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放送の事前打ち合わせの時に大橋さんの選曲を見て、素直に名盤と言われるものが取り上げられていたので、今回の選曲はなかなかいいね!と思わず言ってしまいました。自分がいいと思ったものを素直に選曲したのですと、大橋さんは答えました。今までは少し背伸びをして色々考えて選曲したが、これからはこの方式で行きますとのことでした。ぼくはいなかったのですが、グッドベイトで放送のことで話があれこれと盛り上がり、Y武さんなどから色々と意見とかアドバイスがあったようです。色々な皆さんに関心を持ってもらえてありがたいと思います。

1)神谷:Driekusman Total Loss (9:53)
・Misha Mengelberg Kwartet Featuring Gary Peacock – Driekusman Total Loss
・VARAJAZZ – 210 (release 1981)
・Recorded on 4 December 1964 (A1-B1) and 28 June 1966 (B2) at VARA-Studio in Hilversum
Alto Saxophone – Piet Noordijk
Bass – Gary Peacock (tracks: A1 to B1), Rob Langereis (tracks: B2)
Drums – Han Bennink
Piano – Misha Mengelberg
リーダーでピアノのミシャ・メンゲルベルクとドラマーのハン・ベニンクはこのアルバムの録音の直前にエリック・ドルフィーのラスト・デイトというアルバムの録音に参加している。またアルトのピート・ノルディクは明らかにドルフィーの影響を受けているので、このアルバムの演奏全体がドルフィーの演奏を想像させるような雰囲気を持っている。こういうアルバムの逃さないのは、さすがマスターと言えるのではないか。

2)清水:Introduction,The Ballad Of Thelonious Monk 6:22
・Carmen McRae – The Great American Songbook
・Atlantic – SD 2-904 (release 1972)
・Recorded live at Donte's, Los Angeles, California 1972
Bass – Chuck Domanico
Drums – Chuck Flores
Guitar – Joe Pass
Piano – Carmen McRae (tracks: A3, D3), Jimmy Rowles
Vocals – Carmen McRae
ぼくがカーメンを選曲するなんて、と自分でも驚いているのだが、このアルバムはカーメンがギターのジョー・パス、ピアノのジミー・ロウズなどと共に、ロスにあるダンテというクラブでライブ演奏をしたものを録音したアルバムで、クラブの大変楽しい雰囲気が出ていて、ぼくも大いに楽しんだことがあったので紹介することにしました。
取り上げたカーメンのおしゃべりから始まって、セロニアス・モンクのバラードという歌を紹介するのであるが、これはカーメンが何をお喋りして、セロニアス・モンクのバラードという歌がどういう風なイメージの歌かわかるとより一層楽しさが増すと思うので、油井正一さんが書いた、このアルバムのライナーノーツよりその部分を紹介しておく。
「ジミー・ロウズが作曲したBehind The Faceという強烈なメッセージ性の強い歌をうたった後「どうもありがとう。ジミー・ロウズは凄く才能がある。次の歌は今の歌と全く違う。本当に天才。この歌はジミーが、同じピアニストで、プログレッシヴ・ファズの改革者セロニアス・モンクを歌にしたもの。ここにいらっしゃる方はモンクをご存じだが、レコードを買って下さる数百万の方に・・・その位売れるといいけど・・・セロニアス・モンクとはどういう人か説明しましょう」(中略)。「モンクの音楽を聞いた人なら、セロニアス・モンクをカントリー&ウエスタン的歌にする難しさがおわかりでしょう。モンクが130回生まれ変わってもカウボーイにはならないでしょう」。と言って笑わせたあと<セロニアス・モンクのバラード>を歌う」。セロニアス・モンクのバラードという歌の歌詞も大変面白いが、書きだすと長くなるので省略します。

3)大橋:Blue In Green (5:27)
・Miles Davis – Kind Of Blue
・Columbia – CL 1355 (release 1959)
・Recorded March 2 and April 22 of 1959
Alto Saxophone – Julian Adderly (tracks: A1, A2, B1, B2)
Bass – Paul Chambers
Drums – James Cobb
Piano – Bill Evans (tracks: A1, A3 to B2), Wynton Kelly (tracks: A2)
Tenor Saxophone – John Coltrane
Trumpet – Miles Davis
このアルバムはピアニストにビル・エヴァンスを迎えて、マイルスがモード奏法を取り入れて演奏した名盤としてよく知られたものである。選曲がBlue In Greenとなっているところが、いかにも大橋さん好みとなっている。

4)神谷:Santa Claus Is Coming To Town (4:22)
・Bill Evans – Trio 64
・Verve Records – V6-8578 (release 1964)
・Recorded in New York City, Dec. 18, 1963
Bass – Gary Peacock
Drums – Paul Motian
Piano – Bill Evans
エヴァンスがベースのゲーリー・ピーコックと共演したアルバムはこれ1枚である。このアルバムの中にエヴァンスが好きだったSanta Claus Is Coming To Townという曲が取り上げられているのを見逃さず、クリスマスの時期に持ってくるとは、さすがマスターである。ただジャズ的には、この曲ではあまり盛り上がらず、淡々と演奏しているように聞こえるのはぼくだけの感覚だろうか。

5)清水:Blues In (5:40)
・Art Pepper Quartet – Modern Art
・Intro Records – ILP 606 (release 1957)
・Recorded at Radio Recorders, Los Angeles on December 28, 1956
Alto Saxophone – Art Pepper
Bass – Ben Tucker
Drums – Chuck Flores
Piano – Russ Freeman
若きアート・ペッパーの演奏としては、このイントロのモダンアート、タンパのアート・ペッパー・カルテット(例のべサメ・ムーチョの入ったもの)、それからサヴォイのサーフライド、この3枚のアルバムをよく聞いていた。このブルース・インという曲は、ペッパーにしては珍しくベースのベン・タッカーとデュオで演奏している。アルトの音色だけを聞くとまさにペッパーであるが、このようなデュオ演奏をよくやるのはリー・コニッツである。放送の中で大橋さんの発言に対して、マスターが突っ込みを入れ、二人であれこれ言っているが、リー・コニッツもよく聞くと、時には似ているなと思うことも有る。

6)大橋:Tenderly (3:02)
・Ben Webster – King Of The Tenors
・Verve Records – MGV-8020 (release 1957),
Alto Saxophone – Benny Carter (tracks: A1 to A4, B2)
Bass – Ray Brown
Drums – Alvin Stoller (tracks: A1 to A4, B2), J.C. Heard (tracks: B1, B3, B4)
Guitar – Barney Kessel (tracks: B1, B3, B4), Herb Ellis (tracks: A1 to A4, B2)
Piano – Oscar Peterson
Tenor Saxophone – Ben Webster
Trumpet – Harry Edison (tracks: A1 to A4, B2)
ベン・ウェブスターのテナーは独特のうねりがあり、それが力強くて素晴らしいと思うが、大橋さんが選ぶ曲を聞いていると、ベンのメロディーとかテナーの音色に魅力を感じているとぼくには思われる。特に彼のバラード・プレイは独特の温かさを感じると思う。それはその通りであるが、ぼくは彼がリーダーとして演奏しているアルバムよりも、デューク・エリントン楽団で演奏していた時のほうが魅力的に感じる。なぜだか考えてみる必要がある。

やっと少しペースを取り戻した感じである。しかし年末にかけて地域の行事への参加や、農業の講義などあれこれと残っており、後半の原稿が遅れないように気を引き締めなくてはと思う。

