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LEGO SPEAKER 第6報 ≪第5報 第7報≫ |
LEGOスピーカーの製作 第6報

12号機「クオドラ」
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1. 究極のLEGOスピーカーを作る |
前報の11号機は大成功と書いたが、8cmユニットとしては良くできたということで、やはり新6号機の様な大型(と言っても10cmユニットのスリムタイプだが)システムの低音は魅力的である。十分な量感があり、ハイスピードの低音は再現できないものか?
これまでに解ったことは、スパイラルホーンではあまり長くする必要はなさそうだと言うこと。とすると、ハイスピードなショートスパイラルホーンを組み合わせてマルチホーンとして低域の量感を確保すれば理想的ではないか?・・・早速構想を行おう。
デザインはどうするか?11号機まではLEGOらしさを出すために、普通のボックス形状は避けてきた。しかし、今回は基本的なボックスタイプにする。使用するLEGOブロックは失敗した10号機を解体したので、厚さ3.3mmの2X4プレートピースが5,000個ある。これを用いてホリゾンタルタイプ(前報参照)で構成する。なぜまたホリゾンタルタイプかというと前回のリベンジである。エンジニアの意地なのである。
プレートピースを用いると、いつものブロックの3倍密度となる。徹底的に強度を確保してマニアも喜ぶ高剛性キャビネットにしよう。
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1-1 基本仕様 |
(1) キャビネット構造:4ポートスパイラルホーン
ショートホーンを4本用いて低音の量感とハイスピードを両立する。
(2) 使用ユニット:10cmフルレンジ
4ポートの駆動力を確保するために10cmユニットを選択する。
(3) デザイン:小型ボックススタイル
ホリゾンタルタイプでプレートピースによる高密度キャビネットとする。
(4) エンクロージャサイズ:高さ256mm、幅128mm、奥行き250mm
製作の容易さに配慮したモジュール構造とする。
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1-2 設計構想 |
10cmユニットと4つのスパイラルホーンをどのように配置するか検討した。
図1に概略構造を示す。
・上下の2段構造として上部にユニットを搭載したメインキャビネットを置き、下部に4本のポートチューブを配置する。
・メインキャビネットとポートチューブはバックキャビネットで連結される。
・4本のポートチューブにはスパイラル構造を挿入するが、スパイラルピッチを2種類にして固有音を分散する。
・弱くなりそうなバックパネルは立体構造に補強して十分な強度を得る。
・ターミナル取付け部はバックパネルのエッジにして強度低下を防ぐ。
・強度向上とターミナル処理のためにバックパネルは2段とする。
・メインキャビネットにインナーボックスを設け制振と密閉度を向上する。
・吸音材は用いずに定在波防止のティーバッグのみとする。
・インシュレータには市販品(オーディオテクニカAT6089CK)を装着する。
・スピーカーユニットは暫定的(後述)にTang Band W4-930SGを用いる。
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2. 12号機の製作 |
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2-1 モジュールの製作 |
今回は製作性を向上するためにモジュール構造とした。
全パーツ(一部除く)を写真2に示す。ほぼすべて2X4のプレートパーツでできている。
いかに高密度かお解りいただけるだろうか?(ここまで造るのとても疲れた)
同一パーツを用いることは入手性からも都合が良い(10号機の残骸だが)。
スパイラル構造を写真3に示す。スパイラルはピッチがA、B2種類あり、それぞれ左右ターンでA、A'、B、B'の4種類となる。スパイラルAは6ターン、Bは5ターンである。
この部分の長さは約180mmあり、これがメインキャビネットの長さとなる。もっと短いほうがエンクロージャとしてはカッコ良かったが、ショートホーンといえども、ある程度は長さが必要と判断した。
バックキャビネットは十分な空間を確保するために50mmの長さとしたので、これにバックパネルの厚さ20mmを加えた250mmが奥行きとなる。ちなみに質量を測ったらボックスのみで約3.6kgあった。
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2-2 製作過程 |
メインキャビネットとポートチューブを連結枠で繋いでゆく(写真4)。モジュール構造なのでここからの組立は容易である(力は要るが)。
2段目を組み立ててメインキャビネットと4ポートチューブの完成(写真5)。結構重い。
バックパネル1の取付け(写真6)。インナーボックス取付け用のタブがある。
ポートベゼルの取付け(写真7)。デザインに配慮してスパイラル先端が中心に集まるように配置した。カチカチですごい強度のエンクロージャになってきた。
スパイラル構造の挿入(写真8)。壊さないように注意深く挿入する(写真9)。挿入後、ベゼルと後面の2点で固定される。
バックキャビネットの組立て(写真10)。バックパネル2補強の支柱を2本立てる。
インナーボックスの取付け(写真11)。インナーボックスはあえて完全独立である。
中心位置にティーバッグを1個吊るした(ホントに利くか疑問ではある)。
バックパネル2の取付け(写真12)。バックパネル2は面積が大きいので単純な板ではなくピラミッド型補強を6箇所施した立体形状である。十分な強度があり、音響的にも好ましいだろう。バックキャビネット上端にターミナルを付ける。
ユニットの組付け(写真13)。インナーボックスはユニットに干渉しない範囲に配置した。
左右のタブはメンテナンス用である。
12号機の完成(写真14)。
インシュレーターを装着すると高級スピーカーの香りがする。
ちょっと奥行きが長いが、とてもコンパクトなスピーカーシステムになった。
ガウディ10号機とはまったくかけ離れたオーソドックスシステムに変貌した。でも使用ブロックは同一である。当たり前だがLEGOの自由度は高い。失敗もなんのそのである。
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3. 試聴 |
これはすごい!・・・想像していた以上である。早くて量感のある低音が得られている。やはり高剛性は重要だと再認識した。もちろん、だからと言ってLEGOを接着してはならない。接合構造による高い内部損失を持った上での高剛性が大切なのである。10cmのペーパーコーンでこれほどの良質な低音が再生できるとは思わなかった。
・・・だが、これで完了ではない。
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4. ユニットの交換 |
じつは、この12号機は話題のパイオニア復刻ユニット PE-101Aのために計画したものであった。本命のユニットを入手したので早速置換してみる。
ユニットをLEGOフレームに装着する。このPE-101Aは復刻というのでもっとレトロなユニットかと思ったが、きわめて丁寧に製作されており、テクノロジ満載の高級フルレンジであった。期待が高まる。他の10cmフルレンジと比較して一回り大きい。マグネットも大きく重い。今回はフレーム装着に苦労した。いつも、このユニット装着作業が一番大変なのである。まさにカットアンドトライ。なんとかガッチリ装着できた(写真15)。
再度完成(写真16、17)。
音はどうか?・・・。
私の歴代LEGOスピーカーの中で最良と感じる。
今回も大成功である。(リベンジ成功!)
