ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「FMジャズ喫茶Pitch」2018年6月1-2週放送分の収録(2018.5.21)

 5月21日に行われた今回の収録は、冒頭に大橋さんよりのお詫び入りのものになりました。 「5月19日放送の音源が逆相となっており、それが為に放送音声が不安定に聞こえるというものでした。直ちに修正をしたので26日の放送時には正常に戻ります、大変ご迷惑とご心配をおかけしました。」 というような内容です。

 この番組は音にこだわっており、基本的にはアナログLPを音源にして、放送局での通常の録音処理の前に、 ①真空管のイコライザーアンプ、②真空管プリアンプ、③真空管パワーアンプを通してスピーカー出力端子より音楽データを送っている。 これからは今回のような不具合が発生しないように、機器を接続した後に、毎回レコードによるオーディオ・チェックを実施することにしました。 使用する音源は45rpm Testing Your Equipment by DENON/PCMというアルバムの ①再生装置の左右・接続の確認(チャンネルの確認、位相の確認)という音源を使います。思っていた以上に多くの方々が、この番組を聞いてくださっており、不具合の情報をいただきました。 大変ありがとうございます。  

 

1)神谷:Triptych: Prayer, Protest, Peace (7:58)
・Max Roach ‎– We Insist! Max Roach's Freedom Now Suite
・Candid ‎– CJM 8002
・Recorded: Nola Penthouse Sound Studio, New York, August 31rd and September 6, 1960
  Drums – Max Roach
  Vocals – Abbey Lincoln

 ど初っ端から、マスターが政治性の強いアルバムを持ち出してきた。マックス・ローチのWe Insist! Freedom Now Suite(我らは主張する!今こそ自由組曲)というアルバムである。 この組曲は5つの章から成っており、それぞれの章について野口久光さんの解説を引用して紹介すると、 ①の「ドライヴァー・マン」(奴隷を鞭打つ男)は奴隷時代の黒人の置かれた過酷な地位を描いたもの、アビー・リンカーンの歌う静かな労働歌と鞭の音を思わせるリズムのコントラストに悲壮感が浮かぶ。 ②の「フリーダム・デイ」は百年前の奴隷解放の日の喜びを歌ったもの。 ③「三枚の絵」(祈り、反抗、平和)は黒人民族の悲願を歌曲にしたもので、ローチのドラムスだけの伴奏でリンカーンが歌うのが深い感銘を呼ぶ。 ④の「オール・アフリカ」はアフリカ独立の気運への声援、 ⑤「ヨハネスブルグへの涙」は今日なお南アにくりかえされる黒人弾圧虐殺への怒りを込めた章である。 (以上、「野口久光ベストジャズⅠ1953-1969」音楽之友社より)
 この中からマスターが選曲したのが③の「三枚の絵」(祈り、反抗、平和)である。長々と全体を述べたが、そういう位置付けの中でこの音楽を聞いてください。なかなか刺激的なので放送で流れる機会はほとんどないと思う。

 

2)清水:Topsy & Jumping At The Woodside(6:48)
・The Count Basie Orchestra ‎– The Count Basie Story
・Roulette ‎‎– SRB-1
・Recorded in June and July of 1960
  Bass – Eddie Jones
  Drums – Sonny Payne
  Guitar – Freddie Green
  Piano – Count Basie
  Reeds – Billy Mitchell, Charlie Fowlkes, Frank Foster, Frank Wess, Marshall Royal
  Trombone – Al Grey, Benny Powell, Henry Coker
  Trumpet – Eugene Young, Joe Newman, Sonny Cohn, Thad Jones

 打って変わって、ぼくが準備したのはCount BasieのThe Count Basie Storyというアルバムである。 これはベイシー楽団創立25周年を記念して、1960年にフランク・フォスターが新しく編曲しなおして、1930年代から40年代のオール・ドベイシー楽団の演奏を再吹込みしたアルバムである。 ぼくはベイシー楽団やエリントン楽団のビッグ・バンド・ジャズが大好きであるが、放送でその楽しさがうまく伝わるだろうかという不安もあり、今まで持ってこなかったが、 前回のブログに書いたようないきさつでぜひ紹介しようと思ったのである。
 

