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LEGO SPEAKER 第4報 ≪第3報 第5報≫ |
LEGOスピーカーの製作 第4報

10号機外観(宇宙人ではない)
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1. 夏休みの自由研究 |
待望の夏休みである。学研の「大人の科学」にスピーカーのキットが出ていたので作ってみた。箱を作るのではなく、なんとユニットのキットである(写真2)。TV用のスピーカーみたいでチープであるが、白いコーンがなかなか良い感じ(写真3)。
早速LEGOで箱を作ってみた。この7cmフルレンジユニットを96mmキューブの標準ヘッドユニットに収める(写真4、5)。エンクロージャ形式はどうするか?簡単な密閉型にしてみよう。
ヘッドユニットと同一サイズの密閉箱を作る。わざと薄いブロックで箱鳴りを積極的に利用する。中には活性炭を3袋詰める(写真6)。ヘッドユニットとの間は支柱でつなぐが、この部分がポートとしても動作するはずで、この長さで低域のレスポンスが変化するだろう。詳しい動作は予測困難なので、最適長はカット&トライとする。
完成した小型スピーカーは、なんか中学生の学園祭出展作品のようになってしまった(写真7)。支柱は3ブロック(3cm)では短すぎ、5ブロック以上ではバランスが悪いので5cmにした。意外と良い音がする。手作りのユニットは(ボンドで貼っただけだが)とても愛着がわくものである。
同じ「大人の科学」の電池式真空管アンプと組み合わせて、キュートなiPodシステムができた(写真8)。さて、本題に入ろう。今回は10号機の製作である。
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2. デザインコンセプト |
前回の9号機の製作で、スパイラルホーンの優秀性が理解できた。しかし、9号機は箱状の螺旋階段を積み上げた構造で、理想的な、なめらかなスパイラルホーンとは程遠い。音道の断面積が箱の角部分で増減してしまうのである。この角部分で複雑な反射が生じ、音に影響していると考えられる。実際、注意して音を聴くと独特のエコー感がある。悪い個性ではないのだが、このあたりが9号機の問題点であろう。
10号機のコンセプトはなめらかな螺旋構造である。考えてみれば、ヴァイオリンもギターも楽器はみんな美しい曲面構造となっている。スピーカーエンクロージャも音響的には箱型が良いとは思えない。
LEGOならば、もっと複雑な構造体を製作することができるはずである。これまでの設計はベースやハカマを造り、この上に本体を組み上げていた。この構造ではどうしても煙突状のパイプ型かピラミッド形状になってしまう。
理想的なスパイラルホーン・エンクロージャはサザエのような巻貝構造ではないだろうか?と前回も書いた。自然に学べ、である。10号機のデザインコンセプトは「サザエの具現化」である。このために根本的な作り方を変えることにした。 90度の発想の転換である
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3. 設計 |
今回の設計図は無い。不可能である。現場判断で組み上げよう。構造の基本は図1に示すように巻貝の断面構造をLEGOで造る。つまり、奥から手前に積み上げる。この構造ならば複雑な形状を構築できる。奥側と手前側でスロープの方向を変える。本来なら奥行き側にもスロープが必要だが、そこまでは作りこまない。この構造で4ターンのスパイラルになる。中心音道長は1.2mくらいか。
LEGOのピースは小さいほうが自由度は高い。2X4厚さ3.3mmのプレートで構築する。ざっと計算すると・・・約5000個必要である。 早速手配した(うぐぅ!高い!)。
スピーカーユニットはどうするか?・・・使って見たいユニットがあった。Vifaの8cmグラスファイバーコーン・フルレンジ、TG9FD-10-04である(写真9 大人の科学に似ているが別物)。
これをヘッド部分に組み込む。これまでとブロックの方向が異なっていることに注意されたい(写真10)。
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4. 製作過程 |
まず、中心になる巻貝の断面を造る。左右で対称になっている(写真11)。手前側に組み上げる。プレートピースは編みこまれるので高い強度が得られる(写真12、13)。
裏側は逆のスロープを組み上げる(写真14)。
厚みを確保したら曲面構造でフタをする(写真15、16)。
ホーン部分の完成(写真17、18)。
ユニット部分を組み立てる(写真19)。
完成した10号機(写真20)。四方から複雑な形状を見る(写真21~24)。
もはや平行面も垂直も無い。
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5. 試聴 |
さて、どんな音がするのか? いつも新しいシステムができあがると、試聴にわくわくする。私はこの感じを得たくてLEGOスピーカーを作り続けているのかもしれない。
試聴。・・・すごい音・・・ではない。8cmユニットに過度な期待はできない。しかし、9号機にあったエコー感は解消されている。誇張感のない自然な音である。このVifaのユニットは、なかなか優秀である。大音量でも破綻が少ない。グラスファイバーということで期待したが、高域もとてもきれいである。
肝心な低域は?スパイラルホーンの良さは出ている。が、大型化した割にはあまり伸びなかった。ユニットの駆動限界であろう(写真25 大型化したのでスタンドが高すぎる)。
LEGOスピーカーの特長に調整の容易さがあるが、今回もスロート径の拡大や吸音材の付加(はじめは吸音材無しにしたが、すこしにぎやかだったのでティーバッグ挿入)、ヘッド部分の容積変更などの調整を行った。ところが、スロート径の拡大はこれまでになく大手術になってしまった。標準ヘッドユニットも利用できないのでユニット交換も容易ではない。このあたりは、この組み上げ構造の課題であるが、評価、調整を継続して行く。
それにしても不気味なモノを造っちゃったなあ。聴いていると化物に睨まれているみたいだ。市販スピーカーが四角い理由がわかったような気がする・・・。
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6. 追加報告 |
失敗作だった1号機を解体して小型の共鳴管方式の5号機を造ったが、共鳴管としては10cmユニットの4号機の方が高性能で5号機はほとんど出番がなかった。そこで、また解体しようかと思ったが、図2に示すような簡易の螺旋構造を共鳴管に挿入することでダブルスパイラルホーンになることに気が付いた。ピッチを段数で増加していくコンスタントパイプ構造である。早速試してみる。
写真26に示す黄色い内部構造を挿入した(一部パーツがなかったので黒がまじっている)。こんな簡単な構造でも十分にスパイラルホーンのメリットを出せることがわかった。9号機や今回の10号機は複雑で製作も容易ではないが、この簡易構造ならば実現性が高い。5号機改として現在評価中である(写真27)。
思えば1号機の失敗から1年でずいぶん進歩したものである。LEGOスピーカーの 可能性は無限である。

ダブルスパイラル構造(上面図)