by Y下 
第34回 シカゴトランスを使ったウィリアムソンアンプ

 第34回のブログは彼の作ったアンプを解体して新規に作り直してEL34を使ったウィリアムソンアンプの製作と試聴になります。ウィリアムソンアンプは1948年に発表された高NFBをかけたアンプでウィリアンソンアンプの原型の出力管はKT-66PPですが今回は彼の遺品でもあるドイツMAZDAのEL34を若干ではありますが時定数を変更してウィリアムソンアンプを忠実に再現して製作しましたが今回ほど大変苦労をしたアンプはないのと皆さんの前にお披露目できるものではなく又自慢できる程のアンプはありませんが音質的には素晴らしいのを持っていましたのでこのコラムで製作と試聴をご報告させて頂きます。

グリーンメタリック塗装を施しY下のお家芸であるステンレスアッパーパネルを採用したEL34-PPモノラルアンプ

 私と一緒に写っている右側の方は皆さんご存知かな?管球王国や真空管オーディオでは全国的に有名な新先生です。この方は大変人当たりが良くオーディオに対して特に真空管アンプの製作に関しては日本ではトップクラスに入る非常に感じの良い人で大きな器を持っていますが名前だけの師匠ではなくこの方こそ本当のオーディオの師匠と云えます。先生は私の所属しているオーディオクラブの試聴会にお見えになった時やサプライズでクラブの懇親会にお見えになった時からアンプ製作に関しては同じ考えで年齢を超えて意気投合しています。新先生とはこれからも真空管アンプでの交流をさせて頂きご教授頂きたいと思っております。新先生これからも宜しくご指導下さい。

 クラブの井上君にお願いして写して頂いた先生とのツーショット写真
高名な先生に図々しく肩を組んでいるおっさんが私です。 ウィリアムソンアンプの製作
ウィリアムソンアンプの製作

 ウィリアムソンアンプは1940年代の終わりごろ英国のウィリアンソン博士が発表した高帰還型アンプでマニアの間では音の良いアンプと云われていました、
 当時発表された真空管構成は6SN7-6SN7-KT-66を使い整流管は53KU(コッソー)トランスはパートリッジです。既製のアンプではこの回路を採用したアンプはほとんど見かけません。回路の複雑化と部品点数の多さとそれに見合う良質なトランスがないため本来の良さが発揮されないのかそれとも回路が古すぎて採用しなかったのではと考えられる。
 私が思うにはウィリアンソンアンプは出力トランスが決め手ですから自作マニアが国産の既製のトランスを使って回路を真似ても残念ながら本来のウィリアンソンアンプの良さは出てこないと思う、
ウィリアムソンアンプこそ出力トランスが音を決定すると云っても言い過ぎではない、オリジナルは英国のパートリッジを使っていましたからその良さが引き出されていたと考えられる。もし私がシカゴトランスを手に入れなければウィリアムソンアンプは作らなかったと思う、英国パートリッジのトランスの良いのは認めるがシカゴトランスはパートリッジには負けないウェスタンのOEMのトランスですから作る意欲が出て来るのは当然かも・・・・・・
 また私なりにこのウィリアムソン回路を採用した既製のアンプを調べましたらありましたSUNVALLEY AUDIOでおなじみのサンバレーさんからこの回路を採用したアンプで「SV-8800SE」がウィリアムソン回路を採用しています。ウィリアムソンアンプはNFBが高帰還型で出力トランスによっては不安定要素が若干あるような気がしますがその点この「SV-8800SE」は高帰還アンプではないので音に安定感があります。
 このアンプを東京の試聴会で聴きましたが文句なしの第一級の音質を持っているのとステンレスの鏡面パネルの採用でルックスが大変素晴らしいゴージャスなデザインと見栄えを持ち合わせたアンプで自作マニアではまず真似する事は無理であると書くと自作マニアは「俺ならもっと良い物を作る自信はある」
 と反論するかも、私に云わせれば自作マニアが作った素人アンプは商品の価値観がゼロでセンスもないから100%無理と断言できるし勿論音質的にも太刀打ちはできない、
 KT-88アンプを探されていましたらお墓を質屋に入れてでもこの「SV-8800SE」を購入する事をお薦めしたい、出力トランスのバィファイラ巻はウィリアムソンアンプの良さを十分に引き出して堪能できるはずだ!
自作アンプの価値観
自作アンプの価値観

