LEGO SPEAKER 第10報

≪第9報 第11報≫

LEGOスピーカーの製作 第10報

写真1 LEGOスピーカー 18号機「ミニJSP」
写真1
LEGOスピーカー 18号機「ミニJSP」

1. これまでのあらすじ (前編)

 本報告も今回で10報となった。いつもご覧いただきありがとうございます。
今回はこれまでの経過を2回に分けて振り返り、現状の追加報告などもまとめてみたい。また、マニア用語が分かりにくいというご指摘もいただいたので、出来るだけ解説してゆく。マニアの方、解説がうるさくてすみません。

1-1 1号機「スリムバックロードホーン」

 2007年の5月から始まったLEGOスピーカーの製作であるが、記念すべき1号機はみごとに大失敗であった。複雑な構造のバックロードホーン(スピーカーユニットの背面から放射される音を長いラッパ形状のホーンで導き有効に利用する低音増強システム)もLEGOならば簡単に実現できると考え、8cmフルレンジユニットでひょろ長いシステムを造ったのだが、今思えば細すぎ、複雑すぎで、気流抵抗が大きくまったく実用的でない。しかし、この製作で基本的なスピーカーユニットの固定方法、補強の方法などを確立した。残念ながら保存の歴史的価値なしということで解体。5号機の素材となる。

1-2 2号機「バックロードホーン」

 それならば大型化だ!ということで4000個以上のLEGOを奢って製作した大型モデルが2号機である。しかし、これもうまくいかなかった。スカスカの低音。ホーンロードがかからない。しばらくはアンプのイコライザーで低音増強して無理やり鳴らしていたが、いやになり3号機の共鳴管方式に進んだ。この2号機では多くの事を学んだ。ガッチリと強化して太い音道を造ればうまくいくと考えていた。が、現実は甘くはなかった。
 ホーンとは空気の音響インピーダンス(抵抗)中継装置であり、水の流れならば下流に行くほど太くして行けばこぼれることは無いが、音圧は細くすることはもちろん、いきなり太くすると反射を起こしてうまく伝わらない。この仲立ちをするのがホーン構造なのである。ラッパのような形状は閉ざされたエンクロージャ(ハコのこと)と外界とをなめらかに繋ぐ働きをする。したがってなめらかな形状が重要であり、LEGOの造形性が活かせる部分である。ところが、出口の形状にばかりこだわり、入口を忘れていた。太ければ良いだろうと考えていたのである。入口に設ける細長い構造であるスロートがとても重要であるということに気がついたのはずいぶん後のことである(ベテランの方には何をいまさらであろうが)。スロートとは単にストレートな細長いパイプ形状なのだが、高速道路の加速レーンのような働きをするものと考えている。これが無いとホーンに音圧が入って行かないのである。ホーンの駆動力とも言える。
 現在の2号機は40cmに及ぶ十分なスロート構造を内部に追加し、スピーカーユニットも当初のポリプロピレンコーンの10cmユニットからバックロードホーン専用の巨大マグネット強力ユニットに載せ変え、スピーカーユニットの装着されるヘッドユニットも気密性を高めるためLEGOブロック間の隙間に木工用ボンド(柔軟さが必要なので木工用が良い)を充填し、底面には厚さ3cmの御影石ベース、1.25kgのダンベルウエイトぶら下げといった万全の強化を行った結果、バリバリとバックロードホーンらしい豪快な音で鳴っている。
 本機は将来のミュージアム展示に備え、永久保存品である。

