ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
レコードに関する歴史本 (2021.2.5)

 ペラジャケレコードに興味を持ち、あれこれ知ろうとすると、日本で言うと1950年代から60年代にかけてのレコードに関する色々な出来事を書いた書物を調べる必要がある。ということで折に触れてそういった本を入手してきた。
 ・「優秀音盤ディスク30年史」上(モノラル編)、下(ステレオ編)岡俊雄著、ラジオ技術社
 ・「証言‐日本洋楽レコード史(戦前編)」歌崎和彦編、音楽之友社
 ・「日本レコード文化史」倉田善弘著、岩波現代文庫
 ・「レコードの文化史」クルト・リース著/佐藤牧夫訳、音楽之友社

「証言‐日本洋楽レコード史(戦前編)」は、雑誌「レコード芸術」の連載「証言-日本レコード史」をまとめたもので、(戦前編)以外に(戦後編1)が出版されたと思う。戦後編1はLPのなかのモノラルLPまでのことがまとめられている。おそらく(戦後編2)というタイトルでステレオLPについてまとめる企画であったと思われるが、見たことがないので出版されなかったのではなかろうか。
「日本レコード文化史」は戦前のSP盤のまとめに多くを割き(全体300頁のうちの250頁)、LPについては50頁が割かれているのみなので、ぼくとしては物足りなく感じる。
歴史的なまとめとは別に、興味ある項目でまとめた本としては次の物がぼくの手元にある。
・「LPレコード再発見-円盤に棲む魔物の魅力に迫る」山口克巳著、誠文堂新光社
・「LPレコード新発見-オーディオの深淵に棲む魔物に迫る」山口克巳著、誠文堂新光社
・「LPレコードに潜む謎-円盤最深部の秘密を探る」山口克巳著、誠文堂新光社

 山口克巳さんという方はデザイナーであり、「ドイツ・シャルプラッテン」のジャケットデザイン、「アメリカンミュージック」レーベルの製作にも携わった方で、LP関連の知識にも造詣が深く、これはそれに関する3部作である。
 まだまだLPレコードに関連する本はありそうなので、注視していく。




懐かしいオーディオの本 (2021.2.10)

どなたかは知らないが、何かの事情で手持ちされていたオーディオの本が売りに出されていたので、その中より4冊ばかり購入した。
・「オーディオ名機読本-私を熱くさせた逸品たち(海外編)」別冊CDジャーナル、音学出版社
 スピーカー:アルテック416A、A7、755E、JBLD44000パラゴン、LE8T、4343など15点
 アンプ:マランツMODEL7、マッキントッシュMC1000など11点
 プレーヤー:ガラード301、トーレンスTD124など6点
 これら現在に至っても、いまだ名機と言われ続けるオーディオ機器について、それぞれの愛好者が熱く語っている。
・「ジェイムズ・B・ランシング物語-音を極めた驚異のスピーカーJBLの奇跡」佐京純子著、実業之日本社
  第1章 天才エンジニアの軌跡
  第2章 ランシングの遺産
  第3章 そして今、日本とJBL
  第4章 音と人間
・「音楽、オーディオ、人びと」中野英男著、音楽之友社
 トリオの社長・会長・相談役であった著者が、自らの趣味であるオーディオと、社業であるオーディオ機器の開発を通して体験されたことを、月刊「サプリーム」誌に「オーディオ紳士交遊抄」として連載されたものを本にしたもの。興味深い話が満載である。
・「新レコード演奏家論」菅野沖彦著、ステレオサウンド
 ぼくは今までこの本を読んだことはないが、これが出版された時は話題になり、著者の主張に対して賛否両論が熱く戦わされたことを思い出す。ぼくの勝手な理解で言うと、菅野沖彦さんが、高級名機と言われるオーディオ機器を駆使して自分の納得する音で音楽を聞く、この行為は趣味の域を超えてレコード演奏家というプロの域である。という主張ではないかと思う。こんなたいそうなタイトルをつけなければ、もっと素直に理解する人が増えたのではないか。   

 昨今はまたLPがちょっとしたブームと言われている。CDが出た時には、そのSN比の良さ、取り扱いの便利さ、などの魅力によってLPが取って代わられた。ぼくはカートリッジによって音の変化が楽しめるなどの、オーディオ的魅力によってLPにこだわってきた。ぼくにとっては、結果としてそれはよかったと思っている。だが若い世代の音楽の楽しみ方とは違うかもしれない。
 これらの本はオーディオが熱かったころの話題がいっぱい詰まった本である。もう少ししたら、単なる資料になってしまうだろう。




さよならバードランド/ビル・クロウ(2021.2.15)

 ジャズベーシストのビル・クロウは1952年にはスタン・ゲッツのレギュラーメンバーとして、長くは1955年から65年までジュリー・マリガンのバンドで活躍していたので、ゲッツとかマリガンをよく聞く人はご存知だと思う。では彼のリーダーアルバムの代表作は何かといわれると、1995年に彼が67歳でヴィーナスレコードに初リーダー録音したFrom Birdland To Broadway(さよならバードランド)になるだろう。日本のヴィーナスレコードの企画で、録音はルディ・ヴァン・ゲルダーが担当している。2枚目のアルバムが同じく2番目のリーダー作JAZZ ANECDOTESということになるだろう。
 ビル・クロウはまさにあまり目立たない縁の下の力持ち的存在のベーシストで、65歳までリーダーアルバムを作ることもなく、知る人ぞ知るという存在であった。その彼が注目されるようになったのは、彼の書いた自伝的ジャズ回想録「さよならバードランド―あるジャズ・ミュージシャンの回想」と、ジャズ・ミュージシャン裏話を集大成した「ジャズ・アネクドーツ」を村上春樹が翻訳して紹介したのがきっかけである。それで本のタイトルと同じタイトルのアルバムが日本で製作されたのである。
 アルバムにシルエットで映っている、ベースを担いでニューヨークを歩いているのはビル・クロウ本人である。当時ぼくがこのアルバムを入手したのは、ビーナスの録音でAutumn Leavesの演奏が入ったアルバムということが動機だったようだ。本との関連は後から気がついた。今ではこの本も新潮文庫で入手できるが、ぼくが入手した初版の単行本はそれなりに高額であった記憶がある。さよならバードランドだけは単行本(左写真)と文庫本で表紙のデザインが異なっている。ジャズ・アネクドーツはレイアウトが微妙に違う。

・Bill Crow Quartet – From Birdland To Broadway
・Venus Records – TKJV-19003
・Recorded at Van Gelder Studio, on November 19 and 20 , 1995 in New Jersey
  Bass – Bill Crow
  Drums – David Jones
  Guitar – Joe Cohn
  Tenor Saxophone – Carmen Leggio
 A1 From Birdland To Broadway 5:15
 A2 News From Blueport 4:00
 A3 Tricrotism 4:57
 A4 Fools Rush In 7:16
 B1 Autumn Leaves 5:52
 B2 My Funny Valentine 8:15
 B3 Night Lights 4:01
 B4 Broadway 2:53
  
 このアルバムが企画された動機は以上のようであるが、演奏もどちらかというとほのぼのとした心地よいサウンドで、選曲も良いと思う。ビル・クロウがメンバーに背中を押されるようにしてソロを取っているのが彼らしい。
 




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