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FMジャズ喫茶Pitchがスタートした時、局の方から、2年間は続けるという目標でお願いしますよ、と言われました。大橋ナビゲーターの進行のもとに、ぼくも、マスターの神谷さんも結構楽しんで参加して、今月で丁度その2年目となります。 今後のことは大橋さんと相談ということでしょう。
その大橋さんについては、FM Pitchでの放送をきっかけに、東京のミュージックバードで「真空管・オーディオ大放談」という番組も担当し、活躍してこられました。
その番組での放送内容をもとに、
「大橋慎の真空管・オーディオ本当のはなし」
という本を10月の後半に発行されます。現在Amazonで予約受付中のようですが、オーディオ・ビジュアル部門のベストセラー1位となっているようです。ご興味のある方は一読ください。
ぼくとしては、9月に秋雨前線が停滞し、長雨によりハクサイやキャベツ、ブロッコリの植え付けがなかなかできなくてヤキモキしていましたが、少し晴れ間が続いたので、何とか植え付けも終わりホッとしています。
自然を相手の仕事は、細かいことにこだわらず、常に前を向いているのが平穏なようです。
最近の収録音源ですが、マスターは相変わらず幅の広い、ぼくなんかはとても目を付けないような音源を持ち込んでこられますが、最近注目しているのは大橋さんです。
以前であれば事前にグッド・ベイトにやってきて、あれこれと音源探していましたが、最近はそういうこともありません。ごく普通の顔(ジャズ好きな人の顔)をして音源を持ってこられます。さて、今回はどうなることやら。
1)神谷:Too Close For Comfort (4:50)
・Herbie Nichols Trio – Love, Gloom, Cash, Love
・Bethlehem Records – BCP-81 (release 1958)
・Recorded November 1957 in New York City
Bass – George Duvivier
Drums – Danny Richmond
Piano – Herbie Nichols
マスターの取り上げた、ピアニストのハービー・ニコルスは、自分名義のアルバムは5枚程度しか製作されなかった、あまり世に知られていない不遇のピアニストである。 その中での代表作がBlue NoteでのHerbie Nichols Trioというアルバムと、今回のHerbie Nichols Trio – Love, Gloom, Cash, Loveというアルバムである。 彼が作曲したものでよく知られているのは、ビリー・ホリディが歌ったLady Sings The Bluesである。彼のピアノはセロにある・モンクのように音数の少ない、ダークでスモーキーな雰囲気ではなかろうか。
2)清水:Donna Lee (7:11)
・Clifford Brown – The Beginning And The End
・Columbia – KC 32284 (release 1973)
・Tracks A1 & A2: Recorded in Chicago, March 21, 1952,
Tracks A3 to B2: Recorded in Philadelphia, June 25, 1956
Tracks A3 to B2:
Bass – Ace Tisone
Drums – Ellis Tollin
Piano –Sam Dockery
Tenor Saxophone – Billy Root, Ziggy Vines
Trumpet – Clifford Brown
クリフォード・ブラウンは1956年6月26日の早朝に、ピアニストのリッチー・パウエルの夫人ナンシーの運転する車で、3人ともに死亡するという事故にあい、25歳8カ月で亡くなった。 このアルバムに録音された5曲のうち3曲は、その前日の25日にフィラデルフィアの楽器店での最後のライブ演奏を収録したものである。残りの2曲は1952年の若き演奏である。 それでアルバムタイトルがThe Beginning And The Endとなっており、彼の死後17年たってからの発売である。
3)大橋:Blackjack (6:05)
・Donald Byrd – Blackjack
・Blue Note – BLP 4259(release 1967)
・Recorded on January 9, 1967
Alto Saxophone – Sonny Red
Bass – Walter Booker
Drums – Billy Higgins
Piano – Cedar Walton
Tenor Saxophone – Hank Mobley
Trumpet – Donald Byrd