1-3 3号機「3チューブ共鳴管」

 2号機の失敗(当時)から新たな方式を模索した。実際のバックロードホーンの動作は複雑で、共鳴管としても動作している。共鳴管とは長さに相当する波長で共鳴させて音圧を生じ、低音増強するシステムである。両端を開放した共鳴管としても動作するバックロードホーンは波長の2分の1で共鳴する。音の波長は100Hzで約3.4mだから100Hzで共鳴して低音増強するには1.7m必要である。このため2号機は2.0mのホーンを設け、85Hzの増強をねらった。ところが、共鳴管の一端を閉じて片開放とすると4分の1波長で共鳴する。つまり小型化が可能なのである。85cmのパイプ形状で100Hzを増強できる。共鳴管は曲げたり複雑な構造とすると気流抵抗が生じて効率が落ちるので、ストレート構造が最適であるが、この程度の長さならばストレートも現実的である。
 ということで、3号機は3種類の長さの片開放チューブを持った共鳴管方式実験機として製作した。結果は大成功。低音が出てきた。しかしながら反省点も多かった。まず、3チューブは特定の共鳴音を嫌い分散共鳴をねらったのだが、実際はいちばん短く鳴りやすいチューブしか共鳴しなかった。8cmのユニットで欲張りすぎた。また、出口を上部に設けたのでスピーカーユニットの直接放射音と干渉する問題もあった。低音の出口は底面に持っていった方が床面の増強も期待できて有利であった。
 十分な成果が得られたので実験機3号機は解体。後に6号機の素材となる。

1-4 4号機「テーパード共鳴管」

 3号機の成果から大型の共鳴管方式4号機を設計した。当初、欲を出して長さの異なる2チューブを設けた高さ1.7mの巨大システムを造り上げたが、さすがに50Hz程度の重低音の共鳴は10cmユニットでは不可能で、最終的には効率を優先して全高1.3mのシングルチューブとした。また、底面の出口がテーパーして広がっているのはホーン効果も持たせるためである。実効長1.2mで70Hz程度の共鳴である。スピーカーユニットは当初ペーパーコーンの10cmであったが、ウッドコーンの高級品に載せ変え、実に柔らかい音のするシステムになった。柔らかさに秀でた300Bという真空管を用いたアンプと組み合わせ、現在も癒し系の音を楽しんでいる。この作品も保存品認定である。

1-5 5号機「小型テーパード共鳴管 ⇒ 小型ダブルスパイラルホーン」

 4号機のダウンサイズ版として、解体した1号機のLEGOパーツで製作した小型の共鳴管システムが5号機である。全高を1.0mにして8cmのポリプロピレンコーンのユニットを装着し、90Hz程度の共鳴をねらった。このモデルも結果は良かったがスケールは4号機にはかなわず、小型ユニットで定位感(ボーカルがそこに居るような実在感)は良いのだが、しばらく休止していた。その後、スパイラルホーン(螺旋形状の構造を持つホーン)の製作技術が確立し、共鳴管の内部に2重螺旋のダブルスパイラル構造を仕込んで、2号機で得たスロート(20cm装備)のノウハウも投入し、スリムなスパイラルホーンシステムに生まれ変わった。小型で定位感も良く、十分な低音の出るシステムとして現在も稼動中である。

