キット屋コラム
アナログプレーヤーの調整

 皆さん、こんにちは。今回は真空管アンプファンにも愛好家が多いアナログプレーヤーの調整方法について触れてみたいと思います。

まず理解すべきはアナログプレーヤーの調整に「完璧」はないということです。LPの最外周を針がトレースする状態と最内周をトレースする状態では機械的に条件が同じでないことはお分かり頂けると思います。アナログプレーヤの調整は最大公約数的にどこまで高められるかという事であり、幾つかの重要なチェックポイントがあります。

 まず最初にすべきはターンテーブル本体が水平に設置出来ているかどうかです。これがクリアされていないとあらゆる調整の意味がなくなると申し上げても良いと思います。

高感度な水準器でターンテーブルの水平を確認します。

 

 続いてはカートリッジ針先のクリーニングです。埃は専用のハケでも除去出来ますが、使用時間が長いカートリッジには汚れが固着してしまっていますので湿式クリーナ液の使用が有効です。

クリーニング前とクリーニング後を20倍程度のルーペで比較してみると驚くほど針先の状態が変化しているのにお気づきになると思います。

 

 続いては針圧調整です。アナログ針圧計もありますが、アームのゼロバランスが取れていないと正確な針圧が測定出来ない恐れもありますので、デジタル針圧計の使用をお奨めします。

印加する針圧は基準値よりも僅かに重めを心がけて調整されると良いと思います。基準値以下ですと何かと敏感な部分が出て僅かな調整の狂いによって針飛びや聴感上の歪み感に繋がる場合があります。写真は標準針圧2.5gに対して2.7g(+約10%)で調整した事例です。

以上が最低限行いたい内容です。ここから書く内容については主にアームの調整が中心になりますが、調整可能な機種においては是非お試し頂きたい事ばかりです。

 先ずはアームの高さ調整です。

基本はレコードの上に針を下ろした状態でアームが水平になることです。写真では分かり難いかもしれませんがアームの後ろに見えるのはカセットテープのケースです。裏面にあるインデックス用の罫線を頼りに水平が出ているか確認します。わずかにお尻が上がった状態の方がレコード盤の反りやゆがみに対して安定度が高まる場合があります。

 続いてはオーバーハング調整です。オーバーハングとはレコードを載せるターンテーブルの中心にある軸にアームの先端部分を重ねた際の軸から針先までの距離を意味します。これはアームによって異なり、指定の値になるべく近く取り付けることが求められます。またカートリッジが盤面の溝に対してなるべく直角になるように調整します。

真上から見た状況です。ゲージを利用すると便利です。

 

 次にレコード版に対して針が直角に接しているかの確認です。

これは極薄の反射テープを利用した事例ですが、薄手の手鏡も使用可能です。写真のように針先と反射テープに映った像が斜め上から見下ろして一本の線に見えれば問題ありません。これが「くの字」に曲がって見えるようならカートリッジの水平が出ていないことになります。

 次にインサイドフォース調整です。機械的に調整できるタイプのものは一般に調整した針圧と同じ値にすれば問題ありませんが、一部のアームには錘(おもり)によってインサイドフォースを調整するタイプのものがあります。

錘を吊るした状態でアームを最外周に置いた時に錘がついているテグスとアームの関係が直角になるようにガイドの位置を調整するのが理想的な状態といえます。あまりシビアに考える必要はありませんが大きくずれていると左右の音のバランスが崩れたり、片チャンネルの音だけ歪んで聞こえる場合があります。

 その他、「ラテラルバランス調整」(アームの左右方向の傾き調整)が出来るものもありますが、これは上記の盤面と針先直角に接する為の調整と同様とお考え下さい。

 以上の調整が完了した段階で最後にハウリングマージンを確認する必要があります。LPを回転させない状態で針を下し、徐々にアンプのボリュームを上げていくと、あるポイントでハウリングが発生する場合があります。これはスピーカーからの音響エネルギーが針先に影響を与えている(あるいは設置状態が振動に対して脆弱である)ことを意味する訳ですが、目安として通常の通常の音楽聴取レベル(ボリューム位置)が時計の9時辺りだとすると12時のレベルでフィードバックしないような設置が求められます。もし低いボリューム位置でフィードバックが起きるようならプレーヤーの位置をなるべくスピーカーから離す、或いは出来るだけ強固な台の上に置くなどの対策が有効です。

 レコードプレーヤーの調整は奥が深く、正しく調整を行うのは大変ですが、手をかければかけるほど良い音が得られます。ぜひ皆さんもお試し頂ければ幸いです。

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