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放送を聞いていただくと分かりますが、マスターは大変明るくて、とても元気にふるまっていますが、本当はかなりつらい闘病であったようです。
神谷マスターの追悼番組になってしまいました。安らかにお眠りください。
FM Pitch 放送日:前編3月3日(水)21:00~22:00(翌週再放送)
1月になって大橋さんから電話をいただき、年が明けてグッド・ベイトの神谷マスターと顔を合わせた時に、もう一度FMジャズ喫茶Pitchの番組をやりたいね、という話になり局に相談したところ、3月に放送枠を確保していただけることになりました。ついてはぜひ協力をという内容でした。ぼくに異論はなく、ぜひやりましょうということで、通算すると第83回と第84回のFMジャズ喫茶「Pitch」が3月に放送予定となりました。 コロナ禍ということも有り、Pitchのスタジオを使用できないということで、キット屋のショウルームでの収録となり、大橋さんがナビゲーター兼エンジニアということで、録音と編集を担当することになり、変則的に収録が始まりました。

1)神谷:Willow Weep For Me (3:49)
・Sonny Criss – Jazz - U.S.A.
・Imperial – LP-9006
・Recorded 1956, ( & Mono release)
Bass – Bill Woodson
Drums – Chuck Thomson
Guitar – Barney Kessel
Piano – Kenny Drew
Saxophone [Alto] – Sonny Criss
ソニー・クリスの演奏は82回までの放送の中で5回出てきている。4回はぼくだが1回はマスターだ。それも早々と第4回の放送で取り上げている。どうもマスターがこれがジャズだという演奏で、幅広く皆さんに聞いてほしいと思うときに、ソニー・クリスが浮かぶのではないかと推測している。今回は1年ぶりにジャズを紹介できるということで、気を使っているのではないかと思う。演奏はクリスの瑞々しいアルトの音が心地よいバラードプレイである。

2)清水:Rockin' In Rhythm (4:37)
・Sonny Criss – Rockin' In Rhythm
・Prestige – PR 7610
・Recorded in New York City; July 2, 1968
Alto Saxophone – Sonny Criss
Bass – Bob Cranshaw
Drums – Alan Dawson
Piano – Eddie Green
実は、ぼくも今回の放送の冒頭にソニー・クリスを持ってきました。軽快にスピード感溢れて、これがジャズだと演奏するクリスのこの曲が大好きです。アルバムJazz - U.S.A.から12年も経っていますが、クリス節は冴えわたっています。

3)神谷:Bra Joe From Kilimanjaro (11:23)
・Dollar Brand – African Piano
・Japo Records – JAPO 60002
・Recorded live October 22, 1969 at Jazz-Hus Montmatre, Copenhagen
Piano, Composed By – Dollar Brand
ぼくもマスターの影響で、ソロとかデュオのジャズ演奏を聞くようになったが、以前は避けていた。理由は、ベースの音が聴けないのは何か物足りないという単純なことだったかもしれない。だからダラー・ブランドのこのソロ・ピアノを聞いたのは、このアルバムのブームがおさまってしばらく経ってからである。この演奏は聞き流していると何も残らないような不思議な演奏であるが、左手のリズムに乗って右手が次々と繰り出すメロディ・ラインに集中するとブランドの世界に引きずり込まれていくような感覚になる。

4)清水:Blood Count (3:34)
・The Stan Getz Quartet – Pure Getz
・Concord Jazz – CJ-188
・Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, January 1982
Bass – Marc Johnson
Victor Lewis
Piano – James McNeely
Tenor Saxophone – Stan Getz
このPure Getzというアルバムは、晩年のゲッツが若手のリズム隊を従えて、これが俺の演奏したいジャズだと主張しているような作品で、ぼくはどの演奏も良いなと思っている。中でもビリー・ストレイホーンが作曲した、このBlood Countという奇妙なタイトルの曲のバラードプレイは、ゲッツのすざましいまでに凝縮された緊張感あふれる演奏である。ゲッツの最後のアルバムとなったPeople Timeで演奏したFirst Song (For Ruth)を彷彿とさせる。

5)神谷:So What (7:50)
・Miles Davis – Miles In Tokyo (Miles Davis Live In Concert)
・CBS/Sony – SONX 60064-R
・Dates recorded & location 7 / 14 / '64、厚生年金ホール、東京
Bass – Ron Carter
Drums – Tony Williams
Piano – Herbie Hancock
Tenor Saxophone – Sam Rivers
Trumpet – Miles Davis
この年のマイルスのライブ演奏と言えば、ウェイン・ショーターが参加した9月のベルリンでのライブアルバムを紹介するのが普通だが、マスターはあえて7月の東京でのライブアルバムを持ってきた。ここではテナーにサム・リバースが起用され、彼が参加したマイルスのアルバムはこの1枚だけという希少盤である。どれだけ前衛的な音がするか興味深い。

6)清水:'Round Midnight (8:57)
・Art Pepper, John Klemmer, Johnny Griffin, Joe Farrell, Joe Henderson, Harold Land With Rhythm Section Of Stanley Cowell, Roy Haynes, Cecil McBee, John Heard – Birds & Ballads
・Galaxy – SMJ-9532~3
・Recorded December 1-5, 1978
Bass – John Heard
Drums – Roy Haynes
Piano – Stanley Cowell
Tenor Saxophone – John Klemmer
パーカの曲やバラード曲を6人のサックスプレーヤーが演奏するという企画物アルバムで、ぼくはアート・ペッパーにつられて購入したが、聞いてみるとジョン・クレーマーの演奏するラウンド・ミッドナイトが大変気に入って、ことあるごとに聴いている。マスターに教えてもらうと、ジョン・クレーマーはフージョン系のサックス奏者で、普段はこのような演奏はしないそうだが、彼のアルバムで1枚だけこういう演奏のアルバムがあるそうである。

7)神谷:Oleo (7:07)
・Eric Dolphy – In Europe, Vol. 1
・Prestige – PR 7304
・Recorded in Copenhagen, September 8, 1961 (release 1964)
Bass –Erik Moseholm
Drums – Jorn Elniff
Flute, Bass Clarinet – Eric Dolphy
Piano – Bent Axen
ドルフィーの1961年のIn Europeと言えば、Vol. 2にあるThe Way You Look Tonightという曲が好きですぐ口に出るが、今回マスターはVol. 1にあるOleoを選んだ。これはドルフィーのバスクラによる演奏で、ぼくにはバスクラの低音がとても気持ちよく聞こえる。

今回のFMジャズ喫茶「Pitch」の収録は、キット屋の試聴室を使って行われました。録音を担当するエンジニアの方がいないので、大橋さんが司会進行兼録音エンジニアです。見ていると難なく機械を操作しながらトークの進行を務めていますが、大変な神経の使いようのようです。1年ぶりということも有りますが、我々二人に対する大橋さんのトークの突込みが少し優しいのは、役割分担が多すぎるせいかもしれません。これは終了後のスナップ写真ですが、マスターは天性の明るさで笑顔ですが、ぼくは笑顔がどこかへ飛んで行っています。大橋さんは少し疲れたのかな。