1-6 6号機「スリム密閉型 ⇒ スリムスパイラルホーン」

 最も大きく変化したシステムかも知れない。当初6号機は密閉型の挑戦システムであった。活性炭(冷蔵庫の消臭剤)が吸音材として使えるという情報を得て、隙間の多いLEGOでは実現不可能と考えていた密閉型を製作したものである。密閉型とはエンクロージャを密閉にしてスピーカーユニットの背面の音圧を閉じ込めてしまう方式である。スピーカーユニットはコーンの振動で音を出すが、前面と背面で逆位相(押し引きが逆)なので干渉すると打ち消しあってしまう。低音域でこの作用が大きいので背面音圧を適切に処理しないと低音が出ないのである。この一手法である密閉型は、話は単純だが現実には閉じ込められた強大な背面音圧がユニットに影響して歪みを増やしたり、エンクロージャが振動したりと問題も多い。そこで、あえて薄い素材でエンクロージャを構成して、楽器のように鳴らしてエンクロージャ全体で低音を放射する方式と理解している。ただ、ホーンシステムや共鳴管のような明らかな音圧の出口がスピーカーユニット以外にはないので、これらの干渉が無く直接放射音をダイレクトに聴ける良さがある。フルレンジユニットとは1個のスピーカーユニットで全帯域を再生し、点音源(1点から音が出るので定位がとても良い)の良さがあるはずであるが、他方式では低音域の出口が問題ではないかと考える。
 吸音材の効果も重要である。通常のフェルトやグラスウールなどの綿構造では高域の吸音(まさつ熱に変換される)は効率良いが低音域までは効かない(巨大な体積が必要となる)のでエンクロージャを比較的大型にしなければならない点も問題であった。そこで活性炭である。活性炭は表面積が極めて大きく、低音の音圧を効率良く吸音する・・・というが半信半疑であった。早速、ヘッドユニットに押し込んで実験したところ確かに効果が得られた。以後、活性炭ファンとなった。
 こうして製作した密閉型6号機であったが、当初のチタンコーン8cmのユニットから2号機から外した10cmユニットに載せ変えたが音質は芳しくなかった。
 その後、スパイラル構造を挿入するだけの簡易スパイラルホーン製造法が確立し、スパイラルホーン方式に改めた。大型のスパイラルホーンとなり低音は充実したが、最近まであまり聴いていなかった。どうも音がもやもやするのである。理由がはっきり分からなかったのだが、のっぽの構造でヘッドヘビーな割に底面が弱くぐらぐらしていた。これでは良い音がするわけがない。と気が付き、底面にウエイトを付加して固めたところ音が一変した。見違える変化である。やはり基本が大切であった。

写真2 LEGOスピーカー ラインアップ
写真2
LEGOスピーカー ラインアップ

1-7 7号機「小型バスレフ ⇒ 小型スパイラルド・バスレフ」

 バスレフ(バスレフレックス)方式とはエンクロージャ内部の空気のバネ性とエンクロージャの一部に設けたバスレフポート(筒状の開口、開口部分はバスレフポートと言うが筒構造はバスレフダクトと言う)のダクト内部の空気の質量で共振現象を生じさせ、低音を増強する方式である。ビール瓶を吹くとボーッと鳴るが、これと同じ原理である。面白いのは共振現象を起こす周波数においてはダクトの空気が逆位相で振動することである。つまり、スピーカーユニットの背面から放射された逆位相の音圧がバスレフポートで再度逆位相となり、再び同位相に戻る(このため位相反転型バスレフとも呼ばれる)。この結果、スピーカーユニットからの直接放射音と同じ位相で低音増強が可能となる。なお、設計の詳細に関しては後述する。
 バスレフ方式は共振に波長を利用しないので小型に構成できるメリットがある。このため市販の小型スピーカーシステムの多くがこの方式を採用している。
 ・・・こんなにすばらしい方式なのに7号機まで採用しなかったのは何故か?
 ・・・デメリットもあるのである(あくまで私感ではあるが)。

(1)共振現象を利用した低音増強なので音にクセがある。
 効果を高めようとして共振効率を上げるほどこのクセが強くなる。音のクセとは?

(2)低音が遅れる。
 共振が開始されるまでタイムラグがあるので低音が遅れて出る感がある(エンジン のターボチャージャーのような感じ)。

(3)特定の低音域のみが増強される。
 共振の鋭さをQ値というが、共振効率を高めてQ値を上げると共振周波数のみの低音が増強され、何を聴いても(どんな楽器でも)同じ低音の音がするようになる。 要は歪むのである。

(4)バスレフポートの配置の問題
 これは他の方式でも存在する問題であるが、特に小型のエンクロージャではポート からの高域漏れ音との干渉が問題になる。共振周波数以外では逆位相(実際は音道長に伴った位相遅れがある)の音が出てくる。共振していなので音圧は弱いが、影響はある。したがってポートの配置が重要なのである。この問題を嫌って背面にポートを設けた市販スピーカーも多いが根本的解決にはなっていない。

