キット屋コラム
オーディオ機器の組合せについて

 皆さん、こんにちは。今日はオーディオ機器の組合せについて考えてみたいと思います。これまで当コラムのなかで、真空管(三極管/多極管),回路(シングル/PP),アンプとスピーカーの相性など様々な視点から真空管アンプの使いこなしについて書かせて頂きました。それぞれの電気的,音質的特徴はこれまで述べてきた通りでありますが、その一方で私たちの耳に届く音はプレーヤーからスピーカーまで全ての機器の個性,特徴が重畳したものであることは言うまでもありません。では私たちがオーディオ機器を更新する(あるいはグレードアップ)する場合、機器の優先順位はどのように考えればいいのでしょうか。

 まず皆さんが、現状の音に対して一定程度の満足感があり、更に今の音を良くしたい、ということであればスピーカーは現状のままアンプの更新をお奨めします。一方、今の音にはどうも馴染めない、自分の求めている音とは根本的に何かが違うと感じになるのであれば、思い切ってスピーカーを入れ替えることをお奨めします。

スピーカーは音の出口です。あらゆる機器の個性はそのスピーカーを通して私たちの耳に届きます。その音の出口であるスピーカーこそが音そのものに最も大きな影響を及ぼしています。アンプが電気エネルギーの変換を行っているのに対し、スピーカーは電気を音響エネルギー(空気振動)に変換しているだけでなく、発音形式,サイズ,エンクロージャー(スピーカーボックス)の形状に至るまでアンプ以上に幅広いバリエーションを有することからも、いかに私たちが聴く音がスピーカーの影響を大きく受けているかがご想像頂けると思います。

 スピーカーが変わるというのは、私たちの生活に例えると引っ越しをするくらい大きな事です。例えば10センチのフルレンジスピーカーと30cmの3ウェイでは音楽の聴き方も、音量も、更に言えば音楽のジャンルも変わってくるかもしれません。その意味ではスピーカー選びはオーディオという趣味にとって最も大切なプロセスと言えると思います。

スピーカーを車の車体に例えると、その車体に相応しいエンジン(パワーアンプ)、そのエンジンに相応しいトランスミッション(プリアンプ)というものが自ずと決まってきます。その選択を誤ると折角のオーディオ機器が能力を十分に発揮できるとは言えません。その意味ではオーディオ機器の選択は”出口”から”入口”へ、言い換えればスピーカーからプレーヤーに向かって行うのが理想的と言えます。

 言い換えれば、今のスピーカーに満足しており、更なるグレードアップを望まれるのであればパワーアンプの更新が非常に有効ということになります。時々”現在は半導体のプリとパワーを使っているのですが、パワーアンプだけ真空管にしても大丈夫ですか?”というご質問を頂きますが、電気的には特殊な回路でない限り(特定のパワーアンプとの接続を指定されない限り)問題ありません。また現在半導体プリメインをお使いで、そのアンプに”PRE OUT”(プリ出力)があるのであれば今お使いのプリメインをプリアンプとして流用し、パワーアンプのみ真空管にするという方法も有効で、事実この方法で真空管アンプを使い始めたという方もとても多いのです。

 私どもの試聴室には音質評価用のリファレンススピーカーが沢山置いてあります。それはなるべくご自身のスピーカーに近い形式,サイズのもので試聴頂くことでご自宅の環境により近いイメージを持って頂くためです。「スピーカーはオーディオの要(かなめ)」、良い音の第一歩は自分に合ったスピーカー選びから始まると申し上げても過言ではありません。

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