キット屋コラム
フルレンジスピーカー(2)

 皆さん、こんにちは。今回はフルレンジスピーカーに最も多用される「コーン型」(すり鉢型)ユニットの素材と形状について考えてみたいと思います。

 コーン型フルレンジユニットを外側から見るとドーム状のセンターキャップとコーン(すり鉢部分)、エッジ(外周部)で構成されていることが分かります。最も音質に影響を及ぼすコーン(振動板とも言われます)は振動を音に変換する部分で音質に最も大きな影響を与えます。

 基本的にコーンに求められるのは、

1.軽量であること(反応性の高さ)
2.剛性が高いこと(歪みの少なさ)
3.適度な内部損失があること(固有音の除去)

であると言われます。古くから紙(パルプ繊維)が主に使用されてきた訳ですが、金属(アルミ,チタンなど)やポリプロピレン,ケブラー(ポリアミド系樹脂)など多種多様です。素材それぞれのメリット、デメリットがあるので一概に何が優れているということはありませんが、今後もバランス的に優れた紙製コーンが主流であることに変わりないと思われます。

金属製コーンは剛性が高く、薄く軽量である一方、内部損失が小さく共振ピークが大きいので主に小口径ユニットに使われることが多い素材です。またポリプロピレンなど樹脂系コーンは、内部損失が大きく共振ピークが小さいため、歪み感の少ないユニットが作れる一方、素材的に質量が大きいために能率が低く、反応性が紙よりも劣るためにフルレンジ用途よりウーハーに使用されることが多い素材です。

 次にコーン形状ですが、「ストレート型」(直線型円錐形)と「カーブドコーン」(中心に近づくに従って鋭角になっていく)の二種類が一般的です。ストレート型は剛性が高いことと高域共振が出難いメリットがある一方、やや低音感が軽めで聴感上の円やかさに欠けるという指摘もありますが、コーンの絞り角度によって指向性をコントロール出来るメリットもあります。大型ユニットではリブ(ひだ状の凹凸)をコーンにつけることで分割振動を抑え強度を確保する場合もあります。カーブドコーンはエクスポネンシャル型(放物線型)とも言われます。ストレート型よりも強度を取りやすく高感度なユニットを作ることが可能です。

 フルレンジは数10Hzから数kHz(以上)まで広範囲な帯域を受け持つがゆえに、帯域で音色が変わらないようなチューニングが必要で、メーカー毎の個性が出やすく、コーンの材質,形状だけでなく、ボイスコイル,エッジ,ダンパー,フレームなどあらゆる部分が音質に影響します。

 フルレンジ=ナローレンジと敬遠される向きもありますが、非常に個性豊かなフレンジスピーカーを、真空管アンプ愛好家の皆さんに楽しんでいただけたらと思います。

 次回はエンクロージャーの形式と音質について考えてみたいと思います。

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