 しかし、小型化のメリットは大きい。大型のシステムから豊かな低音が出るのはアタリマエ。小型システムから低音をひねり出してこそ技術である。と、いうことでバスレフシステムを製作した。
 7号機は普通の箱型ではつまらないのでピラミッド型のテーパーデザインとして内部定在波の影響を減らした(おかげで考古学者が喜びそうなへんてこなデザインになってしまった)。
 平行した壁面があると反射し合って定在波が生じる。人間の耳には2kHzから4kHzの中高域がいちばんうるさく感じるが、半波長で生じる定在波は17cmの平行壁面で1kHzなので、10cmくらいの小型スピーカーの内面では最もいやな定在波が生じ、うるさくなるのである。
 結果。バスレフ方式の効果はすごい。8cmのスピーカーユニットから2号機や4号機の巨大システムで苦労した低音がらくらく出てくる。まあ、これはもはや普通の技術なのだが新鮮な体験であった。
 外に持ち出せる。外に出しても恥ずかしくないLEGOスピーカーが初めて完成した。このスピーカーシステムがきっかけで本報告が始まったことは以前記したとおりである。
 もちろん、本機は永久保存認定品。(もっとも、スパイラルド・バスレフの実験のために改造しちゃったが・・・)

1-8 8号機「コンパクトバスレフ」

 7号機がうまく行ったので、さらにコンパクトなバスレフシステムを製作した。この8号機は第2報にて詳細な製作手順を紹介したが、正直言って面白い作品ではなかった。単に小さいだけで低音も弱く、その後のスパイラルホーン群に世代交代することになる。
ただし、このとき設計したヘッドユニットは8cmフルレンジの標準ヘッドユニットとして以降、君臨している。

1-9 9号機「コンパクト・スパイラルホーン」

 LEGOでスピーカーを造り始めてから、ぜひとも挑戦したい方式があった。それが、このスパイラルホーンである。スパイラル構造はバックロードホーンの理想と考えていた。なめらかで気流抵抗が少なく、長い音道をコンパクトにたためる。音道長が内周と外周で幅があるのでホーン効果が分散し、共鳴効果が抑えられクセが少ない。なにより、木工では実現困難で、LEGOならでわの作品ができる。
 「プロジェクト・バベル」と呼称して設計に着手したのはLEGOでスピーカーを造り始めてから1年経過した2008年6月のことであった。
 設計、製作は困難を極めたが、何とか完成した9号機はチタンコーンの8cm標準ヘッドユニットを搭載してすばらしいパフォーマンスを示した。共振、共鳴音のしない早くて軽い低音。私の求めていた音に一歩近づいた。本機はスパイラルホーンの優秀性を実証し、その後、LEGOスピーカーはスパイラルだらけになって行くのである。
 当然、9号機も保存品であるが、最近ヘッドユニット内部にぎりぎりサイズの5cmのスロートを追加して、より低音の量感がアップした。地道な改善は現在も続いている。

1-10 10号機「生物デザインコンセプト」

 この10号機には大変な労力とコストをかけた。これまで誰も造ったことがない(だろう?)複雑な巻貝構造のスパイラルホーンに挑戦したのである。
 10号機の実現に当たって、まず組立方法を一新した。これまでの上に向かった積み上げ方式から前後に組み立てる方式にした。また、使用するLEGOブロックも16mmX32mmで厚さ10mmの基本ブロックから、プレートブロックと呼ぶ厚さ3.3mmのものに変更し、密度を3倍にして強度を向上した。スピーカーユニットには9cmのグラスファイバーコーンを用意し、万全を期した。
 ところが・・・結果はLEGOスピーカー最大の失敗作となってしまった。
プレートブロックで製作した大型のフタ構造を持つエンクロージャは強度が足りなかった。構造も複雑すぎてなめらかなホーンには程遠かった。なによりデザインがカッコ良くなかった。スピーカーシステムは聴く前に観るものである。デザインの重要性を痛感した。
 早々に解体された10号機の大量のプレートパーツはその後、究極のLEGOスピーカー12号機に生まれ変わる・・・。