ドナルド・バードは1958年からペッパー・アダムスと双頭バンドで演奏したり、1963年にヨーロッパに渡りパリで演奏したりしていた。その頃の演奏はぼくもよく聞いている。 大橋さんが持ってきたBlackjackというアルバムは、1966年に帰米後に再び活動を開始し、1967年に録音したものである。 当時のジャズ界のムーブメントに合わせたような、ジャズロック風の演奏で、大変軽く聞きやすい。演奏メンバーを見ると、そうそうたるメンバーであるが、当時の流行でこういう演奏をしていたのである。
4)神谷:Jazz Orchestra '75 Part 1 (14:02)
・Shuko Mizuno, Toshiyuki Miyama & The New Herd Plus All-Star Guests – Shuko Mizuno's "Jazz Orchestra '75"
・Three Blind Mice – TBM-1004 (release 1975)
・Recorded September 3, 1975 at YAMAHA EPICURUS Studio, Tokyo
水野修孝/ジャズオーケストラ75
宮間利之とニューハード
宮間利之(cond),武田和三,白山文男,岸義和,神森茂(tp)片岡輝彦,上高政通,塩村修,伊藤昭志(tb)、鈴木孝二,白井淳夫(as),森守,井上誠二(ts),多田賢一(bs)、山木幸三郎(g),鷹野潔(p),福島靖(b),田畑貞一(ds)
ゲスト:中村誠一(ts),森剣治(as),渡辺香津美(g),岡沢章(elb),今村祐司(perc),村上秀一(ds)
またマスターが意表を突いたアルバムを持ってきた。彼は普段ビッグ・バンドの演奏は聞かない方なのだが、水野修孝がジャズオーケストラ75というのを結成して、
Three Blind MiceレコードにJazz Orchestra '75 Part 1、Part 2というオリジナル曲を演奏したものである。バックのアンサンブルを宮間利之とニューハードが主に受け持って、
スコア通りのがっちりとした演奏を展開し、それをバックにゲストプレーヤーが自由に即興演奏を繰り広げると言った演奏である。切れ味よくしかも録音も良いというアルバムである。
5)清水:Caravan + Bali-H'ai (6:51)
・Ted Curson – Plenty Of Horn
・Old Town Records – OT LP 2003 (release 1961)
・Recorded Bell Sound Studios, NYC, April 11, 1961
Bass – Jimmy Garrison
Drums – Danny Richmond (tracks: A2, A4, B4),
Pete La Rocca (tracks: A5, B3),Roy Haynes(tracks: A1, A3, B1, B2)
Flute – Eric Dolphy (tracks: A3, B2)
Piano – Kenny Drew
Tenor Saxophone – Bill Barron (tracks: A1, A2, A4 to B1, B3, B4)
Trumpet – Ted Curson
テッド・カーソンは1935年生まれであり、このPlenty Of Hornという彼の初リーダーアルバムは、彼が26歳の時に録音したもので、その前にミンガスグループで仲間であったエリック・ドルフィーが参加している。
ここでのテッド・カーソンはクリフォード・ブラウンのような輝かしい音色の演奏をしており、ドルフィーがバックまわり、控えめにフルートでもって彼を盛り立てている。
ここからテッド・カーソンはだんだんとドルフィースタイルの少しアヴァンギャルドな演奏に変化してゆく。
ぼくがテッド・カーソンを聞くようになったのは、マスターに彼の演奏を聞かせてもらったのがきっかけである。
大橋さんが今回取り上げたドナルド・バードはなかなかのインテリで、1971年39歳の時にコロンビア教育大学で博士号を取得し、大学で教鞭をとるような人物である。ぼくは今まで2回彼の演奏を取り上げた。
1回は第6回目の収録の時でOff To The Races 1958年のアルバムよりLover Come Back To Me、2回目は第25回目の収録でByrd In Paris 1958年のアルバムよりAt This Timeである。
今回大橋さんが取り上げたアルバムBlackjackより彼の作風がジャズロックに変わり、1974年のジャズロック・ソウル風のアルバムBlack Byrdが、彼の最大のヒットとなったアルバムである。
8ビートで聞きやすい。でも残念なことに、ぼくはBlackjack以降のアルバムは聞かなくなった。やはりPepper Adamsとの双頭バンドでの演奏Donald Byrd at The Half Note Café Vol.1-2当たりがもっと好きである。またいつか取り上げよう。