ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「FMジャズ喫茶Pitch」2019年6月1-2週放送内容(5/27収録)(2019.5.28)

 ビル・エヴァンスの生涯を記録した映画「ビル・エヴァンス・タイム・リメンバード」が、今年の4月末から日本で公開されちょっとした話題となっている。映画.comでの解説を紹介すると「アメリカのジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンスの生涯を追ったドキュメンタリー。数々の名演、名盤を残し、薬物依存により51歳の若さで生涯を閉じたビル・エヴァンス。1958年にマイルス・デイヴィスのバンドに加入し「カインド・オブ・ブルー」を制作した当時の様子や、ドラマーのポール・モチアンとベーシストのスコット・ラファロをメンバーに迎えた歴史的名盤「ワルツ・フォー・デビイ」の制作経緯、そして肉親たちから見たエバンスの素顔や、エバンス自身の音楽への思いなど、これまで未公開だった数々の証言、エバンスの演奏シーンなど貴重なアーカイブで構成。また、ジャック・ディジョネット、ジョン・ヘンドリックス、トニー・ベネットら同時代に活躍したジャズマンや、本編の制作中に亡くなったポール・モチアン、ジム・ホール、ボブ・ブルックマイヤー、ビリー・テイラーらも登場。エバンスが駆け抜けた51年をさまざまな角度から読み解いていく」となっている。そういうことも有ってか、今回はビル・エヴァンスからスタートする。

 

1)神谷:Days Of Wine And Roses (7:40)
・The Bill Evans Trio – Consecration-The Last
・Alfa Jazz – 43RI-32 (release 1082)
・Recorded at Jazz Club Keystone Corner in San Francisco, USA, August 31-September 7, 1980
  Bass – Marc Johnson
  Drums – Joe LaBarbera
  Piano – Bill Evans
  

 ビル・エヴァンスが亡くなったのは1980年9月15日であり、サンフランシスコのキーストン・コーナーのクラブに出演したのが死の直前の8月31日から9月7日である。マスターの持ってきたConsecration The Lastというアルバムはこの時の演奏を収めた2枚組のアルバムである。このクラブに出演した時の録音は、Consecration The Last Complete Collectionという8枚組のCDとThe Last Waltzという8枚組のCDの計16枚に記録されている。マスターの持ってきたLPはこの時の演奏を最初に発売したものである。

 

2)清水:Down For Double (3:55)
・Freddie Green – Mr. Rhythm
・RCA Victor – LPM-1210 (release 1956)
・Session recorded at Webster Hall in New York City on the 18th of December 1955
  Bass – Milt Hinton
  Drums – Jonathan Jones, Osie Johnson
  Piano – Nat Pierce
  Rhythm Guitar – Freddie Green
  Tenor Saxophone, Clarinet – Al Cohn
  Trombone – Henry Coker
  Trumpet – Joe Newman
  

 フレディ・グリーンという人は、カウント・ベイシー楽団のリズムギターを弾いて、ベイシーの楽団のスイング感を引っ張ってきた人で、唯一のリーダーアルバムでもリズムギターに徹している。ベイシー楽団でも初期のころにはソロを取ったことも有るようだが、彼がリズムセクションから抜けると楽団がスイングしなくなると言って、メンバーが彼にソロを取らせなくなったようである。とにかくフレディのリズムギターの妙技を楽しむ一枚である。

 

3)大橋:Hannibal (7:22)
・Miles Davis – Live Around The World
・Warner Bros. Records – 9362-46032-1 (release 1996)
  Alto Saxophone – Kenny Garrett
  Bass – Richard Patterson
  Bass – Foley
  Drums – Ricky Wellman
  Keyboards – Deron Johnson
  Trumpet – Miles Davis
  

 大橋さんの持ってきたマイルスのアルバムは、1988年から1991年までの世界各地のライブを集めたオムニバス盤である。このアルバムで特筆すべきは1991年8月25日の、ロサンゼルスはハリウッドボウルにおける生涯最後の演奏ハンニバルが収録されていることである。このハンニバルの演奏について、NHKのドキュメンタリー「巨匠たちの青の時代・・・マイルス・デイヴィス帝王への扉」の中で、マイルスと共同でマイルスの自叙伝を書いた作家のクインシー・トループが次のように語っている。「マイルスが6~7歳のころ、森の中で男女の歌声を聞いた。特に女性の澄んだ歌声がとても感動的であった。自分の演奏もあれに到達したいがまだ到達できていないと言っていた。彼の最後の演奏、ハンニバルを聞いていると、彼はまだそれを追い求めていると分かる」途中にケニー・ギャレットのアルトに絡んで演奏するところがあるが、とてもリリカルに聞こえる。

 

4)神谷:India (7:54)
・David Liebman – Dave Liebman / Homage To John Coltrane
・Owl Records – OWL 046 (release 1987)
・Recorded in New York City, January 27, 28 1987
  Acoustic Bass – Eddie Gomez (tracks: A1 to A4)
  Drums, Percussion – Adam Nussbaum (tracks: A1 to A4),Bob Moses (tracks: B1 to B4)
  Electric Bass – Mark Egan (tracks: B1 to B4)
  Oboe – Caris Visentin
  Piano – Jim McNeely (tracks: A1 to A4)
  Soprano Saxophone – David Liebman
  Synthesizer – Jim Beard (tracks: B1 to B4)
  

 デイブ・リーブマンのHomage To John Coltraneというこのアルバムとか、Tribute To John Coltraneというアルバムで、コルトレーンを彷彿とさせるようなソプラノサックスの演奏は文句なく素晴らしいと思う。だが何となくぼくには引っかかるものが合って、彼の演奏を積極的に聞いてこなかったところがあるので、もう一度聞きなおしたいと思っている。

 

5)清水:Cheek To Cheek (8:06)
・Red Mitchell Quartet – Red Mitchell Quartet
・Contemporary Records – GXC 3185 (release 1957)
・Recorded the night of March 26, 1957 at Contemporary's Studio in Los Angeles
  Bass – Red Mitchell
  Drums – Billy Higgins
  Flute & Tenor Sax– James Clay
  Piano – Lorraine Geller
  

 ぼくが持ってきたのはレッド・ミッチェルカルテットというアルバムです。ぼくはベースの音を聞くのが好きで、ピアノトリオを聞いても、ピアノの演奏よりもベースの演奏のほうが良く耳に入ります。西海岸のベーシストではリロイ・ヴィネガーの地を這うようなウォーキングベースと共に、それとは対照的なこのレレッド・ミッチェルの良く歌うベースは聞いていてとても心地よく感じます。

 

 今回大橋さんが持ってきた音源は、放送でも語っているように、ワーナーミュージック・ジャパンのジャズ・アナログ・プレミアム・コレクションより選定したもので、そのダイナミックレンジの広さはオリジナル盤をもしのぐほどに感じられる素晴らしい音の鮮度感である。興味ある方は是非聞いてみてください。
もう一つの話題は、マスターが手に持っている本である。「ジャズと喫茶とオーディオ」田中伊佐資 著、(ONTOMO MOOK) ムックである。この本が5月25日に発売された。全国40店近くのジャズ喫茶が紹介され、その一つとしてマスターのお店、知立のジャズ喫茶「グッド・ベイト」が紹介されている。




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