キット屋コラム
スピーカーエンクロージャー(2)

 皆さん、こんにちは。今回は前回に続きスピーカーエンクロージャーの形式について考えてみたいとと思います。

 今回最初にご紹介するのが「バックロード型」(リアローディング型)です。これはエンクロージャーを一つの箱として捉えず、スピーカー背面から放射される音響エネルギーを箱に閉じ込めずにホーン(断面積がらっぱ状に広がる筒)を通すことでスピーカーユニットの低域再生能力を改善しようとする方式です。現実的には長い曲線ホーンを形成することが困難であることからエンクロージャー内に仕切りを建てて次第に音道が大きく(擬似ホーン)様の構造になっていて、外観的には一般のスピーカーと同様の箱型になっています。

これは「Y-08」の内部構造図です。物理的にホーンが長いほど低域再生能力が向上しますが、バスレフ型同様ユニット毎に最適なホーン長が異なることと共に、現実的には理想的な連続したホーン構造でなく階段状の不連続なホーン構造を採らざるを得ないが為に、ホーン内で特定周波数の共振(ホーン鳴き)が発生したり帯域によって音量感が変化する場合もあります。またエンクロージャー自体に高い剛性が求められます。中小型フルレンジのバスレフ方式では再生が難しい深く沈み込む低音再生が可能なことから自作派に支持されることが多い形式です。

 次にご紹介するのが「フロントロード型」(フロントローディング型)です。これは家庭用スピーカーよりも設備用によく使われる形式で、スピーカー前面をホーン形状とすることで音響エネルギーの指向性を絞ることが出来、特定の範囲にエネルギーロス少なく情報を伝えることが可能な形式です。音質的にはストレートでいわゆる"音が前に来る"ような鮮度感高い中高域が期待できる一方、サービスエリアがやや絞られる傾向があります。

これは「WS-825 ver.2」です。前面にホーンを設けるためにスピーカーユニットをエンクロージャー内部に落とし込む形状が一般的です。また響きの良い木材を使うことで朗々とした中低域を得ることも可能で、ジャズ,ヴォーカルファンに評価の高い形式です。

 

 その他フロントホーン+バックロードやフロントホーン+バスレフの「複合型」と言われる形式もあります。

これは「MID」の外観です。フロントホーン+バスレフの複合形式で鮮度感高い中高域と豊かな低域の両立を狙った形式と言えます。

 以上、代表的なエンクロージャーを二週にわたってご紹介した訳ですが、単に優劣で捉えずそれぞれの個性を把握したうえで選ぶことが重要です。以前にも書きましたがスピーカーはオーディオの主役であり、音の個性を最も強く決定づける部分ですので、皆さんのニーズに合った形式を選んで頂ければ幸いです。

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