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LEGO SPEAKER 第30報 ≪第29報 第31報≫ |
LEGOスピーカーの製作 第30報

40号機記念バックロードホーンシステム
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1. ついに40号機! |
記念すべき40号機はどうするか? ずっと考えていた。
方式はもちろんバックロードホーンである。コンセプトは?
一般的なスピーカーシステムは四角い箱型をしている。これは設置のしやすさ、使いやすさもあるが、エンクロージャを生産する上で箱型が作りやすい(コストがかからない)からであろう。これまでの38号機、39号機も四角い箱型であった。しかし、私はLEGOで造るのだ。本来、LEGOブロックの自由な造形性を考えれば箱型である必要などない。
40号機は金管楽器をイメージした折りたたみホーンを搭載したニューデザインモデルを想定した。使用するスピーカーユニットは10cmフルレンジとして、38号機よりも音道の太さを増加して、より低音域の充実を図る。バックロードホーンらしいパワフルな低音域の再生に期待したい。
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2.構造設計 |
LEGOブロックは自由な造形性があるが、残念ながら曲面は造れない。金管楽器のパイプ構造は階段状にブロックを積み上げて再現しなければならない。この場合、通常の9.6mm厚さのブロックでは造形しにくい。1ポッチ8mmの形状変化に9.6mmの厚さでは問題だ。さらに、階段状に組む時は1列(8mm)しかブロックが接合しないので強度が足りなくなる。以前製作した階段状構造を持った23号機(第15報)では強度不足となったので26号機(第18報)はこの経験から階段状構造を2重にして強度を得たが、ブロックの総数がかさみ、内容積が少なくなるという欠点もあった。そこで、今回は厚さ3.2mmのプレートブロックで階段状のホーン構造を造ることにした。プレートブロックではなめらかな形状変化が造形でき、薄いので1ポッチ列の接合でも十分な強度が得られる。さらに9.6mmブロックの3倍の密度となるので、重さも増加して音響的な性能向上も期待できる。
大量のプレートブロックが必要となるが、この調達には12号機(第6報)を解体して再利用することにした。12号機は2008年11月発表の当時としては最新の技術「スパイラルドバスレフ」を用いた10cmフルレンジコンパクトモデルであるが、現在となってはこの単なるダンプドバスレフの音は低音不足で満足できない。使用していたスピーカーユニットはパイオニアの高級10cmフルレンジ復刻ユニットPE-101Aである。これで40号機製作のためのプレートブロック約5,000個と優秀なスピーカーユニットを用意できた。
早速構造図の図1を描いた。実は計画を練っているときも、とっても楽しかったりする。
10cmフルレンジユニットのコンパクトなバックロードホーンで、効率を稼ぐため3段フォールディングの比較的ストレートなホーンとしている。ホーンの屈曲は少ないほうが気流抵抗は減って効率が良いのだ。できれば180度ターンではなく90度ターンにしたいのだが、その場合はスパイラル構造となり、どうもまとまりが悪い。38号機よりも1まわり大型にしてコンスタントワイズのつぶれた音道ではなく、角形に近い音道とした。図中の緑字表記が音道の幅ピッチ数で、8倍するとmm値になる。屈曲点はできるだけなめらかな音道となるようにプレートブロックの積み方を工夫した。本当はもっと音道を長くしたいのだが、奥行きで音道長を得るこのデザインでは1.2mが限界であろう。すでに435mmもあり、音道をこれ以上長くするには奥行きがさらに必要で、どんどん不恰好になってしまう。
階段状のホーン構造となる水色の部分は3.2mm厚さのプレートブロックで造り、複雑な構造を強度高く実現する。後部のシンプルな音道部分は9.6mmブロック(青色)で造る。
バックキャビティ容積は約1リットル確保し、音道の開口面積比は7倍。スロート断面積は20.5cm2あり、これは38号機の1.3倍である。
異形なデザインではあるが、図2の前面デザインは比較的普通。幅160mm、高さ320mmのサイズ的にはコンパクトスピーカーだが、かつての2号機ほどの大型ではないが、LEGOスピーカーとしては使用するブロックも大量で大型モデルになる。外観は異形ではあるが、寸法的には常識的なバックロードホーンなのだ。A-A’断面図を見ると音道がほぼ角形にて増加してゆくことがわかる。
