ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
ペラジャケのレコード (2021.1.7)

 ジャズ喫茶グッド・ベイトのマスターより電話で、なじみの中古店にクラシックのLPが大量に置いてあるよ、一度覗いてみなよと情報をもらいました。早速行ってみると確かに大量にありました。ぼくも自分のコレクションのリストがあるわけではないので、記憶を頼りに持っているものをダブって買わないように気を付けているが、それでも結果的には10~15%位はダブリが発生している。それを承知の上で、色々と考えながらLPをチェックするが、大きな興味の対象の1つがペラジャケレコードである。表紙に直接印刷して、表面をビニルコーティングしたジャケットで、日本発売のLPの1960年代までに多く使用された。
 この頃はレコード会社によって色々な特徴があり、LONDONレーベルはキングレコードより発売されているが、大部分がDECCAよりの輸入原盤による国内プレスであり、オリジナル盤に近い音が期待できる。アナログ再生時のイコライザーカーブもRIAAだけでなくFFRRも使用されていた。
 もう一つの注目レーベルはCOLUMBIAレコード。COLUMBIAは日本国内では当初日本コロンビアで製作されていたが、その後CBS/SONYの製作に変わった。そこで音がガラッと変わってしまった。どちらかというと中音域を膨らませた日本コロンビアの音が、低域と高域を広げたメリハリの効いたCBS/SONYの音に変化した。ペラジャケのCOLUMBIAは日本コロンビア当時の音が聴けるのである。このレコードも初期は米国COLUMBIAよりの輸入原盤による国内プレスもあり、その音を確認するのも楽しみの一つである。これ以外にぼくの持っているペラジャケレコードを多い順に並べると、EMT、VICTOR、DG、Fontana、PHILIPSなどが手元にある。これらもLONDONやCOLUMBIAと同じように日本での発売当時がどのようであったかを調べると面白いと思っている。
 
 前置きがどうも長くなってしまったが、ペラジャケレコードを20枚近く入手することが出来た。その中のほんの一部を紹介します。

 

・ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界」 イシュトヴァン・ケルテス指揮/ウィーン・フィルハーモニー LONDON SLC1337 1961年録音、1964年発売、楽譜付きの見開きジャケット盤

 このLPについては、1962年に発売された(SLC1095)アルバムを持っているが、装いも新ただったので再度入手した。タイトルが1964年発売盤は交響曲第9番(No.5)となっているが、1962年盤では交響曲第5番となっている。レコード面に記載されたZALのナンバーは下に示す表のようになっており、いずれも輸入原盤からのプレスと思われる。  

レコード番号 A面 B面
SLC1337 ZAL5172-6W ZAL5173-4W
SLC1095 ZAL5172-2E ZAL5173-1E
 

 ケルテスの新世界は、指揮者の覇気のある表現がとてもフレッシュで高く評価された演奏である。両盤の音の確認はしていないが、素性からすると大差ないように思われる。1970年代のキングレコードが国内でカッティング原盤からのプレス盤も確か持っているので、それがどんな音がするかも興味がある。

   

・ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」 ブルーノ・ワルター指揮/コロンビア交響楽団 COLUMBIA OS-194(S)1958年録音、1962年発売
 ワルターのまろやかな心温まる「田園」交響曲で、名演奏の一つと言われているアルバムである。このステレオ盤はグレーの6eyeのラベルが使用され、マトリックス番号がXSM-43402-3、XSM-43403-2と打ってあることから推定すると、これも輸入原盤からのプレスと思われる。ぼくはワルターの演奏については、この盤とは別にモノラル盤を持っている。

 

・ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」 ブルーノ・ワルター指揮/コロンビア交響楽団 COLUMBIA RL-114(M)1958年録音、発売年?(62年より以前)

 こちらはぼくが以前から持っているモノラル盤で、ジャケットの表紙の上部にSTEREOの文字がなく、ラベルはブルー色が使用されている。これのマトリックス番号は、XLP-43033-2、XLP-43034-4となっており、これも輸入原盤からのプレスと思われる。
 日本コロンビアが国内でステレオLPを発売し始めたのが1958年の8月であるから、同じ年に録音されたワルターの演奏は、国内ではステレオに先駆けてモノラル盤で発売されたものだろう。
 ステレオ盤のジャケットには録音特性RIAAと記入してあるが、モノラル盤のジャケットにはその表示がない。輸入原盤であると考えると、もしかしたらCOLUMBIAカーブが採用されている可能性もある。
 ぼくの手元にはさらにCBS/SONYより発売されたアルバムがある。  

