ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
「FMジャズ喫茶Pitch」神谷マスター追悼特別番組
FM Pitch 放送日:後編3月17日(水)21:00~22:00(翌週再放送)

 追悼番組の前編の放送を聞いて、マスターの元気な声を耳にすると、もう彼とこういったジャズ談義が出来ないのだと思うと、失ったものの大きさを感じざるを得ません。幸い後編も収録されているので、マスターの熱いジャズ談義を聞いて、彼を偲んでください。


1)神谷:All Alone (5:12)
・Mal Waldron – All Alone
・Globe – MJ-7114
・Recorded in Milan, 1st of March, 1966 (release 1969)
  Piano – Mal Waldron

  マル・ウォルドロンはエリック・ドルフィーのレギュラーピアニストとして共演しているが、彼のソロピアノは音数が少なく、それでいてペーソスがあり、独特の哀愁を感じさせてくれる。マスターがこれを今日のトップバッターに持ってくるとは、じっくりジャズを聞くぞというメッセージか。

 

2)清水:And When We Are Young (14:00)
・Phil Woods And His European Rhythm Machine – Alive And Well In Paris
・Pathé – SPTX 340.844
・録音:1968年11月14,15日パリ
  Alto Saxophone – Phil Woods
  Bass – Henri Texier
  Drums – Daniel Humair
  Piano – George Gruntz

 フィル・ウッズがヨーロッパに渡り、レギュラーメンバーで最初に録音したアルバム。曲は、彼と親交のあったロバート・ケネディが凶弾に倒れたのを鎮魂して演奏したAnd When We Are Young(若かりし頃)というもの。

 

3)神谷:I'm An Old Cowhand (5:35)
・Sonny Rollins – Way Out West
・Contemporary Records – C 3530
・Recorded at Contemporary's studio in Los Angeles March 7, 1957
  Bass – Ray Brown
  Drums – Shelly Manne
  Tenor Saxophone – Sonny Rollins

  マスターがど真ん中の直球を投げてきました。大抵の人はソニー・ロリンズのこのアルバムを手に取ったことがあると思います。西海岸の名手シェリー・マン(ds)、レイ・ブラウン(b)と西部劇風のジャケットでしゃれて演奏しています。

 

4)清水:Rhythm-A-Ning (3:53)
・Thelonious Monk – Criss-Cross
・Columbia – CS 8838
・Columbia Records 1963
  Bass – John Ore
  Drums – Frankie Dunlop
  Piano – Thelonious Monk
  Tenor Saxophone – Charlie Rouse

  ぼくがセロニアス・モンクをこんなにいっぱい聞くようになったのは、マスターの影響があります。彼の代表的アルバムはリバーサイドに多く録音されていますが、今日は後半に録音したコロンビア盤をチョイスしました。オリジナル盤でなくセカンド盤ですが、大変良い音で録音されています。

 

5)神谷:Les (4:03)
・Daniel Humair – Surrounded 1964/87
・Flat & Sharp – PAM 970
・Recorded 1964-1987 (release 1987)
  Alto Saxophone – Eric Dolphy
  Bass – Guy Pedersen
  Drums – Daniel Humair
  Piano – Kenny Drew

  ユメールの変化にとんだドラミングをバックに、こういう情熱的で、しかも趣味の良い演奏はドルフィーの最も得意とするところである。この盤はフランスで発売されたのみで、もちろん日本では発売されなかった。こういう盤がさらりと出てくるところは、ドルフィーコレクターの面目躍如たるところである。

 

6)神谷:The Blessing (10:30)
・The Fabulous Paul Bley Quintet
・America Records ‎– 30 AM 6120
・Live recording from Hillcrest Club, Los Angeles 1958 (release 1971)
  Alto Saxophone – Ornette Coleman
  Bass – Charlie Haden
  Drums – Billy Higgins
  Piano – Paul Bley
  Trumpet – Don Cherry

  これはポール・ブレイがリーダーのライブ・アルバムですが、ジャケットで目立っているのはトランペット担当のドン・チェリーです。実際の演奏でも彼が活躍しています。このアルバムが出てくるのも、さすがジャズ喫茶のマスターと言ったところでしょう。

 

 これはぼくのまったくの妄想であるが、マスターが今回の収録にあたり、最初に選んだ彼の好みの演奏は、かなりアヴァンギャルドな演奏であった。それが今回の2回の放送に最終的に選択されたアルバムは、もちろん彼の好みは入っているが、一般的な名盤と言われるものに近いものとなった。

 店で事前にかけた時に、お客さんからもう少し聞きやすいものにしてよ、といった意見が出てそれを参考にしたと本人は言っているが、お客に言われて彼はなぜその気になったのか。

 放送を聞いていただくと、今日は楽しくて! まだまだ紹介したい素晴らしい曲がいっぱいあるよ!・・・といった元気はつらつたる発言があります。彼があえてこういうことを言ったのは、この収録が最後の収録となる可能性があると意識していたのではあるまいか。この放送が彼の白鳥の歌となる可能性を意識していたのではないか。

 彼の生前を知る人が、故人となった彼を偲んでこの放送を聞いてくれる時に、どんな曲を聞いてもらったら良いだろうかと考えたのではないか。こんな理解は妄想過ぎるだろうか。

 マスターの訃報を聞いた時、大橋さんも、ぼくも力が抜けて、言葉も出ません!もう二度とこういったジャズ談義が出来ないのかと思うと寂しい限りです。

 しかし良いニュースもあります。マスターの奥さんと娘さんの二人が、マスターが40年以上を費やして作り上げた「グッド・ベイト」というジャズ・ワールドを継承される(お店を続ける)ということです。ジャズ好きの皆さんで盛り立てていければ良いなと思います。

 

「マスターの奥さんにお願いしてコメントをいただきました」

 このたびは主人が亡くなるという残念な結果になってしまいました。生前は多くの人がマスターとグッド・ベイトを愛してくださり、本当に嬉しく感謝の気持ちでいっぱいです。

 マスターは、年の始めと終わりには必ずグッド・ベイトという曲をかけていました。またジャズメンが亡くなると、死亡記事を張り出し、代表的な演奏を店でかけていました。これから店がどんな様になってゆくか、店の片隅で見守ってくれているような気がしています。

 皆様、今後ともにご支援をよろしくお願いします。

神谷真澄




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