スピーカー設計製作ログ
ダブルスパイラル・バックロードホーンの製作

令和2年2月24日

 今回も、オリジナル設計のバックロードホーン(以下B.H.)の製作記です。使用したスピーカーは、例によってヤフオクで買った中古品のFOSTEX 6N-FE88ES。B.H.本体部の外観は長岡鉄男氏のスーパーフラミンゴの様でありながら、実はホーンの音道形状が3層構造のスパイラルホーンである。ホーンの音道長は約2.7m、ホーンの開口面積は280㎠で振動板実効面積の9.9倍。Φ8cmユニットでありながらウッドベースやパイプオルガンの低音も十分に聴けるし、ボーカルが生々しくてとてもいい。

 使用したスピーカユニットの6N-FE88ESは、購入時の写真を撮り忘れたが、ジャンク品扱いでコーン紙が汚れていたので、以前も紹介したクラフト社のフラフト染料(黒)を使って黒色に染めた。センターキャップが片方だけ少し潰れていて柔らかくなっていたので、凹みを少し持ち上げ、薄めた木工ボンドをほんの少し染み込ませて補強した。後はスピーカーグリルをつければ、センターキャップの凹みやコーン紙の色むらは、ほとんど分からないのでこれで良しとした。

 さて、本題のB.H.の設計を決める手順だが、これは何種類か設計してみて、その中から良さそうなものを選ぶことにした。

第1案。

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 これは、長岡鉄男氏のD-1(16cm用)やD-3(Φ20cm用)を参考にした形状で、一般的なConical Cascade Constant Width B.H.である。180°折り曲げが2回しかないのがメリット。しかし、音道を長く取ろうとすると高さを不安定なほど高くしなければいけないし、バッフル面のホーン開口部の見た目が少しのっぺりした感じがする。

 

第2案。

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 これは、第1案を少し改良し音道を少し長くし、ホーン開口部のデザインを変更したものだが、音道は未だ2.06m止まり。

 

第3案。

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 これは、長岡鉄男氏のD-37(Φ16cm用)やD-57(Φ20cm用)を参考にしたもので、第2案より更に音道が長く取れるし、バッフル面のホーン開口部の格好も良い。180°折り曲げも3回しかないので、音も良さそうな気がする。しかし、従来からあるオーソドックスな形の設計なのでオリジナリティー性には欠ける。

 

第4案。

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 これは、スロート付近の音道が扁平にならない様にしたもので、音道形状もオリジナリティー性があると思う。ホーンの音道長は2.5mある。180°折り曲げも3回にとどまっている。しかし、バッフル面がのっぺりした感じになってしまうのが欠点。組み立てはちょっと難しそうだ。このホーンの音道形状は長岡鉄男氏の鳥形B.H.(スワンやフラミンゴ)を参考にしたのだが、ここで、にわかに鳥型B.H.に強い興味が湧いてきた。
 同時に、生形三郎氏の逆スパイラル型B.H.がヒントになって、逆スパイラル+順スパイラルの、3層構造ダブルスパイラル型で行けるような気がしてきた。

 

第5案。

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 これが、最終的にたどり着いたダブルスパイラルB.H.である。外観は鳥形であるが、しかし、音道が逆スパイラル+順スパイラルの、3層構造ダブルスパイラルであることが最大の特徴。
 取り敢えずNautilous(オウムガイ)と命名した。

最初に述べた様に、形が小さい割にホーンの音道長は約2.7mある。ホーンの開口面積は280㎠で、振動板実効面積の9.9倍。

この構造は、必ずしも鳥形にする必要はないと思うので、同じ3層構造ダブルスパイラルB.H.でも、色々なバリエーションが考えられると思う。

次は、Nautilous 8bの設計仕様データ
青字のセルに入力して黒字部分は自動計算にしている。

 次はホーンの断面積の広がり具合を示す図。
 ホーン広がり係数は、スロート付近は小さ目に抑えて開口部付近に近付くにしたがってより広がり係数が大きくなるようにして、全体があまり大きくならない様に注意した。
 表計算の部分は煩雑になるので省略する。

 次はNautilous 8bの板取りデータ。
 15㎜厚の3×6合板ほぼ2枚でできる。端子板として5.5㎜厚のシナベニア材が少々必要。コーナー材も別途必要だが、コーナー材は特に無くても良いかも知れない。コーナー材は安価なラワン合板で良いが、両端を45°にカットするのが少し面倒。部品点数はコーナー部品を含めると合計64個にもなる。

 次は、板取り図。
 3×6合板を効率よく使うと、ほぼ2枚で1セット製作できる。ただし、端子板材(t=5.5、50×80)とコーナー材は別途に少しだけ調達する必要がある

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 次は組み立て手順。
 組み立ては簡単ではなかった。何しろ部品点数が多いので、計画をしっかり立てて組んで行かないと、組み立てられなくなる恐れがある。手順は色々と考えられるが、今回の手順は以下の通りとした。3層構造なので位置合わせに気を使った。どうしてもぴたりとは合いにくいので、必要な所は少し大きめのサイズにしておいて後でカンナ掛け、サンドペーパー掛けを行った。
 最初の材料カット時に、①と㉑の寸法を間違えたので、止む無く①と㉑は中央で2分割の部品とした。
そのため、目隠しとして後面の中央にも前面と同じ様な飾り板㊷を追加して張り付けて体裁を整えた。

次は、製作風景。
空気室の内面には上下左右と後面に吸音材としてカーペット材を貼っている。

 
接着剤はたっぷりと付ける。

 

完成品の写真。

 少し安価で比較的軽いシナランバーコア材を使用したので重量は軽くて10.6Kg。ちょっと軽すぎると思ったので鉄アレイを背中に載せている。この製作時までは、近くではシナランバーコアしか手に入らなかったので仕方なく使用したが、やはりシナベニアを使った方が良いと思う。ヘッド部などの角はR9mmでトリマーを掛けた。仕上げは水性ウレタンニスをハケ塗り2回。水性ウレタンニスはすぐに乾くので素人には大変扱いやすい。本当は1度塗った後にサンドペーパーを掛けて仕上げ塗りするとツルツルピカピカに仕上がるのだが少し面倒くさかったのでやらなかった。気が向いたらサンドペーパーを掛けてもう一度塗ればよいと思う。

 自己評価。
 音に関しては、最初、中音域のホーン鳴りが気になったので、これまでの経験から空気室が少し大き過ぎると判断し、約100㏄の木片を入れて、クロスオーバー周波数を200Hz付近から230Hz付近まで上げて対策した。
 このスピーカーは音像の定位が良く、ボーカルが生々しくて気持ちがいい。高域が伸びていてスーパーツィーターは要らないし、低域の音量バランスも悪くない。Φ8cmユニットながらウッドベースやパイプオルガンの低音も結構いい感じで鳴る。
 板材を接着した時の内部歪応力がまだ残っていると思うので、エージングで更に音が改善することを期待したいが、今のままの音でも十分満足できる。

 今後の予定。
 次は、買い溜めてあるFE108Super(これも例によってジャンク扱い品)用、FE108ESⅡ(これも中古品)用、6N-FE208S(これは未使用品)用のB.H.を、ゆっくりと製作する予定。最近知り合った工務店の社長さんがシナベニアを調達してくれるそうなので楽しみにしている。

以上で完結

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