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LEGO SPEAKER 番外編 ≪第12報 第13報≫ |
LEGOスピーカーの製作 番外編

巨大ギター!?・・・ではないスピーカーが小さいのだ
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1.nanoスピーカーを造ろう |
友人からnanoブロックの存在を教えてもらった。ホビーブロックの双璧、ダイヤブロックのメーカーが出した新製品である。
写真2をご覧いただきたい。面積が比較に置いたLEGOブロックの4分の1しかない。
ポッチのピッチは4mm、2×4の基本ブロックで8mm×16mmしかない。厚さはLEGOのプレートブロックとほぼ同じ5mm(組み立てると3mm)。
なんというカワイさ。これはクリエータ心が刺激される。写真のようなガラスのビンに入って販売している。2×2のブロックが48個、2×4のブロックが32個入っている。種類は少ないが、同色のブロックが容易に手に入るのもうれしいポイント。
この小さなブロックで大きなスピーカーを造るのはナンセンス。思いっきり小さく造りたい。携帯用の極小発音素子を使って吹けば飛ぶようなスピーカーも造れるだろう。とはいえ、ここで発表するからには楽しめる音でないと意味がない。
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2.スピーカーユニットの選択 |
以前から気になっていたスピーカーユニットがあった。AURA SOUND のNSW1-205-8Aである。なんと1インチ(25mm)の振動板。オーディオ用としては世界最小のフルレンジユニットであろう。チタンの逆ドームコーンにネオジウムのマグネット。
foは220Hzとこのサイズにしては立派なスペック。小面積のコーンで低音を出すには振幅で稼ぐしかないが、最大振幅は9mmとたいしたものである。
写真3にNSW1-205-8Aの外観を示す。比較のミニカーと比べればその小ささが分かるだろう。・・・ってミニカーじゃ比較にならない?
ところが・・・問題はこのデザイン。このユニットこんな小さなフランジでどうやって取り付けるの?固定があまりに困難なのでこれまで使えなかったのである。
nanoブロックは大きさがLEGOブロックの半分ということはそれだけ細かな形状が造れると言う事である。よーし、この固定に挑戦しよう。
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3.設計しよう |
このツィーターみたいなスピーカーユニット、本格的な構成で音質は中~高域は問題ないだろう。ポイントはどうやって低音を引き出すかである。foが220Hzということは本当の低音再生は無理で、低音感の再現と言うことになる。方式はバスレフしかないな。
理論的にはバスレフダクトの共振周波数はエンクロージャが極小でも低くは設計できる。
でも本当に効くのだろうか?
まず、図1のような超小型エンクロージャを考えてみた。ダクトの共振周波数は欲張らずに336Hzである。しかしさすがにこれは小さすぎる。小型LEGOスピーカー15号機の製作経験から、このような小型エンクロージャでは強力な背圧のためにビビリが生じて問題になる。活性炭吸音材を詰め込まなければならないが、この内容積では不可能だ。
そこで、15号機をダウンサイズしたような図2に示すオーソドックスなバスレフエンクロージャを設計した。オーソドックスといっても手乗りサイズである。
nanoブロックは1本あたり2×2が176個、2×4が127個必要になる。左右の2本で先ほどのガラスビンが8個必要だな。他に展示ベース用というプレートブロック(10×10)を上下のフタ用に6枚用意した。
<nanoスピーカー 基本仕様>
・方式:2.5cmフルレンジ バスレフ
・組立方法:バーティカルタイプ(垂直組立)
・使用ユニット:AURA SOUND NSW1-205-8A(チタンコーン)
・外形寸法:W56mm H87mm D55mm
・エンクロージャ容積:0.039リットル(吸音材除く)
・ポートのダクト長:30mm(面積4mm×8mm)
・ポートの共振周波数:260Hz(設計値)
・吸音材:活性炭
エンクロージャの構造は15号機と同様なスマートな箱型で、上部にスピーカーユニットが付き、下部のボックスに垂直に設置したバスレフダクトと吸音材スペースがある。吸音材にはいつもの活性炭を用いるが、以前も記したが活性炭の挿入の効果は自身の体積の1.5倍くらいに相当する容積倍増になると感じている。したがって、先の設計値よりも若干ポートの共振周波数は低くなると思う。
さて、問題のスピーカーユニットの取り付けであるが、さすがに固定のネジ止めは諦めよう。両面テープで固定するかな?エンクロージャ開口は上下方向はちょうど良いサイズになりそう。しかし、左右に0.5mmくらいの隙間が開いてしまう。この部分の処理が今回の腕の見せ所である。
