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神谷マスターが先回選曲したアルバムにL.D. Levy の The Eagle And The Kingというのがあった。
多くの人はおそらくL.D. Levy という演奏者のことは知らないだろうと思うが、演奏を聞いてみるとドルフィー・スタイルのなかなか良い演奏である。こういうアルバムを見逃さないところは流石だと思う。今回の選曲でもフィル・ウッズのLive At Montreux 72というアルバムは演奏も良いけれど、製作がピエール・カルダンという話題性もついている。今までのアルバムにもこういう付加価値がさらっとついているアルバムがあったように思う。長年のジャズ喫茶のマスターとしての経験がなせる業で中々まねが出来ない。
そんなマスターがまた一つ話題を振りまいている。地元名古屋で昨年の6月に発行が始まったジャズに関するフリーペーパー「NAGOYA MUSIC LIFE」のVol.2の表紙を飾り、頁をめくると2ページにわたり記事が載っている。知立の「グッド・ベイト」に行けば冊子がまだあるかもしれません。
(NAGOYA MUSIC LIFEという冊子は6月と12月の年2回発行で、問い合わせ・ご感想は公式Twitter(@NML2019)まで、だそうです)

1)神谷:Falling (8:40)
・Phil Woods And His European Rhythm Machine – Live At Montreux 72
・Les Disques Pierre Cardin – STEC 131 (release 1972)
・Recorded June 19. 1972 at the Montreux Jazz Festival
Alto Saxophone – Phil Woods
Bass – Ron Mattewson
Drums – Daniel Humair
Piano, Electric Piano – Gordon Beck
ヨーロッパに渡ったフィル・ウッズがレギュラーバンドを結成して、しかもピエール・カルダンのレコードに録音した、大変話題性のあるアルバムである。ジャケットの縁が丸くなっていておしゃれでもある。72年のモントルー・ジャズ・フェスティバルでの大変熱い演奏で、聞いていて思わず引き込まれてしまう。

2)清水:A Lunar Tune (7:33)
・Booker Ervin – The Freedom Book
・Prestige – PR 7295 (release 1964)
・Recorded at Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ; December 3, 1963
Bass – Richard Davis
Drums – Alan Dawson
Piano – Jaki Byard
Tenor Saxophone – Booker Ervin
ブッカー・アーヴィンはPrestigeに4枚のBookシリーズのアルバムを録音しているが、このThe Freedom Bookはその最初の1枚である。あとにThe Song Book、The Blues Book、The Space Bookと続く。このThe Freedom Bookはアーヴィンのオリジナル曲が多く、彼の熱くブローするテナーを満喫するには良いアルバムである。ジャッキー・バイアードを中心としたリズム隊も素晴らしい。

3)大橋:Moanin' (9:33)
・Art Blakey And The Jazz Messengers – Art Blakey And The Jazz Messengers
・Blue Note – 4003 (release 1958)
・Recorded on October 30, 1958
Bass – Jymie Merritt
Drums – Art Blakey
Piano – Bobby Timmons
Tenor Saxophone – Benny Golson
Trumpet – Lee Morgan
大橋さんが高速のストレートを投げてきた。ブレイキーが初来日して大ブレイクした時の代表曲がMoanin’であり、その収録アルバムがこれである。作曲者のBobby Timmonsもメンバーに参加した大変ノリの良い演奏である。

4)神谷:Hamp's Blues (4:42)
・Hampton Hawes – Hamp's Piano
・SABA – SB 15 149 ST
・Recorded November 8, 1967 in Germany
Bass – Eberhard Weber
Drums – Claus Weiss
Drums – Claus Weiss
録音の良いことで知られるSABAレコードは、ドイツのSABA電気のレコード部門である。ここから出されたハンプトン・ホーズのHamp’s Pianoというアルバムより選曲されたHamp’s Bluesという曲は、The Trio Vol.1というアルバムの中でハンプトン・ホーズを代表する得意曲となったが、ここでは従来の演奏曲よりずいぶんと軽やかにゆったりとアレンジされた演奏となっている。SABAレコードはのちにMPSレコードと名前が変更された。

5)清水:The Third (5:16)
・J.R. Monterose – J.R. Monterose
・Blue Note – BLP 1536 (release 1957)
・Recorded on October 21, 1956
Bass – Wilbur Ware
Drums – "Philly" Joe Jones
Piano – Horace Silver
Tenor Saxophone – J.R. Monterose
Trumpet – Ira Sullivan
J.R. Monteroseはミンガスの直立猿人というアルバムや、ケニー・ドーハムのオータム・イン・ニューヨークといったアルバムに参加して、名を知られるようになったが、アメリカの小さなクラブを転々と演奏して回り、あまりアルバムを残していないが、スタッカートを多用したり、低音で咆哮したり、と個性的な演奏で知る人ぞ知る、と言った熱心なファンもいる個性的な奏者である。このアルバムではトランペットのアイラ・サリバンのほうが注目度の高い気もするが。

6)清水:De Salde Sina Hemman (They Sold Their Homestead) (6:10)
・The Art Farmer Quartet Featuring Jim Hall – To Sweden With Love
・Atlantic – SD 1430 (release 1964)
・Recorded in Stockholm, Sweden on April 28 & 30, 1964
Bass – Steve Swallow
Drums – Pete LaRoca
Flugelhorn – Art Farmer
Guitar – Jim Hall
もう1曲放送できる時間があると言うので、ぼくが選曲したアート・ファーマーの「スエーデンヘ愛をこめて」というジャズアルバムらしくないタイトルのアルバムからDe Salde Sina Hemman (They Sold Their Homestead)という曲を聞いてください。このアルバムはアーロ・ファーマーがストックホルムでスエーデン民謡を素材にして録音したもので、彼の演奏するフリューゲルホルンのほのぼのとした音とジム・ホールの柔らかい弦の音が、民謡の素朴さとマッチして大変美しい演奏となっている。

3人で写している放送終了後のスナップ写真を見ていると、なぜかぼくだけ表情が硬い。そう思って過去の写真を眺めてみると、大橋さんと神谷さんが笑顔の時でもぼくだけそうでない。別に不機嫌ではないのだが、緊張すると言うのか、顔の表情が緩まないのである。
面白いテレビを見ているときでも、隣で妻が声を出して笑っているのにぼくは表情が乏しく、しらけているのかと質問されてしまう。気持ち的には面白いと思っていても、なかなか顔が緩まないのである。
こんなことで悩んでも仕方ないので、自然体で行こう。