ホーンの断面積の変化グラフを図3に示す。比較的なめらかなホーン形状であることがわかるが、この形状が低音域の放射効率を左右する。美しい変化率で長く、太いことが望ましい。ホーンの開口面積は約140cm2で、10cmフルレンジユニットの振動板面積の2倍以上あり(15cmウーハー程度)、さらに、スピーカーユニットの直接放射音よりもホーンの方が低音域の放射効率は高いと考えられる。
使用するスピーカーユニットには12号機からPE-101Aを持ってくるが、駆動力が不足した場合はスピーカーユニットを交換しよう。
<40号機 基本仕様>(設計時)
・ 形式:異形バックロードホーンシステム
・ 方式:バックロードホーン方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ エンクロージャ方式:3段フォールディング水平ホーンタイプ
・ 使用ユニット:パイオニア 10cmフルレンジ復刻ユニットPE-101A
・ 外形寸法:W160mm H320mm D435mm
・ ホーン音道長:約1.2m
・ スロート断面積:20.5cm2
・ ホーン開口面積:143.4cm2(開口面積比 7倍)
・ バックキャビティ容積:約1リットル
・ ユニット最低共振周波数:80Hz
・ システムインピーダンス:8Ω
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3. 部品製作 |
40号機の全部品を写真2に示す。今回は大型モデルなので部品数もとても多い。この製作には多くの時間を要した。(ああ手が痛い・・・)
写真3はスピーカーユニットモジュールである。12号機の解体からこのモジュールだけが再利用される。パイオニアの名機復刻ユニットPE-101Aは裏面も美しい。ペーパーコーンの優秀な10cmフルレンジユニットで現在ではプレミア品かもしれない。
マグネットも比較的大きく頼もしい。パイオニアの推奨エンクロージャ製作例にはバックロードホーンもあったので性能も期待できるが、仕様によると最低共振周波数foが80Hzと若干高いのとQ値が0.5と大きなところが気になる点ではある。
スピーカーユニットを固定する枠構造はプレートブロック6段と表面のタイルブロックで22.4mmの厚さであり、図1にはこのモジュールを薄青色で表記した。スピーカーユニットはM4ボルト&ダブルナットで強固に固定されており、12号機の製作から5年以上を経過しているが緩みはまったくなかった。
LEGOブロックは2段ではすぐに外れるが、ブロック壁のように互いに積むと3段では安定した構造となる。そこで、3段のプレートブロックを重ねて1部品とする。プレートブロックの厚さは3.2mmなので3段でちょうど普通のブロックと同じ厚さ9.6mmになる。
40号機はCTスライス像のようなリング構造を積み重ねて造るスタック工法とした。これで複雑な構造も容易に製作することができるのだ。これらの部品はすべて微妙に形が異なっている・・・しかし、部品数が多すぎて見分けがつかなくなりそうだ。
写真4にフロントパネルを構成する3つのリング部品を示す。左からリング#1、#2、#3と番号を付ける。この番号は図1の上部に記したスタック番号に対応している。
リング#1には「40th Anniversary」のバッチを#3には40号機のエンブレムを付けた。今回は記念機らしくモスグリーンのタイルにゴールドのレタリングで高級感を出した。
ここからの部品紹介は同形で少々退屈である。写真5にリング#4~#6を示す。形状が微妙に異なることがわかるだろうか?良く見ると前面から見えるホーン部分にはタイルブロックが付いていおり、残りの1列ポッチでリングどうしが接合されるのだが個々のリング部品そのものに強度があるので強固な構造となる。
写真6はリング#7~#9である。ここから中央の音道が折り返して4本となっていることがわかる。スタック構造は音道の変化が良くわかる部品となる。
写真7はリング#10~12#である。上部のバックキャビティ部分が狭くなってゆく様子がわかる。
写真8にリング#13~#15を示す。リング#14はバックキャビティのリアパネルとなっており、ターミナルを取り付ける穴あきプレートブロックが使用されている。このリングが音道スロートの開始点でもありスロートの形状が見える。
写真9にリング#16~#18を示す。バックキャビティが終わり、高さが低くなった。音道幅も変化している様子がわかる。
写真10がリング#19~#21である。#21で下部の音道が折り返すことがわかる。また、この断面では折り返したスロート部分が同一面積であることもわかる。
