キット屋コラム
真空管の個性(多極管編)

 皆さん、こんにちは。今週は先週に引き続いて多極管の代表例を挙げながらその音の特徴,魅力に迫ってみたいと思います。歴史的には三極管よりも新しく、低い電圧でドライブでき高出力を得られる事が特徴です。主にPPで使われることの多い球ですがシングルでも魅力的な真空管が幾つもあります。

 基本的な性格としては三極管よりも音の骨格がしっかりしており、パワー感が特徴です。一方繊細感や空気感(空間の拡がり)では三極管にやや分がありお好みの別れるところです。三極管がクラシック,ヴォーカル派、多極管がジャズ,ロック派の方は多極管に分かれることは前回申し上げましたが、これも真空管そのものの持ち味に因るところが大きいのです。

 まずは「KT88」系からご紹介していきます。元々はイギリスが原産国の真空管ですが現在は中国,ロシアなどでも製造され入手の容易で、最もポピュラーな真空管の一つです。ハイコントラストでエッジの明確な音質が特徴で、ジャンルを問わず出力も大きい真空管であることから、KT88から真空管アンプを始める方も多くなりました。出力はシングルで7~8W,PPで20W~40W程度です。

 次に「6L6」系です。代表的なところでは6V6,6L6GC等がよく知られていますがKT88よりやや中域にコクがあり、厚みのある音が期待できる真空管です。強いて言えばPP向きの球ですがシングルで5~8W,PPで15W~35W程度が得られます。

 次にご紹介するのが「EL34」系です。恐らく現在最も多く製造されているのがこの系列で、オーディオ用途だけでなくギターアンプなどでも多用されています。やや硬質でありながら音に芯があり、特に一定以上の音量で鳴らした時のエネルギー感は比類がありません。音の粒立ちはやや大きめで300Bのような繊細感はありませんが、スピーカーの前に音がせり出すような感覚がEL34の最大の魅力です。出力はシングルで7~8W,PPで20W~40W程度ですが、この真空管も圧倒的にPPでの作例が多いことが特徴です。

 いかがでしたでしょうか。先週,今週と代表的なオーディオ用真空管を幾つか挙げて音質について解説させて頂きました。以前のコラムで書かせて頂きました。三極管アンプ/多極管アンプ,シングル/PPの比較と併せてお読み頂ければ、今まで敷居が高かった真空管アンプをぐっと身近に感じて頂けるのではないかと思います。

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