LEGO SPEAKER 第8報

≪第7報 第9報≫

LEGOスピーカーの製作 第8報

写真1 LEGOスピーカー 15号機「スマート」
写真1
LEGOスピーカー 15号機「スマート」

1. さらに超コンパクトに挑戦!

 LEGOスピーカーの1号機には当初5cmフルレンジユニットTB(TangBand) W2-803SMの搭載を考えていた。第1報の写真3をご覧いただくと試作したヘッドユニットがある。ひょろ長い1号機のヘッドユニットに8cmフルレンジは重くて危険と考えていたからだ。製作過程でセロテープによる補強やウエイトによる安定化で問題解決し、結局8cmフルレンジユニットを採用するのだが、1号機の失敗により、この5cmユニットは文字通りお蔵入りとなった。8cmフルレンジでさえ低音が出ないのに5cmでは論外であった。
 やはり5cmフルレンジはおもちゃなのか?
 振動版面積は8cmの半分も無い。アルミのフェイズプラグのデザインもあり、まるでツイーターの様である。こんなカワイイスピーカー使えるのか?でも、使って見たい。小型化こそエンジニアの目標。大きくて高価なシステムから良い音が出るのはあたりまえ。いつかこのユニットでマトモな音を出して見たいと思っていた。

2. スリムな「スマート」デザイン

 前回の14号機でも最小に挑戦と書いたが、5cmフルレンジならばさらに小型化できる。 ルービックキューブサイズの超コンパクトも良いが、これでは低音はまったく出ないだろう。HiFi(死語?)用途は厳しいにしてもBGM用に使える程度の超コンパクトスピーカーを造ったら楽しいだろう。今回は軽い遊び気分でこのようなシステムを造ってみた(もともと遊びだが)。

2-1 設計思想

 方式はもちろん、「スパイラルド・バスレフ」である。
 LEGOでエンクロージャを造る場合、板厚は16mmが基本と考えている。これは2ピッチに相当し、1ピッチ8mmでも造れるのだが、ふにゃふにゃで強度が取れない。やはり16mmは必須だろう。しかし、このため小型化すると内容積が取れない問題が生じる。5cmフルレンジの横幅ぎりぎりのサイズにしたいので8ピッチで64mm。内容積は高さで稼ごう。したがって今回はバーティカルタイプで行く。これまでの8cm長さのスパイラルピースを使うとして、ポートの長さと内容積の確保から大まかな設計を行った。このユニットのfoは160Hz。本格的な低音は無理にしても低音感の演出は可能だろう。ポートは8cmでは長いかな? ま、とにかく造ろう。LEGOの良さは自由度にあるのだから・・・。

2-2 構成パーツ

 今回も製作は容易である。写真2に全構成パーツを示す。これだけ、である。14号機の3分の2といったところか。
 と、言っても、今回はスピーカーユニットの固定に苦労した(写真3)。横幅をぎりぎりにしたかったので、かなりブロックを加工した。あまりに悲惨な状態なのでお見せできないが、ニッパで簡単に加工できる。カット&トライが大切である。また、今回初めてタッピングネジを使った。いつもはボルト&ナット(しかもダブル、樹脂相手では緩むのだ)で強固に固定するのだが、今回はナットのスペースも無い。LEGOのABS樹脂は粘りがあり、けっこうタップが効く。さらにスピーカーユニットの両脇の狭いスペースにパネルと呼ぶLEGOブロックを挿入し、補強とした。
 それにしてもこのスピーカーユニットは小さくてカワイイ。それだけでうれしくなる。

写真2 全構成パーツ
写真2
全構成パーツ
写真3 SPユニットパーツ
写真3
SPユニットパーツ

 メインボディ(写真4)。トンネルが2つあり、大きいほうが吸音材スペース。活性炭一袋でいっぱいになってしまう。小さいほうがポートである。8cm(8ブロック)の長さがあり、下部の開口で噴出す。
 ベースパーツ(写真5)。プレートブロック3枚重ねで1cm厚さ。レッグはプレートブロックにフェルトシール(本当はウレタン?)を貼った。
 トップパーツ(写真6)。天板1cmと3cm厚さのボックス構造で、上部に内容積を確保する。
 ターミナルパーツ(写真7)。内部幅が4ピッチ分32mmしかないので、ターミナルも隣接配置である。

写真4 メインボディ
写真4
メインボディ
写真5 ベースパーツ
写真5
ベースパーツ
写真6 トップパーツ
写真6
トップパーツ
写真7 ターミナルパーツ
写真7
ターミナルパーツ

 要のスパイラルピース(写真8)。写真では3ターン、8cm分の長さがあるが、試聴調整の結果、ポート長を7cmにつめたので短くした。

写真8
スパイラルピース
写真9
ベースの取付け

2-3 製作過程

(1)ベースパーツの取付け(写真9)。後面の暖炉状の口がポート開口である。小型なので強度は極めて高い。

(2)スパイラルピースの固定(写真10)。上下で固定する。バーティカルタイプなので、長さ調整が可能である。

(3)吸音材の挿入(写真11)。一袋でいっぱい。全内容積の30%程度が活性炭となる。このくらいがちょうど良い。

写真10
スパイラルピースの固定
写真11
吸音材の挿入

(4) ターミナル取付け(写真12)。このパーツのキリカキがSPユニットパーツのパネルブロックと勘合するため別パーツとした。

(5) SPユニット取付け(写真13)。2ピッチ分せり出しているのはバッフル効果低減とユニット固定のためである。

(6) トップ組み付け(写真14)。簡単に外せるのでメンテナンスや調整も容易である。

(7) 完成(写真15)。内容積確保のために縦長のデザインとしたが、W:64mm、H:190mm、D:112mmという超コンパクトサイズである。

写真12
ターミナルの取付け
写真13
SPユニットの取付け
写真14
トップの取付け
写真15
完成!