 彼の製f作したアンプ類は仲間同士でも買ってくれなかった、やはり真空管アンプはいくら音が良いと本人が力説しても美観やルックス、汚い配線と半田付けが悪ければ購入意欲が湧かないのではないか、アルミの弁当箱のようなシャーシーに穴とネジだらけのアンプにはいくら音が良くてもほしいとは思わない、例えば自動車の場合は見える部分はネジの一本も見えないように考えて作ってあります。アンプも同じように表面がネジだらけのアンプでは美観以前の問題、やはり作る以上は最小限のネジ点数を少なく作らないと最終的に部品取りのジャンクアンプになってしまう、
 自作マニアはキットアンプの製作とは違い労力を伴う、シャーシーの穴加工からパーツの調達まで自分ひとりでやらなければならないのは大変であるが完成した達成感は作った人しかわからない喜びがある。
 100人のオーディオマニアがいたら自作できる人はほんの一握りの方しかいないと考えるのが正しい、昔は自作マニアが沢山いましたが年齢が高くなり他界された方が多いので少なくなったのかも、
 その点キットアンプの場合はシャーシー加工やパーツ等の調達もないから実体図を見ながら容易に製作出来るメリットはあるが初めてならいざ知らず数台も作った方なら回路図が読めて動作原理がわかるようにならないとアンプの話題も球の話も人前では語れない、是非動作原理、回路図が読めてほしい、回路図や動作原理がわかれば故障した場合発売元に頼まなくてもテスター一本あれば自分で修理ぐらいは簡単にできるようになる。
 キットアンプが上手く製作出来ない方やまともに組めない方に限って早く完成して音出ししたい焦りが先行して短時間で完成させようと潜在意識が働くので中途半端な未完成状態になる場合がほとんどでこの様な方達は時間をかけて一台のアンプを作る為の計画性がない、ギブアップしない為には回路図、実体図、取り説にたっぷり時間をかけて頭に入れ計画性を持って製作すればまず失敗はしない、また作る時は半田付けの仕方や引き回し配線、パーツの取り付けをイメージしながら丁重に製作しないと中途半端でさじを投げてしまう、私はアンプ製作の達人でもなければ師匠でもない素人のアンプ製作マニアですから人にご教授できる器もありませんが良い物を作る気持ちは皆さんと同じだと云える。
 テレビドラマでドクターXがいつも言うセリフ中で「私は失敗しないので」その気持ちで作れば上手く鳴った時は喜びと感動があるからこの事を弁えて失敗しないアンプを作って楽のしんでもらいたい、
 真空管アンプを作る楽しみは自作派もキット派もどちらも同じであるがただ一つ云えるのは真空管のオール自作派のアンプは売る時は球の価格とトランスの価値しかない、いくら本人が力説しても見栄えの悪いやぼったい自作アンプでは仲間内ではそれなりの金額で買ってくれるがオークションやショップに出した場合は二束三文になってしまう、
 やはり自作アンプもルックスの重要性は無視できないが残念ながら私も含めて商品価値やセンスに欠ける。
「俺は作る事に楽しみを感じているから売る気はない」と豪語している自作マニアもいるがこんな事書いては不謹慎ではあるが万が一自分が倒れて亡くなった時を考えれば残された家族は趣味で集めたオーディオパーツの良さがわからないからゴミになる場合が多い、生きている間に身内にこれは高く売れると伝えておくか遺言書に記載すれば家族にとっては助かるし価格的に高く売れる物を残しておけば葬儀代も少しは金銭的に楽になるはずだ、ただしレコード盤やCDはいくら名盤と云ってもハードオフ等の買取りショップに持ち込めば二束三文になる場合があるから要注意、
 その点キットアンプの場合は知名度のあるメーカーなら金銭的に苦しくなった時や亡くなって処分する場合は自作アンプとは違いそれなりの価格で売れるのが魅力と云えば魅力、このような事を書くと俺もお迎えが近いかも?
 最近長生きの秘訣の方法がわかったぞ!言いにくい話だが早く亡くなる方ほど性格も良く色んな人に好かれた方が多い、そこで一考長生きしたければ病気にも嫌われ周りにも嫌われる性格になるのが長生きの秘訣だ、大変馬鹿な事を書いてしまったがこの部分は読んでも無視して下さいね、
「俺は嫌われ者だぁ~100歳以上生きるぞ」
馬鹿な事ばかり書きましたがいよいよ本題の方に入ります。彼が残したシカゴトランスを使ったウィリアムソンアンプは日本のトランスにはない最高のサウンドを聴かせてくれたが今回はトランスと一部真空管だけ残してY下アンプの製作になります。まずは写真をご覧ください。

