ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「史記<武帝記>全7巻・北方謙三作」の読書(2020.6.6)

 あちこちに遊びに出かけることもできないので、以前中古本で買っておいた「史記<武帝記>全7巻・北方謙三作」を読み始めた。中国の歴史ものについては横山光輝さんの漫画で水滸伝(全6巻)を読んだのがきっかけで、その後三国志(全60巻)をよみ俄然中国物に興味がわき、殷周伝説(全22巻)、史記(全15巻)、項羽と劉邦(全21巻)を読んだ。その次に読んだのが宮城谷昌光さんの中国歴史小説(王家の風日、香乱記、太公望、楽毅、など)である。
 史記を書いた司馬遷は漢の第7代皇帝「劉徹(武帝)」に仕えた官吏であり、捕虜として匈奴に捕らえられた李陵を弁護して皇帝の怒りにふれ、腐刑に処せられたが、耐えて生き抜き史記を書き上げた。北方謙三さんの「史記<武帝記>」も最初は史記の北方流の翻訳かと思って入手したが、そうではなく、漢の第7代皇帝「劉徹」が皇帝に即位した時から始まり、彼が亡くなった後の、彼を取り巻いていた官吏の後日談までの時代区分の中で、この時代の漢の内政や匈奴との戦い、西域との交易、それに司馬遷の史記の作成の物語などが書き込まれている歴史小説となっている。

 中国の歴史について書かれた本は、「中国の歴史、全10巻、講談社」というのがあり、その第2巻の「秦漢帝国」について、東京大学名誉教授の西嶋定生先生が記述している。また「世界の歴史、全25巻、講談社」のなかの第4巻「古代の中国」について、明治大学名誉教授の堀敏一先生が古代の中国から隋唐帝国までの歴史を記述している。次に「世界の歴史、全16巻、中央公論社」のなかの第1巻「古代文明の発見」で京都大学名誉教授の貝塚茂樹先生が古代の中国から前漢、後漢の時代までを記述されている。
 これらの歴史書と「史記<武帝記>」の内容を比べてみると、「史記<武帝記>」に登場する主な人物は、歴史上実在した人物であり、これらの歴史書より詳しいのは匈奴の歴代の王とそれをとりまく人物、その生活の習慣などであり、これらはまだ僕の知らない歴史書があってそれらを基に記述されているのであろう。それと司馬遷が武帝に仕えていた様子が、鮮やかに描かれている。
 司馬遷の史記は著者自身が名付けた書名は『太史公書』であるが、これは紀伝体という書き方で、極端に言うと、登場人物の伝記のような書き方になっているが、北方謙三さんが「史記<武帝記>」というタイトルを付けたのは、司馬遷が史記『太史公書』を書き上げるというエピソードを入れながら、唐の武帝の時代をあたかも史記の紀伝体以上に生き生きと描いているからではないかと思う。
 ぼくが読んでいて面白いと思ったのは、衛青とか霍去病といった漢の将軍が出現して、今まで負けっぱなしであった匈奴との戦に快勝し、それはなぜかと言うような分析とか、李陵という漢の軍人が戦に負け匈奴の右校王となって活躍する姿、皇帝の劉徹がどういう価値観で君臨して、次々と残酷な処刑をしたかなどが興味深かった。しかし全体としては、やはり壮大な歴史ドラマを見ているようで、個々の登場人物とぼくとの距離は離れているような感じがする。三国志の中国ドラマThree KingdomsをYouTubeで見ていて強い興味を持った、呉の周瑜は、自分の価値観にとらわれすぎて反って自分の行動を狭めてしまったとか、同じく魯粛はその正反対の性格であったとか、なかなか興味深かった。
 自尊心というか矜持というものは必要であるが、それを捨てると司馬遷のように偉業が成し遂げられるということも有るようである。







「西洋音楽史概説、門馬直美著」春秋社を入手した(2020.6.8)

 大橋さんのラジオ番組「FMジャズ喫茶Pitch」に、連客としてレギュラー出演していた3年半の間は、今考えてみるとあまりクラシック音楽に目を向けずにジャズを楽しんでいたような気がする。今は音楽より読書や野菜作りに目を向けているが、今度は少しクラシックの音楽を楽しみたいと思っている。
 ぼくが良く聞くクラシック音楽の作曲家は、バッハとモーツァルトである。あと室内楽とピアノ曲ではベートーヴェンも聞く。最近はシューベルトのピアノ曲も聞く。これらの音楽は大体僕の頭の中にライブラリーが整理できるが、クラシックのレコードは、これらはほんの一部で、他にも色々な分野の曲を分類して保管している。その中でイメージを掴みきっていない分野の音楽がある。それらの多くがバロック以前の音楽である。もちろんバロックでもヴィバルディとかテレマン、バッハ、ヘンデルなどは親しんでいるが、パレストリーナ、スヴェーリング、ダウランドなどといった21名の作曲家のレコードが分類されて並んでいる。さらにグレゴリオ聖歌、ルネッサンスの音楽、スランスノートルダム学派の音楽といった分類のLPも保管されている。こういったもののイメージがなかなか掴みきれていないのである。

 これらの音楽のイメージを掴むキーワードとして、中古本屋を回るときに、音楽の歴史的な流れについて解説した本があれば今までも購入してきた。「音楽の起源」クルト・ザックス著、音楽之友社とか「音楽講座 音楽史」堀内敬三著、音楽之友社それから岡田暁生先生の「西洋音楽史」中公新書などである。いずれも専門過ぎたり、論点が難しすぎたりして、読んでいても中々ぴんと来なかった。それが今回入手した門馬直美先生の「西洋音楽史概説」ぼくの知りたいことが記述されているように思える。例えば「フランドル楽派」の特徴について岡田先生の記述は「・・・フランドル楽派の無伴奏合唱曲の特徴は、均質でのびやかで流麗な甘い響きの流れである・・・」というような表現で書かれているが、門馬先生の記述は「・・・この楽派では、対位法的な技巧が著しく促進され、とくにカノンふうの模倣が愛好され、声楽のポリフォニーの全盛時代が築かれた・・・」という風に記述されている。堀内先生の本では記述なし。これは好みの問題かもしれないが、ぼくは門馬先生の言い方の方が、音楽を聞いていてイメージを掴みやすい。
 これ以外にも今出ている新刊書を探せば、もっと良い本に出合えると思うが、中古本で探すこともぼくの楽しみの一つなので、音楽(クラシック&ジャズ)の歴史について書かれた本というのも、ぼくの中古本探しの分野の一つとなっている。




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