キット屋コラム
ツィーターの追加

 皆さん、こんにちは。今回はフルレンジの発展形としてスピーカーの再生帯域を拡大する「ツィーター」を加えた効果について考えてみたいと思います。

 ツィーターとは一般的に数kHz以上の帯域のみの再生を受け持つ高域専用のスピーカーユニットを言います。スピーカーの特性によって高域レスポンスが不足する場合や、エンクロージャー形式によって高域を補う必要がある場合に有効です。特に聴取可能帯域の上限近く、あるいはそれ以上の超高域を専用に受け持つツィーターを「スーパーツィーター」と呼び区別する場合があります。

ツィータにはその構造からコーン型,ホーン型,ドーム型,リボン型など様々なバリエーションがあり、電気的特性が近似でも音色が異なることから、ツィーターを追加したいスピーカーユニットあるいはシステム(以下"主スピーカー")の音色的傾向を踏まえ、どのような効果を狙うかによって様々な選択が生まれます。

 注意事項としては、ツィーターは過大な低域信号を入力すると破損するために低域信号を電気的に減衰させる「LCネットワーク」が必要となることです。稀にユニットにLCネットワークを内蔵したタイプも存在しますが、基本的にはツイーターを使う場合、不要な低い周波数(境界の周波数を"クロスオーバー周波数"といいます)の帯域をならだかに減衰させる必要があります。

 最適なクロスオーバー周波数の決定には主スピーカーの裸特性だけでなく現在使用しているエンクロージャーによって実際どのような周波数特性となっているかを客観的に知る必要があります。また主スピーカーとツィーターの能率の整合も重要となってきますので非常に複雑で定量評価と定性(官能)評価の両方が必要となります。

 まずはツィーターを付加したい主スピーカーの特性をカタログで調査し、周波数特性的に3dB程度レベルが低下している周波数を調べます。その周波数(以上)を仮のクロスオーバー周波数として実験を行います。

ここでは主スピーカーをそのまま、ツィーターのみ-6dB/oct.のネットワークを使用した最も簡単な例を挙げて説明します。

この方式は主スピーカー側の周波数特性に影響がなく、言い換えれば主スピーカーの個性を損なうことなく高域特性を改善することができる方式であることから広く使用されています。特にフルレンジユニットを使用したスピーカーシステムに有効です。

 これはコンデンサー1個(左右チャンネルで2個)を用意することで可能です。もちろんツィーター自体の周波数特性(再生可能帯域)を確認したうえでクロスオーバー周波数を決定しなければなりません。-6dB/oct.ネットワークの場合はツィーターの再生可能下限の倍以上のクロスオーバー周波数を選択することが有効とされています。なお数kHz以上のクロスオーバー周波数を選択する場合、ツィーターを加えてもスピーカー全体のインピーダンスは変化しないと考えて差し支えありません。

コンデンサー容量決定の為の計算式は

コンデンサ容量=159000/(クロスオーバー周波数×ツィーターのインピーダンス)

となり、例えばツィーターのインピーダンスが8Ωで望むクロスオーバー周波数が10kHzである場合は

159000÷(10000×8)=1.99≒2(μF)

が望ましいコンデンサー容量となります。なお能率の整合については主スピーカーに対してツィーター能率が0~-数dB程度が使い易いと言われており、整合には定インピーダンス型のアッテネータ(減衰器)をツィーター側に付けて音量的アンバランスのないように調整します。

 コンデンサーはツィーターの+(HOT)側端子に付け、そこから延長したケーブルを主スピーカーのターミナルに並列的に取り付けます。コンデンサーとケーブルはなるべく良質なものを用意することが望まれます。

 ツィーターを設置する前後位置は、主スピーカーの振動板位置と同じになるように合わせるのが原則ですが、少し前側に設置することを高域の輪郭感を強調させたり、少し後ろ側に設置することで奥行き感を出すことも出来、非常にクリティカルですので慎重に試聴を繰り返しながら最適な場所を決定することになります。写真は当社試聴室におけるMIDにリボンツィータを付加したケースです(クロスオーバー30kHz,設置位置フロントバッフルから120mm後退させています)。

 ツィーターを追加した効果を定性的に表現すると

・すっきりとした抜けの良さ
・音の粒立ちの細やかさ(繊細さ)
・音の広がり感、遠近感(立体感)

などが挙げられます。より臨場感あふれる音楽再生にツィーターは大変有効な手段です。

次回はサブウーハーについて考えてみたいと思います。

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