写真11にリング#22~#24を示す。これでプレートブロックによるリング構造は終わり。#24ではホーン折り返しのリアパネルにつながる構造が見える。
写真12に下部ホーンの折り返し部分を塞ぐリアパネルを示す。前方から見える部分にはきちんとタイルパネルが貼ってある。
写真13はスロートの折り返し部分を塞ぐテールエンドパネルである。プレートブロック2段による階段状になっている。
写真14、15にスロートとなるテールパイプを示す。この部品は形状がシンプルなので9.6mm厚さのブロックで製作するが、日の字構造で強度は高い。テールパイプには写真14のテールパイプAと写真15のテールパイプBがあり、テールパイプAには下部に補強ステーとの接続部、また、本体との接合を容易にするための工夫がある。これはタイルパネルで一部のポッチを制限することで接合に必要な力を減らすもので、メンテナンス時にも容易な分解、組み立てを可能にする。
テールパイプをA、B2つに分けたのはBを外したショートヴァージョンも計画していたからなのだが、実際は性能的な理由からショートヴァージョンは実現しなかった。
写真16に小物部品、補強ステーと音道の一部を調整するパーツを示す。補強ステーはテールパイプが折れないように下から支える部品である。
写真17にその他の部品として接続ケーブル、ターミナル、インシュレーター、吸音材のフェルトシールを示す。最終的にはこのフェルトシールはスピーカーユニットのマグネットと干渉したので外すことになった。バックロードホーンのバックキャビティには吸音材はなくても問題はないだろう。
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4. 組み立て過程 |
まずは各リング部品の組み合わせから始める。リング#1~#3を組み合わせた部品を写真18に示す。強度の高いフロントパネルである。裏面には音道の折り返し部分を調整するブロックが付いている。
写真19~21のパネル部品はそれぞれリング#4~#6、リング#7~#9、リング#10~#12を組み合わせたものである。これらのパネル部品はプレートブロック9段の28.8mm厚さであり、ひねり強度も高い。
写真22はリング#13~#15を組み合わせた部品で、ターミナルパネルとなる。ターミナルはケーブル接続時に力がかかるので特に強固に組み立てる必要があるが、このスタック工法では十分な強度が得られた。
写真23~25はそれぞれリング#16~#18、リング#19~#21、リング#22~#24を組み合わせたものである。写真25のパネル#22~#24は最終音道折り返し部の階段構造となる。
写真26はテールパイプAとBの組み合わせ。テールパイプAは10段、Bは8段なのでこの部品だけで18段の173mmの長さがある。
テールエンドパネルをテールパイプに付ける。(写真27)。
本体部分の組み立てに入る。
パネル#4~#6とパネル#7~#9を組み合わせる。(写真28)
フロントパネルを先に取り付けないのは前面が平らなパネル#4~#6を下にすることで容易な接合作業が行えるからである。組み立ての順序も大切である。
後側にパネル#10~#12を取り付ける。(写真29)
これで#4~#12の27段、86.4mmの構造体ができ上がる。今回の40号機では先にプレートブロック3段のリングを造り、これを3枚組み合わせて各パネルを製作し、さらにこれらを積み上げていくスタック工法を行っているが、この面倒な作業としたのは複雑な構造を間違えなく組み立てるための工夫なのである。
ターミナルパネルの組み立てを写真30に示す。ここで配線ケーブルも取り付けてしまう。配線ケーブルにはターミナル接続用のM4端子とスピーカーユニット接続用のギボシ端子が付けてある。
続いてターミナルパネルの取り付けを写真31に示す。
パネル#16~#18の取り付けを写真32に、パネル#19~#21の取り付けを写真33に示す。パネル#19~#21にはホーン下部に音道調整部品を忘れずに装着する。
写真34にパネル#22~#24の取り付けを示す。前面を上にしてフロントパネルを取り付ける。(写真35)
組み上がったこの本体の音道構造はとても複雑な造形である。
リアパネルと補強ステーを取り付けて(写真36)エンクロージャ本体部分の組み立て完了である。ここまでは、すべてプレートブロックで構成されており、密度が高く、重く、強度のある構造体ができた。
最後にテールパイプを取り付けて特異な形状のエンクロージャとなる。(写真37)
このテールパイプはメンテナンス、収納、運搬時にも容易に分解、接合ができる。