これがメトロ劇場で使われていたRCAアンプに内蔵されたシカゴ出力トランス、年代を感じさせるが汚すぎる!

 パターン設計から製作したプリント基板で上のボードは電源平滑用で下側のボードはCRボードになります。抵抗はすべてアーレンブラッドレーを使用

今回は予算の関係上あまりお金をかけずに作るのがコンセプトになりますがこれ程苦労して製作したことはありませんが目標は高級マニアの間では有名な○○ラボラトリーの真空管アンプにすべてを超えるのが目標ですから十分構想を練ってからスタートしました、 アンプ製作の苦労
アンプ製作の苦労

シャーシーは1.2tの鋼板を使いY下お家芸のステンレスアッパーパネルとトランスがあまりにも汚いのでトランスカバーも作りました。
1.
シャーシーは全て穴加工を自分で行い細かい部分はヤスリを使って仕上げ加工を施した、
2.
ステンレスのパネルは研磨剤を使って鏡面処理を施しましたが鏡面処理は時間と労力だけではステンレスの鏡面にはなりませんからこの部分は失敗が許されないですから大変苦労をした部分であります。
3.
内部配線に関してオール手配線を止めてCRボードをプリント基板で作成しました、又プリント基板設計はなれていますから回路図を頭に入れれば苦になりません。
4.
モノラルアンプですから電源部関係は2倍のコストがかかった、
5.
仕上げ塗装はプラモ用のMrカラーのスプレーを購入してサフェーサーを吹き付けてからペーパーで仕上げてメタリックグリーン塗装にした、最後に車用2液ウレタン塗装を吹き付けて仕上げしました、
6.
引き回しワィヤリングは同一色に統一した、モノラルの場合は2台とも同じワィヤリングをしないと音に影響を及ぼす
7.
ヒーター配線はAC点火ですが今回は真似ては困るのですがヒーター線をツィストペアせずストレート配線を行いましたが完成後のハムの影響がどれだけ出るか、
配線前のアンプ内部写真、SPターミナルの所に見えるのがDC,ACバランスボリューム、右側が電源トランスになります。

  配線及び半田付けがすべて完了、これで完成になります。

 彼のアンプをオーバーホールして再度製作しましたが今迄沢山の真空管アンプ製作の中ではトップクラスの難易度だったが今後アンプ作りは卒業したいが、まだ珍しい名球が2本あるからこれを作って最後にしたいのだけどいつもこれが最後と云いつつあれから何台作ったやら・・・・・・・・
 このアンプも大変苦労をして製作したが前回製作した91B交流点火アンプよりシャーシー構造が複雑と部品配置とワィヤリングが立体のため遥かに作りにくいアンプになった
 またトランスと球があれば出費は少ないと思っていましたら意外や意外パーツだけでも軽く10万以上かかってしまったが見えない部分の費用は予想外でした。