 

・ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」 ブルーノ・ワルター指揮/コロンビア交響楽団 CBS/SONY SOCL-1002(S)1958年録音、1975年発売

 このアルバムはSX-74 SOUNDと名うった、ノイマンのSX-74カッティングシステムで製作されたことがうたい文句になっている。再生音は帯域の広いメリハリの効いたソニーの特徴あるサウンドである。
 以上のように、この演奏に関しては色々な音の違いを聞き分けて楽しむことが出来るようだ。さらに、この演奏にはもしかして国内で作成の原盤よりのアルバムが、日本コロンビアより発売されているかもしれない。そういったことも今後の興味の一つである。
 
 ペラジャケレコードを入手して、ここに書いたようなことをあれこれと詮索していると、当時のレコード会社の歴史を色々と調べるようなことにもなってしまう。そんなときに大変参考になっているのが、「マイクログルーヴからデジタルへ ― 優秀録音ディスク30年史 上巻(モノーラル編)、下巻(ステレオ編)」岡俊雄著、ラジオ技術社、という本である。この本は以前、第九のIさんよりいただいたものである。第九のIさんが音源をLPよりCDに切り替えられたときに、LPにこだわって聞いていたぼくに参考にしてくださいと言われた。それが今も役立っているのである。
 一般人から見ればどうでも良い様なことであるが、あれこれと楽しんでいるのである。  




ベートーヴェンの弦楽四重奏曲(2021.1.12)

 ぼくがベートーヴェンの弦楽四重奏を聞いてみようと思ったのは、新潮文庫の五味康祐・音楽巡礼という本を読んで、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調、作品131のことが大変熱っぽく感動的に書いてあり、興味を持ったのが最初である。EMIのアルバン・ベルク四重奏団のCDで1番から16番まで買いそろえた記憶があるので、時期的にはLPが廃れてCDに置き換わったころである。
 その頃は聞きなれていなかったからか、全曲を聞き通すというより12番以降の曲のアダージョの部分を好んでよく聞いていた覚えがある。それで思い出すのは、最初にキット屋の大橋さんとの出会いが、タンノイのスターリングを自宅から持って行って、このスピーカーでクラシックを鳴らしたいのだが、キット屋のアンプの音を聞かせてくださいと訪問したことである。その時に持って行って聞いた音楽がアルバン・ベルクの演奏する、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第12番の第2楽章のアダージョだった。

 弦楽四重奏というのは演奏団体の個性がはっきりとわかるので、色々な演奏をCDで収集し始めた。全曲を揃えた団体だけでも、アルバン・ベルク、スメタナ、メジチ、スズケ、バリリ(3曲欠)などがあり、14番だけで言えばこの倍の演奏団体が手元にある。集中して色々聞くという熱が冷めた後は、中古のLPをチェックするときにこういったアルバムがあれば必ず入手するようにしている。
 最近になって入手した中古LPをごそごそと探し出して聴き始めたが、その中にアルバン・ベルクのBoxセットが二つ出てきた。ぼくの記憶になかったのだが、7番から11番までの中期の作品を取り上げた3枚組セットと、12番から16番の後期に作品を取り上げた3枚セットで、いずれもドイツEMIよりの輸入盤である。
 聞いてみて驚いたのが、大変録音が良いのである。アルバン・ベルクのウィーン風のしなやかさを持ちながら、切れ味の良い演奏が、エッジの立ったシャープな音で、しかも音量を上げてもうるさくなくて、思わず顔がほころんでしまう。今までCDで聞いた演奏は何だったかと思えるほどである。特にラズモフスキーの1番、2番などは絶品に聞こえる。  

 実は先日のペラジャケレコード入手の時に、ブダペスト弦楽四重奏団の1951年~52年録音のベートーヴェン・シリーズ全10枚のうちの7枚があったので、それをすべて購入してきた。CBS/SONYから発売されたモノラル録音の盤である。(モノクロ写真のジャケット) それとは別に弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調のみは61年録音のステレオ盤が有ったので、それを入手した。(カラー写真のジャケット)
 今までこのカルテットの演奏は、モノラル録音で音が古いと思って聞いてこなかったが、改めてその演奏を聞いてみると、引き締まった集中力のある演奏で、引き込まれてしまう。素晴らしいと思う。  




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