本作品からニックネームを付ける事にした。12号機「クオドラ」の完成である。
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5.スパイラルド・バスレフ |
「クオドラ」の構想図(図1)を見ていてハタ!と思った。これはバスレフの一種なのではないか?・・・バスレフシステムのポートにスパイラル構造を挿入したように見えてきた。
早速実験してみよう。現有のバスレフシステムは7号機しかない。7号機を覚えているだろうか? LEGOで造った普通のコンパクトバスレフシステム(デザインは出土品風)。ここのところ出番はなかった。音は悪くはないのだが、もともとバスレフ音が好みでないのである。しかし、SUNVALLEY AUDIO、大橋さんに評価してもらった記念のスピーカー。歴史品として永久保存されていたモデルである。
この7号機の小さなバスレフポートにスパイラル構造を挿入してみる。
スパイラルは写真18のように3種類作ってみた。aは拡大ピッチ3ターン、bは均等ピッチ3.5ターン、cは拡大ピッチ2.5ターンである。
結果は・・・? これは驚いた! 激変である。バスレフ特有の遅れ感、膨らみ感、不明瞭感が一掃されシャープでハイスピードなスパイラルホーンの低音になった。
これはどうしたことか??
スパイラルaでは明らかな効果があり、驚いたことにbでも十分に効果がある。しかし、cでは効果が低減し、バスレフ感が戻ってきた。
どうも螺旋構造が重要なのであって、ピッチはあまり関係ないのかもしれない。と、言うのも、aだってなめらかなピッチ変化ではなく、たったの2ピッチ。bは音響インピーダンス的には外界との2ピッチに相当するのか? cのようにスパイラルが少ないと効果が薄いということか。
感覚的にはバスレフポートの空気がグリップ力を増したように感じる。バスレフだけでは空振っていたポートの振幅が効率的に音響変換されるような効果がこのスパイラル構造にあるようだ。まさにミラクルアイテムである。もちろんバスレフとしての動作もあるのでキャビネット内の空気バネによる低音増強も期待できる。
スパイラルホーンをあんなに苦労して製作してきたのに、こんなに簡単にできてしまうとは・・・今までの苦労はなんだったのか?
この方式を「スパイラルド・バスレフ」と呼ぶことにしよう。
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6.スパイラルド・バスレフ実験機 |
「クオドラ」が完成したというのに聴く暇も無く、次の実験を始めてしまった。
バスレフ方式はキャビネット内の空気バネとポートの空気質量との共振で低音増強するシステムであり、サイズによらずに効果があるので小型システムに最適な方式だと以前記述した。だから市販のほとんどのコンパクトスピーカーがバスレフ方式である。しかし、特有の共振音「バスレフ音」が付帯する欠点がある。上手に設計すれば低減されるのかも知れないが、私は小型のバスレフ方式スピーカーで積極的に効果を狙ったものは癖が強いと感じている。この「バスレフ音」が低減できるならば、思いっきり小型化してみたい。
実験機は10cmユニットで最小のキューブスタイルにしてみた。
そう、12号機から外したユニットである。
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6-1 製作過程 |
写真19にパーツ全景を示す。バスレフ方式と言うことで活性炭吸音材の復活である。
少ない内容積の増強効果をねらって挿入する。ポートは2X4面積の2ポートでスパイラル挿入用に長めに作る。最適な共振周波数よりは低くなるだろう。
スパイラル構造は前述のaが2本である。
組立てる(写真20)。活性炭は2袋では入れすぎで、試聴の結果1つに減らした。
スパイラル構造は注意深く挿入する(写真21)。出し入れ自在である。実験に都合が良い。
今回もユニットフレームの都合でホリゾンタルタイプにしたが、この方向のターミナル取付けもできるようになった。
スパイラルド・バスレフ実験機の完成(写真22)。
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6-2 試聴 |
まず、ミラクルアイテム無しで聴いてみた。小さすぎたか低音が弱い。ポートのチューニングが適していないせいもある。なにより聴いていて楽しくない。
早速、アイテム挿入。 ・・・わふー!! 声が出るほど驚いた。
効果絶大。これは聴ける。こんなに小さいのに本当に楽しい(写真23)。
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7.13号機 |
実験のつもりで製作した超小型スパイラルド・バスレフであるが、結果が良かったので昇格である。13号機「キューブ」の誕生である(写真24)。
まさかヘッドユニットだけでマトモな音が出せるようになるとは・・・。
すごいことになってきた。