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「FMジャズ喫茶Pitch」の放送も3年目を迎えました。毎回、収録の2~3日前に、それぞれが取り上げる曲とその理由について大橋ナビゲーターからヒヤリングを受け、それをヒントに大橋さんがある程度展開のシナリオを構成していると思いますが、 ぼくと神谷マスターは何も知らされていません。当日ぶっつけ本番を迎えるわけですが、やはり2年も続けると大橋さんと神谷マスターの会話も軽妙となり、呼吸も合ってきました。ぼくが二人の間に時々割って入ると言った感じです。 3人のこの間が定着してきた感じです。

1)神谷:A Tribute To John Coltrane 8:10 (Lush Life, Afro-Blue, Bessie's Blues)
・Roland Kirk – Volunteered Slavery
・Atlantic – SD 1534(release 1969)
・Side two of this album was recorded at the Newport Jazz Festival in 1968.
Backing Vocals – Roland Kirk Spirit Choir
Bass – Vernon Martin
Drums – Charles Crosby, Jimmy Hopps, Sonny Brown
Piano – Ron Burton
Tenor Saxophone, Flute, Nose Flute, Gong, Whistle, Horns, Vocals – Roland Kirk
Trombone – Dick Griffin
Trumpet – Charles McGhee
盲目で、しかも三つのリード楽器を同時に演奏し、独特のハーモニーを作り出す個性的なローランド・カークは熱烈なファンがいる。マスターの店のお客さんにもそういう人がおり、カークの演奏はどんなものも持っているようだ。 この演奏はコルトレーンへのトリビュートということで、比較的オーソドックスな演奏になっている。

2)清水:It's All Right With Me 6:25
・Willis Conover And The Jazz Committee For Latin American Affairs
・FM – FM-LP-303(release 1963)
Bass – Ben Tucker
Drums – Dave Bailey
Piano – Ronnie Ball
Trombone – Curtis Fuller
1950年代から60年代にかけては米国から選抜メンバーによるジャズメンが、ヨーロッパや日本にジャズの演奏活動にさかんに出かけたが、このアルバムは南米のブラジルでのジャズ演奏活動を録音したものである。 選抜メンバーとして、上記の他にアル・コーン、ズート・シムズ、ハービー・マン、ケニー・ドーハムなどが参加して、このアルバムの中で曲によってそれぞれが参加している。 ぼくはズートの演奏があるということでこのアルバムに目を付けたが、演奏を聞いてみると今回紹介するCurtis Fullerがダブル・タンギングなどを駆使して、大変切れの良い演奏をしているので今回紹介する気になった。 バックのリズム隊をなかなか良い演奏をしている。

3)大橋:The Peacocks 7:14
・Herbie Hancock – Round Midnight - Original Motion Picture Soundtrack
・Columbia – SC 40464(release 1986)
・Recorded July 1–12 and August 20–23, 1985
Bass – Pierre Michelot
Billy Higgins
Piano – Herbie Hancock
Soprano Saxophone – Wayne shorter
映画の中で、パリにあるジャズクラブ、ブルーノートで演奏された曲を取り上げたサウンドトラック盤である。このアルバムのどの演奏を聞いても映画のシーンが思い出される。 The PeacocksではWayne shorterの演奏するソプラノサックスの音色が効果的である。この映画で主役のデクスター・ゴードンの演技はアカデミー主演男優賞にノミネートされたほどで、演技者としても大変素晴らしかった。

4)神谷:All The Things You Are 8:15
・Grant Green – Remembering
・Blue Note – GXF 3071(release 1980)
・Recorded on August 29, 1961
Bass – Wilbur Ware
Drums – Al Harewood
Guitar – Grant Green
マスターが予定していたアルバムの中身が、違うLPが入っており、急遽予備のものに変更した。グラント・グリーンというギタリストはシングルトーンでゴスペル調でジェリコの戦いといった曲を演奏すると、ぼくのフィーリングにぴったりのギタリストである。 マスターの選んだAll The Things You Areという曲の 8分15秒という演奏時間は少し長く、演奏がやや単調に聞こえる部分もあるが、その分リラックスして聞いていられる。

5)清水:Samba Medleya (Recado Boss Nova, The Girl From Ipanema, One Note Samba) (7:59)
・Al Cohn & Zoot Sims – Body And Soul
・Muse Records – MR 5016 (release 1974)
・Recorded March 23, 1973
Bass – George Duvivier
Drums – Mel Lewis
Piano – Jaki Byard
Tenor Saxophone – Al Cohn
Tenor Saxophone, Soprano Saxophone – Zoot Sims
アル・コーンとズート・シムズの共演盤はどれもこれもぼくは大好きであるが、今回取り上げたBody And SoulというアルバムのSamba Medleyaと名うった曲は、Recado Boss Nova, The Girl From Ipanema, One Note Sambaの3曲をズート・シムズ、 ジャッキイ・バイヤード、アル・コーンが順番にソロ演奏したものである。ここではやはりズートの演奏するリカードボサノバが何といっても素晴らしいと思う。

最近はジャズを取り上げる音楽番組がほとんどなくなり、ぼくにとっては寂しいことである。NHKのテレビで放映される東京ジャズの番組を見ると、ジャズと名うって演奏されているが、ぼくの好みの4ビートのジャズの演奏は大変少なく、
ロックとかフュージョン系の演奏が現代の主流のように見える。
確かにこの番組で取り上げるジャズマンは、鬼籍に入った人が多く、現在もバリバリ活躍している人は少ない。LPを主体に取り上げているからという言い訳もあるが、むしろぼくにとってはLP時代の演奏のほうが、好みにぴったりであるということの方が正直だろう。
文学に例えて言えば、現代文学ではなく、昭和時代の古典文学を取り上げているようなものである。それでもまだ紹介したいアルバムはたくさんある。