 はひー! 簡単に振り返ってみるつもりであったが、六千字を超えてしまった。文字ばかりで読み難くてすみません。以後次回の後編に続く・・・。

2. 18号機「ミニJSP」

 前回報告したJSP方式17号機はバスレフ方式の問題点を改善し、すばらしい音で鳴っている。しかし、8cmユニットのスピーカーシステムとしては大きすぎる。細長いダックスフントのようなデザインも使いにくい。今回はJSP方式の小型化にトライする。

2-1 バスレフ方式の設計

 1-7項で解説したバスレフ方式であるが、さらに説明を続ける。
バスレフ方式は小型スピーカーシステムに有利と書いたが、自由に設計できるわけではない。動作原理からしてバスレフダクトの共振周波数はエンクロージャの容積とダクトの断面積とダクト長の影響を受ける。
ダクトの共振周波数fdの計算式は
  fd=160√( πr2 / Vc(L+r) )
  Vcはエンクロージャの実効容積、Lはダクトの長さ、rはダクトの等価半径
であり、共振周波数を下げるには容積を大きく(つまりエンクロージャを大きく)、ダクトの断面積を小さく、ダクト長を長くする必要がある。したがって、より小型のシステムを造ろうとするとダクトをより細く長くする必要があり、これは気流抵抗が増えてバスレフの効率が低下する方向なので低音増強効果が落ちることになる。では、共振周波数はどこに設定すれば良いか?もちろん、低音域を伸ばしたいのだから低く設定したいが、やりすぎるとスピーカーユニットが駆動できなくなるし、直接放射音との帯域の間にギャップが生じて違和感が出る。だいたい使用するスピーカーユニットの最低共振周波数(再生限界周波数)foより少し低いくらいが適切ではないかと思う。

2-2 JSP方式の小型化

 JSP方式はバスレフのポートをスピーカーユニットと幾何学的対称配置にして干渉の問題を均一化し、また、細長いエンクロージャでバスレフダクトの放射効率を改善した方式であると理解している。このためダクトが4本必要でダクトの総断面積が増加し、適切な共振周波数を得るにはかなり長いダクトが必要になる。また、容積を確保するためにも正方形のバッフル(前面のこと)のエンクロージャ奥行きを伸ばす必要がある。
 JSPさんがホームページで発表されているようにバスレフポートを上下2本にしたバーティカルツイン配置にすればダクトの総断面積を半分にでき、また、バッフル形状を正方形ではなく一般のスピーカーシステムのような長方形にできて都合が良い。
 18号機はJSP方式のバスレフダクトを上下2本にして小型化を図ろう。

2-3 設計

18号機設計資料
図1
18号機設計資料

 まず、目標とするエンクロージャサイズを決めてしまう。標準ヘッドユニットは約10cmのキューブだが、この2倍、96mmX100mmX192mmのハコを造りこの上下にバスレフダクトを配した構造としよう。いつもはまず造ってしまい、LEGOの容易な組み換え性能を活かして調整を繰り返すが、今回はJSPさんのホームページにダクトの計算プログラムがあったので周到に計算して設計した。
 図1をご覧いただきたい。LEGOの場合、サイズがピッチで決まっているので容積計算もしやすい(サイズの自由度は低い)。標準ヘッドユニットの2倍のサイズでは内容積は約0.8リットルとなるが、実効容積:Vcはスピーカーユニットのマグネットや吸音材の活性炭を入れるので25%ほど減少すると考え0.6リットルとした。外形サイズが決まっているので、ダクトの長さ:Lは160mmである。これで残りの変数、ダクトの断面積:Bを調整してダクト共振周波数:Fdを計算する。
 ダクトにプレートブロック1枚並べて開口形状を16mmX6.6mmとすると、Fdが76Hzと計算されちょうど良さそうだ。この長さのダクトとしてはちょっと細すぎる感じではあるが、上下に2本あるし、まあ良いだろう。さらにプレートブロックを1枚追加してダクトを16mmX3.3mmにするとFdを50Hzにできるが、これはやりすぎだろう。細すぎて効率も低下しそうだ。ダクトを2本にしたおかげで、このディメンジョンで実現できそうだ。意外とバスレフ方式も絶妙なバランスで成り立っていると感じる。