写真38のようにバックキャビティに吸音シートを入れた。このフェルトシートは接着テープ付きだが、あとから外せるように軽く付けてある。インシュレーターも貼り付けた。今回はシルバータイプを選んだので高級感がある。
スピーカーユニットモジュールを装着してすべての組み立ての完了である。(写真39)
40号機の外観を写真40~42に示す。金管楽器をイメージしたホーン造形がわかる。LEGOでなければ造れない独自のデザインなのだ。
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5. 試聴と改良 |
早速聴いて見よう。(写真43)
ところが・・・ホーンロードあんまりがかからない! ショボボ~ン。
今回も一筋縄では行かないなあ。
予想はしていたことだがPE-101Aはこの細長いバックロードホーンには向かないスピーカーユニットのようである。そこで、前回の39号機のテストで評価が高かったPARC Audio DCU-F121Aに入れ替えた。スピーカーユニットモジュールは規格化しているので交換は容易である。(写真44)
結果はなかなか良好。低音域の迫力が出てきた。意匠的にもこのスピーカーユニットは白いマグネシウムコーンとゴールドのセンターキャップに高級感がありカッコ良い。ひとまず40号機はDCU-F121Aの装着で完成とした。改めて外観を写真45、46に示す。また、バッジとエンブレム部分を写真47に示す。
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6. さらなる改良 |
完成したと思った40号機であるが、どうもまだ満足できない。このスピーカーシステムはもっとポテンシャルが高いはずだ。私のバックロードホーンに対する音のイメージは攻撃的なほどの生々しさである。
スピーカーユニットの相性かもしれない。現在装着しているDCU-F121Aはマグネットも強力なはずであるが、逆に大きすぎてバックキャビティに余裕がないことが気になっていた。バックキャビティ内のマグネットによる気流抵抗はホーン駆動の妨げとなり問題ではないかと思う。バックロードホーンにはでかいマグネット!と考え、PE-101AやDCU-F121Aを装着したが、この90mmφのマグネットはバックキャビティの断面積92cm2に対して69%もの面積比である。これでは隙間を通って背圧が抜けるしかない。(写真48)
そこで、22号機(第14報)からTangBand W4-1320SJを持ってきた。
このスピーカーユニットはネオジウムマグネットでコンパクトだが強力。サイズは52mmφなので面積比は23%で済む。竹繊維入りのペーパーコーンの音質も気にいっているモデルである。Q値も0.35と十分に低い。(写真49)
スピーカーユニット交換の結果は・・・低音域のレスポンスがさらに改善した。(写真50)
だが、まだ物足りない。欲求にはきりが無い?・・・いや目標が高いのである。
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7. 40号機Version2の製作 |
40号機にはパワフルな迫力ある低音域を期待した。そこで、フルレンジユニットの搭載をやめてウーハーを入れてみることにする。独立型のトゥイーターを載せた2ウェイシステム、Version2への改造である。2ウェイ化し、フルレンジユニットのメリットが失われることは残念であるが、トゥイーターの追加はそれを補って余りある。トゥイーターの美しい高音域も魅力なのだ。
10cmのウーハーユニットとしてはMarkAudioのCHBW-70を選択した。(写真51)
39号機で使用したフルレンジユニットCHR-70と同じフレームを使ったウーハーユニットである。マグネットはそれほど大きくなく気流抵抗の問題はない。(70mmφで41%)
ウーハーではマグネットが大きいほど良いと言うものではないようだ。Q値は0.49であるが、foは66Hzと低く期待が持てる。
40号機にはバッフルパネルがなく、トゥイーターを取り付けるスペースがない。そこでエンクロージャに載せるタイプのHiVi Researchのティアドロップ型トゥイーターTN28を選択した。(写真52)
このTN28は28mm径のソフトドームトゥイーターで、バッフルの回折音の影響がまったくなく、音場感に優れたすばらしいユニットである。主な仕様は
・ 振動板材質:ファブリックソフトドーム
・ マグネット:ネオジウム
・ インピーダンス:6Ω
・ 出力音圧レベル:90dB
・ 周波数帯域:2k~20kHz
