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LEGO SPEAKER 第39報 ≪第38報 第40報≫ |
LEGOスピーカーの製作 第39報

エアサス・バスレフ方式研究弐号機 49号機
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1. エアサス・バスレフ方式の検証 |
49号機はエアサス・バスレフ方式の大型化を図る。10cmフルレンジユニットを搭載したスピーカーシステムの検討である。
構造は図1に示すシンプルなバスレフ方式とする。実効内容積約2.6リットルで、ダクト長を134mmと長めにして、共振周波数は60Hzに低く設定した。
もちろん音を聴きながら長さを短くも調整できるが、できるだけ低い音までの再生を狙いたい。ソフトボールは4個挿入できる。より顕著な効果を期待したい。
ボールの交換、気圧調整などで開口が必要なので、リアパネルにメンテナンスリッドを設ける。ここにバスレフポートを付けてリアバスレフとしたのは、開口面積を広げてボールの交換を容易にするためである。バスレフダクトは底面を利用した内寸32×16mmサイズで48号機の2倍である。
本機もブルーとイエローのカラーリングを採用。実験機の印なのだ。
<49号機 基本仕様>
・ 形式:バスレフ方式スピーカーシステム
・ 方式:エアサス・バスレフ方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ 使用ユニット:FOSTEX FF105WK 10cmペーパーコーンフルレンジ
・ 外形寸法:W128mm H224mm D185.6mm(ターミナル部除く)
・ 実効内容積:約2.6リットル
・ バスレフダクト長:13.4cm
・ バスレフ共振周波数:60?
・ 内蔵ボール:CLB-402WY 4個 (互換:PS-2289)
・ システムインピーダンス:8?
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2. 製作過程 |
実は49号機のベースモデルはスピーカー技術の基礎研究用に製作した機体である。
このスピーカーシステムは
小型バスレフ方式 → 内容積増加 → タンデムドライブ方式 → パッシブラジエーター方式 と変遷を繰り返し、低音増強効果の検証を行った実験機なのだ。
(詳細は私のFacebookページ「LEGO Speakers」に詳しいので興味のある方はご覧ください。
https://www.facebook.com/legospeakers )
本機はこのモデルを流用したので製作は容易であった。今回、正規モデルシリーズに昇格である。
写真2に49号機の全部品を示す。シンプルな構造なので部品は少ない。8個のソフトボールが特徴点だ。
使用するスピーカーユニット(写真3)はFOSTEXのFF105WKである。10cmフルレンジのコーン紙は備長炭パウダーを配合して灰色になっている。特殊加工されたアルミ合金のセンターキャップが高音の特性を改善する。マグネットも大きく頼もしい感じで、音に期待が持てるユニットである。foは十分に低く75? となっている。
写真4はフロントベゼルである。49号機のエンブレムの付いた、ただの板。
フレーム(写真5)は16段(153.6mm)の枠構造。底面に薄いゴム足を付けた。
リアパネルにはターミナルと、メンテナンス用の大きな穴がある(写真6)。弱くなる板形状なので部分的にプレートブロック4枚を重ねている。
メンテナンスリッド(写真7)にはバスレフダクトが付いている。
ダクトは1ピッチ(8mm)で造ってあるが、強度には問題ない。底面にコの字型のフタをした形状のダクトだが、内部で振動する問題も無い様だ。
リッドの接合部を周囲の1ピッチに制限して開閉を容易にしている。
製作は、まずはフレームにフロントベゼルを取り付ける。(写真8、9)
次にスピーカーユニットを取り付ける。(写真10、11)
内部にソフトボールを4個挿入するが、写真12に示すようにランダムに押し込む形にした。バスレフダクトに干渉しないように注意する必要がある。
リアパネルを配線して取り付ける。(写真13、14)
写真15のようにメンテナンスリッドの開口からソフトボールを4個挿入して、メンテナンスリッドを閉じる。(写真16)
組み立ての完了した49号機の外観を写真17、18に示す。
前回の48号機よりは大きいが、一般的にはミニスピーカーシステムのサイズである。
10cmフルレンジのエアサス・バスレフの音はどうだろうか? 期待が膨らむ。
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3.試聴結果 |
その結果はすばらしいものであった。(写真19)
本機は先に述べたように通常のバスレフ方式、タンデムドライブ方式、パッシブラジエーター方式を同サイズ、同ユニットで経験している。そのどれよりも明らかに良い音がするのだ。また、このサイズでこれほどの低音をひねり出したことはない。シンプルなバスレフ方式でここまでダイナミックな音が出せるとはオドロキである。いや、シンプルだからこそ良いのかもしれない。高音域も歪感が少なく、やはりマイルドな音がする。良質なフルレンジスピーカーが実力を出している感じだ。
しかし、空気入れの作業がなんともめんどうである。そこで、48号機と同様にスポンジボールを試してみた。やはり、効果はソフトボールに若干譲るが、低音改善は十分に感じることができる。今後の製作では実用性からこのスポンジボールを採用したいと思う。
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4. 考察 |
改めてエアサス・バスレフ方式の効果について考えてみる。
エンクロージャ内に納めたボールの空気バネ効果(実際はスポンジバネだが)で、コンパクトなバスレフ方式の問題点を緩和することが目的である。
コンパクトバスレフ方式の問題点とは?
