ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「FMジャズ喫茶Pitch」2019年12月3-4週放送内容(11.18収録)(2019.12.16)

 先回の放送の録音から、大橋さんがLPのフォノイコライザーアンプに、サンバレーが開発したSV-EQ1616D(CR型フォノイコライザーアンプ)をスタジオに持ち込んで使用しています。このアンプの特徴である再生イコライザーカーブを選択できるという機能を、今回の録音で実際耳にして、その再生音の素晴らしさを体感しました。
 LPレコードを作成するときには、低音を小さく、高音を大きくして溝に刻みます。再生の時にはその逆をして増幅する必要があります。それがフォノイコライザーアンプです。昔はそのやり方はそれぞれのレコード会社が独自に行っていたのですが、1954年以降はRIAAカーブというのに統一されたことになっています。ところが実際には英国DECCAでは1966年頃まではFFRRカーブを使用したようです。またBlue Noteでは1967年頃までAESカーブを、ColumbiaではColumbiaカーブを、ImpulseではMGMカーブを、と各社必ずしも統一したRIAAカーブを使用していないことが明らかになってきました。この年代は音が良いと言われる、ジャズのオリジナル盤が多く出回っており、正しいイコライザーカーブを使用したほうが、さらに良い再生結果をもたらすことが期待できるわけです。(この辺のことは、大橋さんのブログを参照ください)

 

1)神谷:Old Devil Moon (8:22)
・Sonny Rollins – A Night At The Village Vanguard
・Blue Note – BLP 1581
・Recorded live on November 3, 1957
  Bass – Donald Bailey (3) (tracks: B2),Wilbur Ware (tracks: A1 to B1, B3)
  Drums – Elvin Jones (tracks: A1 to B1, B3),Pete La Roca (tracks: B2)
  Tenor Saxophone – Sonny Rollins

 マスターがBlue Noteのオリジナル盤を持ってきました。このロリンズの演奏は大好きと見えて3回目の登場ですが、今回の狙いは演奏の良さに加えて音の良さをアピールしようということで、本来の録音カーブと言われるAESカーブで再生しました。RIAAカーブで再生したオリジナル盤でも、音が良いと思っていましたが、AESにするとさらにそれを上回る中音域の張り出し感が著しく感じることができます。(但し、放送でどのくらい伝わるか少し心配ですが)

 

2)清水:No Problem (Part 3) (6:21)
・Duke Jordan – Les Liaisons Dangereuses
・Charlie Parker Records – PLP-813-S (release 1962)
・Recorded at January 12, 1962
  Bass – Eddie Kahn
  Drums – Art Taylor
  Piano – Duke Jordan
  Tenor Saxophone – Charlie Rouse
  Trumpet – Sonny Cohn

 No Problem(危険な関係のブルース)という曲はDuke Jordanが作曲し、フランス映画のサウンドトラックとしてヒットしたのであるが、演奏はバルネ・ウィランが参加したジャズ・メッセンジャーズが担当し、作曲者も別の人がクレジットされ、Duke Jordanには印税が渡らなかったといういわくつきの曲である。このことに怒りを覚えたチャーリー・パーカーの奥さんが企画してできたのがこのアルバムである。A面には3種類の演奏のNo Problemが録音されており、今回は3番目のジャズ・メッセンジャーズの演奏と比較して少しゆったりとした演奏を選曲した。

 

3)大橋:Stardust (3:36)
・Lester Young – The President
・Columbia – 33CX 10031 (release 1956)
・Recorded in New York, November 28,1952(A面)
  Bass – Ray Brown
  Drums – J. C. Heard
  Guitar – Barney Kessel
  Piano – Oscar Peterson

 オスカー・ピーターソンのグループをバックに演奏する多くのプレーヤーは傑作を残しているが、レスター・ヤングもその例にもれず、素晴らしい演奏をしている。ピーターソンと共演したアルバムはLester Young With The Oscar Peterson Trioというのが知られているが、大橋さんが持ってきたThe Presidentというアルバムも、A面はピーターソンとの共演で、B面はジョン・ルイスとの共演で構成されている。レスターのクールなStardustを聞いてみよう。

 

4)神谷:Fire Waltz (13:30)
・Eric Dolphy – At The Five Spot, Volume 1.
・Prestige – NJ 8260 (release 1961)
・Recorded July 16, 1961
  Alto Saxophone, Bass Clarinet – Eric Dolphy
  Bass – Richard Davis
  Drums – Ed Blackwell
  Piano – Mal Waldron
  Trumpet – Booker Little

 ドルフィーがブッカー・リトルと共演したFive Spotでのライブアルバムは4枚あるが、どの演奏も、すべての参加プレーヤーが素晴らしい演奏をしていて傑作である。しかしライブということも有り1曲の演奏時間が長く、なかなか放送で取り上げられなかった。今回マスターが登場させてきた。本当はいつもより少し音量を上げて聞くと、ライブの臨場感が伝わるのだが。

 

5)清水:Come Rain Or Come Shine (4:52)
・Wynton Kelly – Wynton Kelly!
・Vee Jay Records – SR-3022 (release 1961)
・Recorded at Bell Sound, New York City, July 26, 1961
  Bass – Paul Chambers, Sam Jones
  Drums – Jimmy Cobb
  Piano – Wynton Kelly

 ウイントン・ケリーにはKelly BlueとかKelly Greatといったよく知られたアルバムがあるが、ぼくが好きなのは彼のピアノ・トリオの演奏である。特にVee Jay RecordsのKelly At MidniteとこのWynton Kelly!というアルバムをよく聞いていた。かつては、夢中になって彼の良く歌ってスイングするピアノをたっぷりと楽しんでいた。

 

6)大橋:Cherokee (6:30)
・Michel Petrucciani – Michel Petrucciani
・Owl Records (4) – OR 305 (release 1981)
・Recorded at Spitsbergen Studio, Holland, April 3 & 4 1981
  Bass – J.F. Jenny-Clark
  Drums – Aldo Romano
  Piano – Michel Petrucciani

 ペトルチアーニは先天性の障害をかかえていたが、 フランス最高のジャズ・ピアニストと言われた。そのリズミックでリリカルな演奏は大変魅力的である。大橋さんが選曲したCherokeeという曲は、彼の演奏の特徴を楽しむことが出来ます。

 

 今年1年も暮れようとしています。この番組も大橋さんのナビゲーターとしての好リードと、マスターの多くのジャズを聞きこんできた見識と、それに僕の少しの貢献もあるかという思いとで、続けることが出来たかなと思っています。これからも3人でワイワイ、ガヤガヤと楽しく続けられたらいいなと思っています。最後は聞いてくださるリスナーの皆さんに支えられてのことだと思いますので、今後とも応援よろしくお願いします。




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