写真4に示すオーブンクレイという粘土を用意した。本来はオーブンで焼いて固形化する粘土であるが、そのままでも適度な固さで充填にちょうど良い。この粘土と加工したブロックで隙間を埋めよう。ターミナルの取り付けも諦め、ケーブル直出しとするがこの穴埋めにも粘土を用いる。ケーブルにはいつもはバナナプラグを使うが、今回はアンプのワンタッチターミナルに対応した写真4に示すピン型の端子を付けた。吸音材の活性炭は冷蔵庫用では大きすぎて使えない。炊飯器に入れて使うという小袋を用意したが、これでも半分にしないと入らない。本当に小さいなあ。自分で設計しておいてなんだが、こんなものでマトモな音が出せるのか、不安たらたら~って感じ。
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4.組み立て |
nanoスピーカーの構成パーツを写真5に示す。右下の8個の小型パーツは隙間を埋める加工ブロックである。
個々のパーツを説明する。
写真6は下部ボックスである。こうして写真で見るといつものLEGOブロックの様であるが、スケールから40mm四方と異様に小さいことが分かる。このボックスには背面の隅にバスレフダクトが作り込まれている。ダクトの長さはブロック10段分で30mm、背面のポート開口は8mm×9mmというサイズである。
設計図にはなかったが底面に足を設けた。滑り止めのウレタンシールは穴あけパンチで作った。(もちろんゴミの方)
上部ボックスはスピーカーユニット固定の関係から3ピースとなる。まずはパーツA(写真7)。スピーカーユニットと干渉する部分とケーブルを出す穴のポッチを切取る。
パーツB(写真8)には先ほどの加工ブロックと粘土で隙間を埋める処理をする。
パーツC(写真9)は天板である。クリアブルーを配してみた。
組み立てその1(写真10)。下部ボックスに吸音材を入れる。ポートの開口もこんなに小さい。
組み立てその2(写真11)。パーツAを取り付ける。強力なスポンジタイプの両面テープをスピーカーユニット部分に貼る。干渉部分が増えたのでポッチをさらに切取った。
スピーカーユニットの取り付け(写真12)。写真では分かりにくいが、パーツBに隙間を埋めるための加工パーツを付けてある。粘土は自由に変形できてダンピングにも効果的。黒色で目立たなくて良い。いつもはスピーカーケーブルにはファストン端子を用いるが、今回はスペースが無いのでじかにハンダ付けした。
補強柱を仕込んでパーツCの天板を付けて出来上がり(写真13)。ケーブル穴から空気が漏れないように粘土を充填する。スピーカーユニットの固定穴もそのままではみっともないので足に使ったウレタンシールで目隠しした。
完成したnanoスピーカー(写真14)。なんともかわいい。もちろん歴代最小サイズ。
課題であった左右の隙間も上手く埋められた。軽すぎてケーブルの重さで倒れやすいのが欠点である。比較するとLEGO最小だった15号機が大きく見える(写真15)。
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5.試聴 |
ワクワクの試聴である。どんな音がするんだろう。SV-16Kが大型アンプに見える(写真16)。
・・・アハハハ。結構聴けるワ。コレ。
ちゃんと低音感がある。音量を上げていくと破綻するが小音量では聴ける音である。サイズを考えたらたいしたものだ。このスピーカーユニットの優秀性が認識できた。
もっと小型のアンプが似合うかもしれないが、能率が低いのでこういった超小型スピーカーこそしっかりとしたアンプと組み合わせたい。
アンプを変えてみよう。TU-870が巨大アンプに見える(写真17)。本当に愉快なスピーカーだ。オーディオの本流とはベクトルが異なるが、こういった楽しみ方も好きなんだ。
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6.その後・・・ |
スマートでないデザインと天板のクリアブルーが目立ちすぎで気になった。音質にも欲が出てきた。早速グレードアップしてしまった(写真18)。
(1)ガラスビンを2個さらに追加してトップを4段(12mm)延長し、上部にも活性炭吸音材を追加した。
(2)天板を黒にしてクリアブルーはアクセントにした。
(3)スピーカーユニットの固定は両面テープを止めて接着にした。
(4)底面にウエイトとして厚さ3mmの銅プレートを付加した。
以上の改良により音質が向上した。スピーカーユニットの固定に両面テープは問題であった。ちょっと邪道であるが(取り外せない)強固に接着してしまった。これで中高域がクリアになった。内容積の増大によってバスレフの共振周波数が低くなり低音感が増した。吸音材の増加もエンクロージャのダンピング効果があり音質向上に効いている。
この音はもはやお遊びではない。立派に今もBGMスピーカーとして鳴っている。しばらくはサブシステムに君臨しそうである。

改良型nanoスピーカー