アンプの使用パーツと配線
アンプの使用パーツと配線

ウィリアムソンアンプに使用したパーツで抵抗はアーレンブラッドレー、カップリングコンデンサーはスプラグのブラックビューティー、真空管ソケットはオムロンの8Pinモールドタイプ、プリント基板はガラスエポキシ、電解コンデンサーは一般市販されている日本ケミカルを使いました。今回も採用しましたスプラグのブラックビューティーはマニア間では最高と評価されています。
このコンデンサーをチェッカーでチェックしましたが容量抜け電流漏れはまったくありませんでした、(ブラックビューティーの購入先はバンテック)です。
引き回しワィヤリングは3次元立体方式を採用したが動作上の問題が生じた為ワィヤリングを変更して組み直したが今回も納得のいく作品ではなかったのが少し残念だ、
ウィリアムソンアンプの音の評価
ウィリアムソンアンプの音の評価

 使用真空管は初段が日立の6SN7ドライバー管はマツダの6SN7です。ここの部分に拘りを持ったマニアはRCA,シルバニアなどを使いますが国産球でもヴィンテージ菅は海外の球にも負けず劣らず良い音がします。出力管はドイツMAZDAのEL34、整流管はザイレックスのGZ32を使いました、(ザイレックスは英国の真空管商社)ザイレックスの場合は実際どこのメーカー球か不明ですが多分球の形状を見ますとSTCと思われます。
 RCAの5U4GBも使いましたが主役のEL34が脇役になるのと直熱整流管ですと+Bの電圧の立ち上がりが早いので球を痛める恐れがあり精神衛生上テストだけで終わりましたのとバランスを考えて却下、アンプの製作日数は構想から45日、約一ヶ月半を要しました、
 出力は3結アンプですから約14.3W、残留雑音は0,8mmVで負帰還量は15dBです。早速音の評価ですが私1人の評価だと自分が作ったアンプですから悪いとは書けず又最高と書けば自惚れになりますからあえて自己評価はしません。
 またヒーター配線の基本はツィストペアで行いますが今回はストレートでの配線にしましたがハムノイズはほとんど影響なくトランスのリッケージフラックスの問題もトランスカバーを付けた結果心配したハムノイズは生じなかった、この辺はPPアンプの良さかも知れません。
 今回はヴィンテージマニアで大変仲の良い西山氏に同席して頂いて率直な意見を云って頂きました。西山氏にもこのサウンドは一度も聴かせていませんからどんな評価されるのか、
 西山氏曰くバッハのバイオリンを聴くと「木の香りがプンプン漂う一度聴くと忘れられないサウンド」また「小池のじぃちゃんの音」と同じと大変うれしい評価を頂きました、
シカゴトランスを使ったウィリアムソンEL34アンプは期待以上の鳴り方には安心した、
 数日後の日曜日にはJBLのエベレストを上手く料理してクラシックを見事なサウンドを鳴らしている豊橋のオーディオクラブに所属する高橋氏がPCオーディオを引っ提げて我が家に道場破り、早速PCオーディオサウンドをセッティングして披露して頂いたがアナログやCDの音とは違う空気感を伴った臨場感のあるPCオーディオサウンドには私も参りましたの一言、高橋氏がお薦めしているPCオーディオを私も金銭的に余裕が出来次第導入する予定だ、
 高橋氏が言うにはこのサウンドは他のマニアには聴かせてはならないサウンドでオーディオマニアが聴けばレッドカードを付き付けられカルチャーショックを受けるからと忠告、褒めているのか貶しているのかはわかりませんが高橋氏のサウンド評価は二重丸と太鼓判を押して頂きました。
 今回はウィリアムソンアンプの実力を見せつけられたがシカゴトランスの実力が十分発揮されたのではと思う、シカゴトランスはウェスタンエレクトリックのOEMメーカーだけはある。自作マニアが国産のトランスで作ったEL34アンプだとこんな音はまずは出てこないと思う、
オーディオクラブの会員でオーディオを知り尽くした高橋氏が持ち込んだPCオーディオ、こんな音を聴かされたら言葉が出ません。

恥ずかしながらY下サウンドをYou-Tubeにアップしました。
今回EL34を使ったウィリアムソンアンプの音を一度聴いて下さい。
次回予告
次回予告

次回は歴史的名器で究極のユニット、まずは下の写真をご覧ください。名前は云えませんが一度は聴いてみたいスピーカーの一つ、オーディオマニアなら知らない人はまずいない名器中の名器でY下マジックを使って鳴らしてみます。
乞うご期待下さい!

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