キット屋コラム
オーディオ機器の組合せについて(続)

 皆さん、こんにちは。今回は先日も少し触れましたオーディオ機器の組み合わせのなかで特に真空管機器と半導体機器を同時に使う際のポイントについて幾つか触れてみたいと思います。

 10/14付コラムにもありますが半導体プリアンプと真空管パワーアンプの接続は基本的に問題なく使用することが出来ます。では逆のパターン、つまり真空管プリアンプと半導体パワーアンプを接続した場合どうなるかについて考えてみたいと思います。一般的なRCAコネクタを使用する接続の場合については問題ない場合もありますが、必ずしも最適と言えない場合が多く注意が必要となります。

お使いになる際の問題点として、注目頂きたいのはプリアンプの「出力インピーダンス」とパワーアンプの「入力インピーダンス」です。一つの目安としてはパワーアンプの入力インピーダンスはプリアンプの出力インピーダンスの10倍以上であるのが望ましいという点です。例えばプリアンプの出力インピーダンスが2kΩであればパワーアンプの入力インピーダンスは20kΩ以上であるべきと言えます。

この差分が大きければ大きいほどプリアンプから見てパワーアンプがドライブし易くなる(真空管アンプの良さが出る)と理解頂いて結構です。多くの真空管パワーアンプは入力インピーダンスが50kΩ以上ありますが、半導体パワーアンプの場合は10kΩ(以下)という場合も珍しいことではありませんのでプリアンプが真空管でパワーアンプが半導体という場合、個々の機器が優秀でも組合せの結果が芳しくない場合もあり得ます。

別の問題点として真空管プリの出力が2系統あって一方には真空管アンプ、もう一方には半導体アンプが接続されているケースを想定してみます。

真空管プリの出力インピーダンス=1kΩ
真空管パワーアンプの入力インピーダンス=100kΩ
半導体パワーアンプの入力インピーダンス=10kΩ

と仮定した場合はどうなるでしょうか。ここでポイントとなるのは2台のパワーアンプそれぞれの入力インピーダンスが合成されて何kΩになるかという点が重要になってきます。

単純に考えると100kΩと10kΩの中間で数十kΩになるように思われるかもしれませんが、実際は「オームの法則」によって2台のパワーアンプの合成インピーダンス(プリアンプから見た負荷側の入力インピーダンス)は約9kΩにまで下がってしまうのです。この場合はプリアンプが十分にどのドライブ力を発揮できているとは言い難い状況となります。結果的に音が歪っぽくなったり帯域が狭く聴こえる現象が発生します。

では、真空管パワーアンプを使う時は半導体パワーアンプの電源を切ってしまおう、と思われるかもしれません。つまり低いインピーダンスの機器の電源を落としてしまえば動作している真空管パワーアンプの100kΩが負荷となり、よりマッチングも良くなるという仮説ですが、実はこれが逆の振舞いとなり、一般に半導体機器の入力インピーダンスは動作時の値で、電源を落とすと更に下がってしまうことに留意が必要です。

同様に例えば真空管プリアンプの録音出力に半導体の録音機器等が接続されている場合も同様の状況となる場合がありますので、このような真空管機器と半導体機器が同居するシステムにおいては、必ず半導体機器の電源も入った状態にしておくことが必要であるとご理解下さい。

昔から真空管機器の接続は「ハイ受け、ロー出し」が基本であると言われます。なるべく出力インピーダンスは低く、負荷側のインピーダンスは高くするというセオリーは機器の個性以上に重要な使いこなしと言えるかもしれません。

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