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どこで聞いた話か思い出せないが、アラブの民話である。「父親が亡くなるときに、長男に財産の1/2を与える。次男に1/3を与える。3男に1/9を与えると遺言して亡くなった。父親の財産は羊が17頭であった。兄弟はうまく分配できずにもめていた。そこに通りかかった旅人がその話を聞いて、それでは私が羊を1頭寄付しましょうと言った。そこで長男は9頭の羊を受け取り、次男は6頭の羊を受け取り、3男は2頭の羊を受け取り、余った1頭を旅人が受け取り、すべてがうまくおさまったそうである」この話を聞いて、年を取ってくると自分の考え方に固執し、なかなか他人の意見に耳を傾けにくくなるが、自戒しないと、と思ったのである。確かにこの番組に参加して、マスターの持ってくる色々なジャズを聞いて、今までよりも聞く範囲が広がったのは嬉しいと思っている。

1)神谷:A Night In Tunisia (6:18)
・Seikatsu Kōjyō Iinkai Orchestra – Dance Dance Dance
・Union Records – GU-2004
・Recorded at Teichiku Suginami Studio, Sep 1st – 15th 1980
Shinji Yasuda(tp), Haruki Sato, Hiroshi Itaya(tb), Hiroaki Katayama(ts), Kazutoki Umezu (as)
Yoriyuki Harada(p), Takeharu Hayakawa(b), Kenichi Kameyama, Takashi Kikuchi(ds)
マスターがまた珍しいアルバムを持ってきた。生活向上委員会大管弦楽団のアルバムである。この楽団はこのDance Dance DanceというアルバムとThis is Music is This!?というアルバムの2枚のみ録音を残している。この楽団のテナー・サックス奏者の片山広明さんが2018年11月に67歳で亡くなったのが取り上げるきっかけだそうである。ジャズ喫茶「グッド・ベイト」で演奏をされたこともあるそうである。取り上げた曲A Night In Tunisiaは素晴らしい演奏であるが、最後に少しコミカルな演奏が出てくる。これを面白いと思うか、せっかくなのに惜しいと思うか色々出てくるであろう。まぁ聞いているほうは楽しんだ方が良いだろう。

2)清水:This Light Of Mine (3:30)
・Shirley Scott & Clark Terry – Soul Duo
・Impulse! – AS-9133 (release 1967)
・Recorded August 19 & 22, 1966
Bass – Bob Cranshaw, George Duvivier
Drums – Mickey Roker
Organ – Shirley Scott
Trumpet – Clark Terry
オルガンジャズはあまり聞かないが、シャーリー・スコットだけは時々聞く。彼女のオルガンは足でベースラインを弾かずに、ベーシストを入れているのでコテコテ感が少ないからである。取り上げた曲はゴスペルソングで、これをクラーク・テリーが朗々と歌っている。こういう演奏はぼくの好きなタイプの一つである。ボビー・ティモンズやジョージ・アダムスもゴスペルソングを演奏するが、ぼくはそういうのはたいてい聞き逃さない。
3)大橋:ブラインドでリスニング
大橋さんが突然、事前にこの曲を予定していると予告したものを変更して、1曲かけたいと言い出した。ブラインドでリスニングというわけだ。曲が始まってすぐにマスターが大体わかったと言い出した。ぼくはこの太くて朴訥としたテナーはコールマン・ホウキンスでライブであればJATPのコンサートかと最初は思った。でも録音が当時とは違うなと思い、何だろうと迷った。そのうち、ピアノのアドリブパートを聞いて、このピアノはデイブ・マッケンナに違いないと確信した。そうであれば可能性のあるテナーマンは、ズート・シムズかスコット・ハミルトンと思うが、ズートにしては演奏が朴訥としすぎていると思い、大橋さんのスコット・ハミルトン好きも頭にあり、テナーはスコット・ハミルトンと言ってしまった。そして見事に外れた。答えは以下のようであった。

In A Mellow Tone (5:35)
・Zoot Sims – Live In Japan 1977 Vol. 2
・Marshmallow Export – MMEX-134-CD
・Recorded June 29, 1977
Bass, Vocals – Major Holley
Drums – Jake Hanna
Guitar – Bucky Pizzarelli
Piano – Dave McKenna
Tenor Saxophone, Vocals – Zoot Sims
マスターはJATPコンサートのコールマン・ホウキンスだと答えた。ぼくと思うことは似ているなと思った。

4)神谷:Stompin' At The Savoy 8:12
・Charley Christian / Dizzy Gillespie – Jazz Immortal - After Hours Monroe's Harlem Mintons
・Esoteric – ES-548 (release 1957)
・Recorded March 1941
Bass – Nick Finton
Drums – Kenny Clarke
Guitar – Charley Christian
Piano – Kenny Kersey, Thelonious Monk
Tenor Saxophone – Don Byas
Trumpet – Dizzy Gillespie, Joe Guy
マスターが耳タコとは言わないが、超名盤を持ってきた。ミントンハウスのチャーリー・クリスチャンである。マスターはオルガンはあまり聞かない方であるが、ギターは良く取り上げる。チャーリー・クリスチャンはジャズギターの役割をリズム楽器というわき役から主役のソロ楽器に引き上げた元祖で、しかもミントンズハウスというクラブでビバップが誕生する芽を育てた人でもある。ディジー・ギャレスピーのトランペットもとても初々しく聞こえる。

5)清水:Jay Mac's Crib (7:40)
・George Wallington Quintet – George Wallington Quintet At The Bohemia
・Progressive Records – PLP 1001 (release 1955)
・Recorded at the Cafe Bohemia, New York, N. Y., September 9, 1955
Alto Saxophone – Jackie McClean
Bass – Paul Chambers
Drums – Art Taylor
Piano – George Wallington
Trumpet – Donald Byrd
George Wallingtonにはこのアルバムの他に、翌1956年に録音したJazz For The Carriage TradeというQuintet編成のアルバムがある。メンバーはアルトサックスがPhil Woodsとなり、それとベーシストが変更されているが、ぼくはこのアルバムを知った当時はJackie McCleanのアルトに熱を入れていたので、圧倒的にこのアルバムをよく聞いた。このアルバムの代表曲と言えばBohemia After Darkであろうが、ぼくの選曲したJay Mac's CribはDonald Byrdの作曲であるが、有名なスタンダードに非常に似ていて面白いので取り上げた。

ぼくはZoot Simsの演奏を好んで聞きますが、ズートの音というのはどちらかというとテナーの中音から高音を使って滑らかにしかも温かい演奏というのがイメージにあります。今回大橋さんがブラインドで出したマシュマロレコードのズートの演奏は、どちらかというと太くてごつごつとした音でズートの演奏とは思えませんでした。改めて家でこの演奏を聞いてみると、どこかにズートの節回しが感じられます。ブラインドで当てるのは、自分が持っているイメージにぴったりの演奏であればわかるが、変化球を投げられると難しいと思いました。