① 内容積が小さいため十分に空気バネが働かずバスレフ効率が低い
② 共振周波数を下げるためにダクトを細く長くしなければならず、さらに効率が低下する
③ スピーカーユニットに大きな背圧が加わり歪が増加する
③ バスレフダクトからスピーカーユニット背面の歪んだ高音が放射されやすいといったことが考えられる。
これに対してエアサス・バスレフ方式の効果とは?
① 少ない内容積の空気バネ効果を改善してバスレフ効率を向上する
② 十分な空気バネ効果があるので、細長いダクトでも強力に駆動できる
③ ボールの弾性変形はノンリニア(非直線)であり、初動変形は容易であるためアタック時の背圧増加を抑える
④ さらに大振幅時はノンリニアでの背圧増加となるが、空気の剛体としての影響を緩和して高調波歪を抑える(奇数次歪みの抑制)
⑤ 純粋に吸音体としての作用もあり、ダクトからの高音漏洩を低減する
⑥ エンクロージャ内に押し込まれたボールは内面にテンションを与え、筐体振動抑制も期待できる
これらの効果で、エアサス・バスレフ方式では以下の音質改善が図られると考えている。
・アタック音のダイナミズムの改善
・持続低音のレスポンス向上
・中高音の歪み低減
・ダクトや筐体からの不要放射を抑制
次にエアサス・バスレフ方式のデメリットについても考える。
何事も良いことばかりではない。問題点を挙げてみると。
① バスレフダクトの共振周波数がよくわからない
内容積が確実に減少するので、おそらく共振周波数は上昇するはずだが、内部空気のコンプライアンスも増加するので単純な上昇ではないだろう。
直径7cmのボールの体積は約0.18リットルなので4個で0.72リットルとなる。
カラで設計したバスレフ共振周波数は60Hzであるが、これが計算では72Hzまで上昇する可能性がある。
② ノンリニア負荷の影響で独特の歪が出る
内部のボールの弾性変形による背圧の変化がリニアでないため、クセのある歪が生じる恐れがある。
この影響はバスレフダクトから放射される低音だけでなく、スピーカーユニットの動作にも関与し、音質に与える影響が懸念される。
③ ソフトボールは空気抜けが生じるので使えない
エアサスの効果が大きいのはソフトボールであるが、安定性に問題があるので使用できない。
代替としてスポンジボールを用いているので効果は減少するが、上記②の問題は緩和され、バランスは良いのかも知れない。
(より良いボールの物色は継続して行っている)
①の問題点はダクトの調整が容易なので正確な動作周波数がわからなくても最適(好み)に調整すれば良いのだ。とりあえず本機はダクト長13.4cmにしてみたが良い感じである。
音質への影響は引き続き評価が必要だが、今のところ不満は少ない。もっとも新方式の陶酔のバイアスがかかっているのでしばらくは正しい評価は困難であろう。長い目で確認したい。
新たに計画したボール吸音材システム「エアサス・バスレフ」方式は大変効果的で有用であると感じる。しばらくは、この方式の製作が続きそうである。
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5. 次回作予告 |
次回はいよいよ記念の50号機である。
エアサス・バスレフ方式の本格採用モデルとして高性能2ウェイスピーカーシステムを計画している。ご期待ください。
夜中にリスニングルームで、50号機のパーツを黙々と造る。
静かに音楽を聴きながら、グラス傾けながら・・・
部屋を汚さない、
手が汚れない、
騒音が出ない、
においがしない、
ケガしない。
LEGOスピーカーだからできることである。
(2015.8.16)

50号機製作中