3. 試聴と調整

 完成した15号機(写真16)。本当に小さい。音はどうか?・・・意外にしっかりした音である。バスレフが効いて低音感もある。

3-1 ポート調整

 調整に入ろう。ポート長8cmでも問題ない感じではあるが、まずはポートに2ブロック継ぎ足して10cmとする。もちろん、スパイラルピースも継ぎ足す。ポートは内部ではあるが、分解が容易なので苦ではない。・・・やはり低すぎか?低音が空振っている感じ。明らかにレスポンスが低下した。次に4ブロック外して6cmとする。今度は良い方向に変化した。低音感は向上。しかし癖を感じる。これは高すぎだろう。以上の結果から、7ブロック7cmが最適と判断した。
 本当の低音ではない。メインスピーカーに使うには物足りない。でも、サブシステムには可愛らしくて小気味良い。見ていて楽しいLEGOらしいスピーカーシステムができた。15号機「スマート」の完成である。

3-2 トラブルシュート

 ここで問題発生!。ピアノ曲でビリつく?。特定の周波数で何かが共振して異音を発している感じ。今まで多くのLEGOスピーカーを造ってきたが、初めてのことである。 どうも補強に入れたパネルブロックが振動しているようだ。ゴム足をスピーカーのマグネットとの間に接着してダンプした。とりあえず解決したようだ。ホッ!
 改めて内部音圧の高さに感心した。こんなに小さな振動版なのにたいしたものである。エンクロージャに触れてみるとけっこう振動している。背圧を窮屈な内容積に閉じ込めたためか?でもこのおかげで後ろの暖炉から十分な低音が噴出している。もちろんスパイラルピースの効果でバスレフの癖は少ない。

写真16
15号機外観
写真17
バリエーションモデル

3-3 バリエーション

 この小さな「スマート」は簡単に造れる。すぐにバリエーションを増やしてしまった。 TB W2-800SLはアルミコーンの5cmフルレンジである。先のW2-803SMよりも有効振動版面積が大きい。メタルコーンと言うことで期待が持てる。
 同一設計でバリエーションモデルを作成した(写真17)。 この、のっぺりした白いコーンも「スマート」とデザインが良くマッチする。
 SV-17Kと繋いで試聴(写真18)。やはりメタルコーンはパワフルである。5cmとは思えないダイナミックな音圧が得られる。高域にメタル特有の癖が若干乗るが、大音量で鳴らすと他のスピーカーが鳴っているような感覚を持つ。隣の「ライト」と比較して、背は高いが、さらにコンパクトであることが解るだろう(写真19)。
 夜中に小音量で聴くタイプA(写真20)と大音量BGMのタイプB(写真21)といった感じで使い分けて楽しんでいる。小さなSV-16Kが大きく見える?
 ・・・5cmフルレンジはおもちゃではなかった。

写真18 SV-17Kで聴く
写真18
SV-17Kで聴く
写真19 試聴の様子
写真19
試聴の様子
写真20 「スマート」タイプA
写真20
「スマート」タイプA
写真21 「スマート」タイプB
写真21
「スマート」タイプB

3-4 吸音材の調整

 先に述べたように「スマート」には活性炭を一袋入れてあるが、ためしにこれを外してみたら・・・なんというひどい音。ひずみっぽくてやかましい。効いているなあこれ。
 さらにためしに二袋めを詰め込んだら(そのままでは大きすぎて無理だったため、袋を切って中身を半分にした)タイプAではより好ましく落ち着いた音になった。ところがタイプBでは、内容積の減少のため低音感が低下してしまった。吸音材量もスピーカーユニットで使い分ける必要がある。

4. そのほか

 SUNVALLEY AUDIOさんの在庫品放出で300BのPP(プッシュプル)アンプを購入した。お買得で飛び付いてしまった。以前から300BのPPが欲しかったのである。シングルアンプも回路がシンプルで信号がストレートな良さがあり、好んで使用しているが、PPにはまたちがった魅力がある。余裕のある大出力の300Bがどんな音か、聴いてみたかったのである。
 やってきたVP-3000を早速「ライト」に繋いでその音を聴いて・・・ああ!なんという優しい音。これが300B-PPの音か。手のひらに乗ってしまう本当に小さな「ライト」から、なんとも芳醇な音がする。おもちゃみたいな(実際おもちゃで出来ているのだが)スピーカーからこんなに美しい音が奏でられるなんて(自画自賛)。アンプの影響力のすごさを実感した。私はけっこう大音量派なのだが、この聴き疲れのしない音はいつまでも聴き続けていたいと思える。
 すばらしいパートナーにまた出会えた。他のLEGOスピーカーたちとも組み合わせてみよう。楽しみは尽きない。
 うっうー!それにしてもアンプ増えちゃったなあ。もう置くところがない・・・。

写真22 VP-3000
写真22
VP-3000

第7報LEGOスピーカーの製作第9報

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