
皆さん、こんにちは。先週に引き続きまして真空管アンプの選び方について解説いたします。
まずは”シングルかPPか”というテーマです。これは古くて新しい、真空管アンプ選びの究極のテーマです。物理的(電気的)側面から言えば
1.スピーカーの能率が88dB以上
2.ウーハーの口径が30cm以下
であれば能力的にはシングル(出力8W以上)で対応可能であることは先週申し上げた通りです。
しかしその一方で
1.中低域の量感を重視したい
2.繊細感よりも密度感が欲しい
という方は上記の条件に合致していてもPPが非常に有効です。特にフルレンジスピーカーで不足しがちな「厚み」やスケール感を引き出したい場合はPPをお使い頂いた方が好結果が得られるのです。つまりシングル,PPの使い分けは基本的にお使いのスピーカーによって決定される側面が大きいとお考え下さい。
次に”三極管か多極管か”という点について触れておきたいと思います。同じ真空管でも三極管と多極管ではかなり音質(表現)が異なります。先々週のコラムで示させていただきましたチャートをいま一度参照頂くと分かりますが、一般的に”多極管の方がシャープ”で”三極管の方がウォーム”であることにお気づき頂ける筈です。
私どものお客さまではクラシック,ヴォーカル派の方は三極管アンプを選ばれる方が多いですし、ジャズ,ロック派の方は多極管アンプを選ばれる方が多い訳ですが、約言すれば三極管の間接音的表現,多極管の直接音的表現に因るところが大きいと感じています。つまり三極管,多極管の使い分けは基本的にお聴きになる音楽ジャンルによって決定される側面が大きいのです。
まとめてみますとスピーカーの形式,個性を踏まえ
・シングル:音色の素直さ,繊細感
・PP:厚み,密度感
というキーワードから皆さんのお好みがどちらかをイメージして下さい。そのうえで、お聴きになる音楽ジャンルから
・三極管:柔らかさ,間接音的拡がり
・多極管:シャープさ,明晰さ
という表現の差異があること知って頂くことで、自分に一番ふさわしい真空管アンプが浮かび上がってくることと思います。皆さんのアンプ選びのご参考になれば幸いです。