 

3)大橋:Kozo's Waltz (6:45)
・Art Blakey & The Jazz Messengers ‎– A Night In Tunisia
・Blue Note ‎– BLP 4049
・Recorded on August 7 & 14, 1960
  Bass – Jymie Merritt
  Drums – Art Blakey
  Piano – Bobby Timmons
  Tenor Saxophone – Wayne Shorter
  Trumpet – Lee Morgan

 大橋さんが選んだのがArt Blakey & The Jazz Messengers のA Night In Tunisiaというアルバムである。このアルバムでよくかかるのがタイトル曲であるが、演奏が長いのでKozo's Waltzを選んだのだろう。 曲の冒頭から迫力のあるドラムスの演奏で始まり、大橋さんらしい選曲だなと思った。ぼくならばBobby Timmonsが作曲したSo Tiredというゴスペル調の演奏を選ぶだろう。 このアルバムには、このKozo's Waltzの他にYamaという日本語めいた名前の曲があるが、この名前のいきさつについては大橋さんが放送の中で語っている。
 

 

4)神谷:Take Five (7:00)
・Arne Domnérus ‎– Jazz At The Pawnshop
・Proprius ‎– PROP 7778-79
・Recorded 14./15. December 1976
  Bass – Georg Riedel
  Drums – Egil Johansen
  Piano – Bengt Hallberg
  Saxophone, Clarinet – Arne Domnérus
  Vibraphone – Lars Erstrand

 マスターが持ってきた2枚目のアルバムは、1枚目と異なり録音の良い、発売された当時はオーディオ・チェックによく使われたもので、選曲もTake Fiveというコマーシャルにも使われた、良く知られた曲である。 この曲のオリジナルの演奏はDave Brubeck Quartetで、冒頭のポール・デスモンドの美しいアルトがよく知られているが、本当は5/4拍子のジョー・モレロのドラミングの名人芸を楽しむものである。 良い録音のアルネ・ドムネラスのアルトを楽しんでもらえばよいが、やはりドラムスはジョー・モレロに一日の長があると思う。
 この演奏はスウェーデンの首都ストックホルムでのジャズクラブStampenでの演奏であるが、アルバムジャケットにはJazz At The Pawnshop(Pawnshopは質屋の意味)とあるがなぜか、と大橋さんに質問された。 ぼくはそのことについて聞いたことがあったが、なぜか忘れてしまった。改めて確認してみると、このStampenというジャズクラブの建物は、元質屋だったということである。 

 

5)清水:Air Mail Special (3:57)
・Lionel Hampton And His All-Star Big Band ‎– Aurex Jazz Festival '81
・EastWorld ‎– EWJ-80207
・Recorded in Japan September 2,3,6 1981
  Bass – Chubby Jackson
  Drums – Frankie Dunlop
  Drums, Piano, Vocals, Vibraphone – Lionel Hampton
  Piano – Zeke Mullins
  Tenor Saxophone – Ricky Ford
  Tenor Saxophone, Flute – Tom Chapin
  Trombone – Buster Cooper, Ed Neumeister, Garnett Brown
  Trumpet – Billy Brooks, Johnny Walker , Pete Candoli, Wallace Davenport
     etc

 今回はビッグ・バンドにしようと思っていたので、ぼくの2枚目はLionel Hampton楽団のAurex Jazz Festival '81というアルバムより、Air Mail Specialという曲です。 Aurex Jazz Festivalは1980年より1984年までという短期間ではあるが開催され、この'81年のハイライトはLionel Hampton楽団の演奏であった。中でもAir Mail Specialはオープニングにふさわしい、大変ノリの良い曲である。
 

 

 

 今回の収録にあたっては、冒頭に書いた音声の不具合と、ど初っ端のWe Insist!というアルバムに注目が集まった。 不具合はしっかりと再発防止することが大切であり、同時にぼくたちとしては3人がそれぞれの立場で、Jazzの幅広い演奏を紹介し、Jazzの奥深さ、楽しさ、などを皆さんに伝えていけるように頑張りたいと思っています。




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