スピーカー設計製作ログ
ブルーノ・ワルター好き

2021/3/21

 2週間前に無類のワルター好きの友人から、77枚入りCDボックスの発売情報を聞き、その数日後にはネットショップでそのCDボックスをポチっていました。

 ワルター好きの友人の感化を受け、私もワルターのLPを何十枚かと、39枚入りCDボックス、6枚入りモーツァルトCDボックスなどを既に持っていました。しかし、ネットでソニー・クラシカルの情報を見ると、このCDボックスにはコロンビアに残したワルターの全ての音源が、その録音された順番に収められており、それぞれのCDは発売当時のLPジャケットの縮小版の紙ケースに入れられているとのこと。これはもう妻から何と言われようが買うしかないと思いました。

 しかも、そのソニー・クラシカルの情報の中には、

「今回のボックスでは、日本のソニー・ミュージックとの共同プロジェクトとして、このステレオ録音すべてをオリジナル・アナログ・マスターから新しくリミックスおよびリマスターし、これまでのLPやCDで親しんでいた腰高の響きではなく、ワルターが志向したヨーロッパ風の重心の低い、落ち着いた格調高いサウンドをおそらく初めてお聴きいただくことができるようになりました。」


 と書いてあり、期待も高まりました。

 常々、ワルター好きの友人との話題のひとつは、ワルターのステレオ録音はクリアで繊細なのは良いけれど、高域レベルが強いものが多く、「シャリシャリ音が残念だね」、と話していたので、この「リミックス・リマスター」には大いに期待しました。

 注文後3日目に商品が届き、すぐに聴き始めて、ステレオ録音のCDについても、ざっと聴きましたが、そのサウンドはどうかと言うと、高域レベルは以前より下がり改善された様には感じられるものの、シャリシャリ感が拭い去りきれていないCDが多くある様に感じました。

 これはまあ仕方がないので、高域レベルの強いCDについては、これまで通り、通常LINE STRAIGHTで使っているコントロールアンプのTREBLEをマイナス数dB、BASSをプラス数dBで聴く様にしました。

 愚考するに、この高域レベルの強いCDは、ステレオ録音の主な場所になったハリウッドの退役軍人ホールの響き(このホールは木造で音響には定評はある様です)と、ステレオ録音専門に集められた少人数編成のコロンビア響のサウンドがある程度大きく影響しているのではないかと思います。その根拠は、一番初めにステレオ録音されたマーラーの復活は他とは違ってバランスの良いサウンドで、特に曲の終盤に出てくるパイプオルガンの極低音は実に豊かに響き渡るので、ちょっと不思議に思って調べてみると、この復活の録音場所は、それ以降のハリウッドの退役軍人ホールではなくて、ニューヨークのカーネギーホール、演奏もそれ以降のコロンビア響ではなくて、(たぶん大編成の)ニューヨークフィルと書いてあるからです。

 日頃から、使用するホールの音響は大変重要だと感じています。TVのクラシック音楽館の放送や、FMのN響演奏会の放送で、どちらも行ったことはありませんが、NHKホールの響きに比べてサントリーホールの響きが格段に良いことが実にはっきりと聴こえてくるのと同じ様に、こちらも勿論行ったことのない、ハリウッドの退役軍人ホールの音響よりカーネギーホールの音響が格段に良いことが、この録音からはっきり聴こえてくるのです。

 このワルターのための録音場所の選定と、コロンビア響の発足のいきさつは、ワルターが晩年心臓発作で倒れた後、その回復後の体調を考慮して、ワルターの自宅のあるビバリーヒルズの近くで録音をするために、退役軍人ホールは木造であるという事から選ばれたらしい場所であり、コロンビア響はそこでのワルターの録音専門に集められたオケだったということですから、これはワルターという指揮者の偉大さが分かるエピソードだと思います。今の時代ではちょっと考えられませんよね。

 蛇足ですが、私はこのワルターの復活の録音サウンドがお気に入りなので、設計製作した大型バックロードホーン等の自作スピーカーの極低音の評価用リファレンスに使っています。

 この77枚入りCDボックスは全体としてのサウンドは以前のCDより落ち着いた響きになった様に思います。しかしその反面、少しだけ活き活きした響きが後退したCDもあるのかなあと感じます。まあ、ノイズを減らしたり、サウンドバランスを良くしたりするのはうまく出来るのでしょうが、悪く言えば、原音をいじくるわけですから、デメリットも少しは出てくるのかも知れません。

 私の新CDボックスセットに対するサウンド改善の期待が大き過ぎたので、“少し残念だった”こと、の関連話題を長々と書きましたが、総合的に見ると、付属の豪華なブックレットもあるので、ワルター・ファンにとっては嬉しいCDボックスであり、大事なコレクションがまた増えて大満足しています。


 最後に、コロンビアにあったブルーノ・ワルターの素晴らしい演奏録音の全てを詰め込んだこのCDボックスを、できれば多くの方にも聴いていただきたいと思います。


 ちなみに録音時期はステレオ化時代の前後の1941年から1961年にまたがっており少し古いのですが、1957年以降のステレオ録音では、マイクの本数を多くして(本数は忘れましたが)各楽器の近くに置き、個々の楽器の音がはっきりと聞き取れる録音にしたと聞いており、ステレオ初期の録音としてはかなり良質な音です。

 但し前述の通り、シャリシャリ音気味のCDも多いので、できればトーンコントロールは必要かと。。。。

 もちろん使うアンプはSUNVALLAY。これできまり!


一話完結


Bruno Walter The Complete Columbian Album Collection
77CD

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Bruno Walter The Edition
39CD

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Bruno Walter Conducts Mozart
6CD

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