parker
  Bass – Stan Conover
  Bass – Stan Conover
  Piano – Yusef Salim
  Tenor Saxophone – Bill Swindell
  Trumpet – John Burks

 ぼくがレオ・パーカーというバリトンサックス奏者を知ったのは、原田和典さんが書いた「元祖 コテコテ・デラックス」というジャズ批評ブックスに紹介されていたのを知ったからである。 そしてこのアルバムについて、彼は次のように紹介している。「レオ・パーカー単独では初めてのLPだろう。 ジャンプにまみれたようなミュージシャンをずらりと揃え、臭さまるだしのファンキー・スイングを聴かせる。それにしてもバリトンの音圧には驚く。 この1曲でキメ・・・「ロウ・ブラウン」。ゴスペル・ジャズの名曲です。」ぼくはこういったソウルフルな演奏は大好きです。

 

「一口メモ」
 ブルーノートのオリジナル盤の中には、通称「耳マーク」と呼ばれる刻印がしてあるものがあります。これはPlastylite社のシンボルマークで、この社はレコードのプレスを請け負った会社です。
 この件について興味のある方は、Plastylite & earのキーワードでネット検索すれば、さらに詳しい情報を検索することができます。

 今回の収録は、ぼくにとって良い刺激でした。ここ数日の天候の悪さで、あまり外出もせず、大橋さんの取り上げたPete La Rocaの演奏をあれこれと聞きなおしてみたり、 Ornette Colemanのゴールデンサークルに改めて感動したり、J.R. Monteroseのテナーを聞きこんだりと、このブログを書く前に、頭の整理に随分と時間がかかりました。 それから「耳マーク」の話は次回の放送時に話題になったことですが、忘れないうちに「一口メモ」としてメモっておきました。




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