2-4 製作過程

 写真3に全部品を示す。今回も簡単な構成である。
写真4はベースとなるスピーカーユニットモジュール。標準ヘッドユニットを改造して製作した。組立方向はバーティカルタイプ(上下組立)なので、モジュールが巨大化してしまった。ターミナルも組み付け済みである。スピーカーユニットには低音域の駆動力に定評の8cmマグネシウムコーンユニット、DIY AUDIO SA/F80AMGを選択した。といっても新たに購入したのではなく第7報で報告したスパイラルド・バスレフ第2実験機から外してきた。何度目の登場だろう。
 ボトムプレート(写真5)、ただの穴あき板。トッププレート(写真6)、上面なので化粧タイルを貼る。

写真3 構成部品
写真3
構成部品
写真4 ベースモジュール
写真4
ベースモジュール
写真5 ボトムプレート
写真5
ボトムプレート
写真6 トッププレート
写真6
トッププレート

 写真7はボトムダクト、写真8はトップダクトである。ボトムダクトにはレッグ構造を設ける。LEGOの場合ダクトの上面(ブロック裏面)が凸凹だが、気にしない気にしない。
 では組み立てよう。まず、トッププレートにトップダクトを取り付ける(写真9)。
同様に、ボトムプレートにボトムダクトを付ける(写真10)。

写真7 ボトムダクト
写真7
ボトムダクト
写真8 トップダクト
写真8
トップダクト
写真9 トップダクトの組立
写真9
トップダクトの組立
写真10 ボトムダクトの組立
写真10
ボトムダクトの組立

 完成したトップとボトムのモジュール(写真11)。次に、ベースモジュールにボトムモジュールを組み付ける(写真12)。
  補強柱と吸音材(活性炭1袋)を入れる(写真13)。エンクロージャの内部は写真14の様になる。

写真11 トップ、ボトムモジュール
写真11
トップ、ボトムモジュール
写真12 ボトムの取付
写真12
ボトムの取付
写真13 補強柱、吸音材の挿入
写真13
補強柱、吸音材の挿入
写真14 内部の様子
写真14
内部の様子

 最後にトップモジュールを取り付ける(写真15)。簡単に完成(写真16)。手のひらに乗るミニサイズのJSP方式スピーカーである。(でもずしりと重い)

写真15 トップの取付
写真15
トップの取付
写真16 18号機
写真16
18号機

2-5 試聴

 試聴して驚いた(写真17)。サイズからは想像できない低音の量感がある。それでいて17号機でも感じたことだが、JSP方式はバスレフのクセが少ない。ポートの対称配置の効果が出ている。低音の遅れ感、遊離感が少ないのである。あたかも大口径のエアウーハーを上下に配したコアキシャル(同軸)ユニットの様である。細長いダクトなので心配したが十分な効果が感じられる。これまでに製作したミニスピーカーシステムのなかではダントツの出来である。
もちろんバスレフ方式の音はしている。共振音の付加である。しかし、このサイズでこの低音を得るには他の方法は無いだろう。ターミナルを横に持ってきたのは使いにくいが、JSP方式では奥行が長くなり、背面の構造が重要なのでこの位置にした。
 今回はめずらしく調整がまったく不要であった。入念に設計したおかげである。

写真17 18号機 試聴の様子
写真17
18号機 試聴の様子

3.次回予告

 次回は久々の大作、シンメトリック・ダブルスパイラルホーン19号機の製作である (写真18、19)。ご期待いただきたい。(目下苦戦中)

写真18 製作中の19号機
写真18
製作中の19号機
写真19 製作中の19号機
写真19
製作中の19号機

第9報LEGOスピーカーの製作第11報

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