となっている。アルミニウム筐体のボディもゴールドリングのアクセントがカッコ良い。
トゥイーターを搭載するにあたり、装着方法を検討した。図4に示すようにバックキャビティ上部にマウントを設けて固定することにしたが、ケーブルの配線は、このトゥイーターユニットがケーブル直出しなのでマウント内を通して、リア面に独立にターミナルを設けて配線する。
写真53にトゥイーターモジュールを示す。トゥイーターユニットの固定ネジ穴が、ちょうどLEGOブロック3段分の穴あきブロックのピッチと一致したのでしっかりと固定されている。また、ターミナルのバナナプラグ穴には誤配線防止のキャップを付けている。
40号機を2ウェイ化するにあたって、デバイディングネットワークの検討が必要である。当初はコンデンサーとアッテネーターのみのシンプルな回路を試した。ウーハーをダイレクトにアンプと接続することでダイナミックな再現を狙ったのだが、その分カットオフ周波数が7.5kHzと高くなり、せっかくのトゥイーターが脇役になってしまった。さらに、ウーハーの中高音域にはやはり歪が感じられたため、一般的な6dB/octのデバイディングネットワークとした。
回路は図5に示すように、クロスオーバー周波数を4kHzとした逆相接続である。アッテネーターは2つのスピーカーユニットの出力音圧レベル差に少しトゥイーターを抑えた-7.5dBとして、抵抗値は8.2Ωにした。トゥイーター回路に挿入するコンデンサーは2.7uF、ウーハー回路に挿入するインダクタンスは0.47mHとしている。この値はウーハーのインピーダンス8Ωに対して、インピーダンスの周波数特性から読み取った4kHz付近のインピーダンス値12Ωで補正している。また、インダクタンスにはいつものPARC Audio製を用いるが、取り付けは図4に示すようにバックキャビティ内部にスロートを塞がないように、吊り下げる形で固定した。これによる内容積の減少は10%程度で問題はない。
写真54のトゥイーターのコンデンサーとアッテネーター抵抗器はウーハーとのターミナル間に接続する。これで交換調整も容易だ。
完成した40号機Version2の外観を写真55~58に示す。
10cmのウーハーユニットとして選択したCHBW-70はマグネットがさして強力ではないので多少の心配もあった。駆動力、制動力が弱いと低音が振動性になるからだが、試聴の結果はまったく問題なかった。さすがはウーハーで、再生音域がずっと下がって強調感のない良質な低音域となった。低音域のダイナミズムはインダクタンスの挿入でもあまり影響はないようだ。トゥイーターの追加により中高音域もクリアになり、さらにクオリティが上がった。
この音が欲しかったんだ。これならば40号機として納得できる。
バックロードホーンらしいパワフルな低音域、ヨーロッパのスピーカーシステムにもよく見られる独立型トゥイーターによる音場感のあるクリアな高音域。このサイズでこれだけの迫力がある音が得られるシステムは私の作品でははじめてである。
Version2はかなりサイバーなデザインに変貌したが、最新の自作スピーカーシステムで聴く音楽は至福の時間である。
参考に表1に今回使用したスピーカーユニットの主要仕様をまとめる。
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8. ついに第30報! |
いつもこのリポートをご覧いただき、ありがとうございます。
2008年6月6日から記載いただいた本リポートも今回で第30報となった。間に番外編も4報あるので、全部で34報になる。
造るだけならばただの遊びかもしれないが、記録をまとめて報告すれば成果になる。
今回も紆余曲折があり、本報に記載はないが、実際にはホーンロードがかからないため、スロートを細くして見たり、バックキャビティを小さくしたり、さらに別のスピーカーユニットを載せたりとさまざまな実験をくりかえした。Version2のデバイディングネットワークも種々な変更・調整と試聴を行った。この過程こそが貴重な経験なのだ。当初の予定通りには行かずいつも設計変更を伴うが、だからこそ面白いのだ。隘路事項があるからこそ研究的価値があるのである。
LEGOという素材を用いたスピーカーシステムの製作は大変多くの勉強の機会を私に与えてくれた。それも容易に、である。
過去の作品を振り返って見るとあまりの未熟さに恥かしくなる。よくもまあこんなものを発表したなあ。しかし、確実に私の製作レベルもアップした。これまでの34のリポートはその大切な記録なのである。
(2014.5.6)

40号機Version2 2ウェイバックロードホーンシステム